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我が大学の学食は美味しくない。
いや、正しく言うと安くて写真で見ると具材の多いメニューもいざ出てくるとちっぽけなものだ。あの写真の唐揚げ丼は米が見えないほど埋め尽くされているのに頼んでみるとどうだ。唐揚げ3個???世の男子大学生の食欲を舐めている。なので、近くの定食屋を利用することが多い。2コマ目の授業が終わる12時が過ぎるとこのお店は大学生で溢れかえる。どんなに早い安い美味いだろうが、客が多ければ成り立たないのだ。でも、抜け穴がある。このお店は11時から開いているのだ。2コマ目がない時に早く向かうことで混雑を避けることが出来る。逆にランチが終わる3時までに行けばいいので、お昼ご飯を遅らせればそれでも良い。2コマ目と3コマ目がある生徒は仕方ないが、大学の授業は割と融通が聞くので、そのような空いた時間を作ることは、まぁまぁ簡単なのだ。とはいえ、1年生の頃からそんなことを知っている訳もなく、俺は混雑するこのすずらん亭へと来ていた。
「相変わらず混んでるな。」
「爆速で食べれば間に合うでしょ。今のうちにメニュー決めておこうぜ。」
同じ学部学科で授業も同じものを受けていると自然と友人ができる。今日はヒロシとショータと3人で来ていた。彼らとは英語のクラスも同じで自然と話すようになった。メニューを決めると言っても、この店で頼むものは基本同じである。唐揚げ定食だ。自分の空腹度合いに合わせて、数を選べるし、何より美味い。大体の客は唐揚げ定食を頼むくらいには人気で、逆に言えばみんな頼むから常に用意されているから出てくるのも早い。メリットしかない。
「りんたろーは最近なんか忙しそうだよな。」
「それな?サークル入ってないって言ってなかったっけ。」
「実はちょっと調べ物しててな。」
三ノ宮家の調査についてはあれから新しいことはわかっていない。それとは関係なく琴葉からの誘いが多すぎて忙しいだけだ。琴葉も専門学校に慣れてきて余裕が出てきたらしい。
「ショータ。こいつあれだよ。幼馴染の。」
「あぁ、あのめっちゃ可愛いけどどう見ても中学生にしか見えない子ね。たしかに、りんたろーは振り回されそうだ。」
そのセリフを琴葉が聞いていたらきっと殴られているだろうな。肯定はしないでおこう。
ようやく入店し、俺らは唐揚げ定食3つ頼んだ。ものの五分ほどで出てきた唐揚げ定食はボリュームたっぷりである。
「やばい!あと30分もないぞ。」
「かきこめかきこめ。」
そんな美味しい唐揚げを、味わうことなく胃の中へ流し込む。いつもの風景である。
店内ではテレビが設置されており、昼時のニュースが流れていた。
見ていた訳では無いが音だけは耳に入ってくる。
―鈴本薬品の製薬工場が火事になりました。現在火元は消化され、…………―
鈴本薬品…?三ノ宮家が顧問で入っている企業の一つだ。誰しも聞いたことがある製薬会社の工場が火事?映像を見ると爆発もしているようだ。
少し匂うな。帰宅後の予定が今決まった。
「りんたろー。早く行くぞ。」
まずは授業だな。
ヒロシとショータはもう出てこないと思います。
気分です。
HRは100になりました。




