cosθ≒0.990
たっちゃん。清ばあは昔からそう呼んでくれた。直接の血の繋がりは無いが、中学時代にとてもお世話になった人である。俺が教えたインターネットでの商売も上手くいってるみたいで嬉しい。暫くここにいるし、少し楽になるようにプログラムをいじってあげたりしようなんて思いもある。まぁそれくらいしないと暇なんだよね。
今は農家だってパソコンで全て管理している所も少なくない。種の植える時期から、収穫時期。販売のための手配まで都会の仕事と変わらないくらいパソコンを使っているのだ。本当はボタン押すだけで水撒きとか出来ればいいんだけどね。
「農家ってすごい最先端なんですね!」
パソコンで俺と清ばあが仕事していると菜花ちゃんが覗いてきた。
「何してるのかさっぱりです。」
今俺たちがやっていたのは牛の体調管理だ。より良い肉を届けるために牛一頭一頭に気を配っていた。昔は直接見て感じることでしかできなかった仕事も今やこのパソコン1台で解決である。
「龍騎、久しぶりじゃの。」
口調からは考えられないほど若々しく、50代であると言われたも分からない見た目の老人はそう話しかけてきた。どうやら牛小屋での仕事が一段落したようだった。
「たつじい。まだまだ元気だね!あと100年は生きれそうだ。」
何を言ってるんじゃ。と言いながら自分の指定席に座る。佐藤清と佐藤龍の2名は夫婦であり、俺の名付け親であった。たつじいの名前を俺が貰っている。俺が血の繋がり以上に信頼している理由であった。
「この子が連絡した子。」
「三ノ宮菜花と申しますわ。しばらくの間よろしくお願いします。」
少し固い挨拶であるが、無礼のないようにと意識した結果だろう。お嬢様口調が少し出ているのにはにかんでしまったが。菜花ちゃんに見えてなかったのでまぁいいか。
「それで?菜花ちゃんはたっちゃんのお嫁さんになるのかしら?」
ぶふっっっ。
飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
「違うよ清ばあ。この子は俺の親友から頼まれた子だ。俺は誰かひとりの旦那になるつもりは無い。そんな事になったら日本で紛争が起きちゃうよ。」
冗談とも本気とも取れる言葉は、果たして事実なのかもしれない。
「あらまあ。その時は私も立候補しちゃうわ。」
「これこれ。龍騎が困るではないか。それに俺という存在を超えてから言ってくれ。龍騎よ。」
もちろん俺の才能は生まれた時から持っていたものだが、それを開花させたのはこのたつじいに間違いがない。武道、スポーツ、学業。全ての師匠である。
「そろそろたつじいより強いんじゃない?」
「言うようになったのう。老人に勝って嬉しいか?」
「嬉しいさ。師匠を超えるのが弟子の役目だしな。よし!じゃあ将棋やろう。」
ボコボコにされた。
ちょっと2話で限界でした!!
明日明後日の更新は無いので、また来週!!




