cosθ≒0.997
日本にあるどこかの都市の、どこかの家。その家は古くからある日本家屋であり、その町に比べると時代が止まったままのような見た目である。家の中はリフォームを何度かしているのだろう築年数からは考えられないほどしっかりした作りとなっていた。入口を入って奥には台所があり、左の襖を開けると大きな部屋がひとつ。そこには日本刀などが飾ってあり、真ん中に大きなソファがテーブルを挟んで2つ並んでいた。さらにその奥にある襖を開けると、木で作られたと見た目でわかる机と、これもまた見るだけでわかるほどフカフカのデスクチェア。デスクチェアの背中側の壁の上にはなにやら草書体の文字でなにか書いてある。なんて読むのかは分からない。まぁ、仁義とかそんなもんだろ。部屋の両脇には黒ずくめのスーツを着た見るからにイカつい人達が複数人並んでいる。普通の人ならば緊張が爆発しそうな環境であるが、その真ん中に立つ男には緊張は無かった。彼がなぜここに来ているか。それはそのフカフカのデスクチェアに座る人に呼び出されたからである。
両脇の男たちが一斉に頭を下げ、一人の男が入ってくる。体格的には俺と余り変わらない。しかしオーラというか威厳のようなものがある。この人がここのトップであることは両脇の頭を下げた男たちがいなくても分かるだろう。もちろん俺は頭を下げる必要は無い。
「お前ら、こいつと二人きりで話すことがある。」
その男がそう言うと、一斉に部屋から出ていく。2人きりになった部屋は確実に広く感じた。
「九十九。いや、十六夜九十九さん。お久しぶりです。」
「いいからいいから。そんな畏まるなよ。」
「だって!あいつらこえぇよ!いかにも、十六夜様になに容易く喋ってやがる!とか言って斬りかかってきそうじゃん!」
「いや、まぁそうなんだけど。お前なら勝てるだろ?龍騎。」
「それはそうだがな。それで?急遽久しぶりに呼び出したと思ったらなんだ?極道の道で日本統一するのを手伝えばいいのか?」
「そんなことでは無い。見た目はあれだが、俺たちは真っ当な道を歩いてるってもんよ。」
「じゃあなんだ?」
「俺の妹を攫ってきてくれ。」
意味がわからん。家族である妹なのに攫えってどういう事だ?まぁ何だ。楽しそうだな。
「よし。分かった。行ってくる。」
そう言って部屋を出ようとすると。
「おい待て待て。なんの情報もなしに行く気か。」
「まぁなんとかなるだろ。」
「いいから俺の話を聞け。とりあえず場所を移動しよう。」
そう言うと、黒光りの車に乗せられて、何処かへと進み始めた。
…これ攫われてるの俺じゃねぇ???
たつ兄が出ないといつ言った?
もちろんメインでは無いですがね。




