sinθ≒0.105
体育祭の日はあっという間に訪れた。朝から快晴で、本日の降水確率は0%。驚異的だ。おかげさまで、隣にいる琴葉が得意気な顔をしている。ちょっとむかついた。私、晴れ女だから、とりんにずっと言ってきていたのだ。
学校につくと、そこはとても明るい雰囲気が漂っていた。ムカついていたこの気分もすっかり晴らしてくれるようだ。教室にくるまでに、、いや、教室にも着飾った女の子たちがあふれている。髪を結いお団子にしている子たちが多く、目元や頬にはよくわからないキラキラした物体をつけている。あれが何なのか琴葉に聞こうと思ったが、琴葉はそういうことを全くしない。いや、できないので聞いても無駄だ。いけない。琴葉について失礼なことを考えていると、琴葉が感付いて殴ってくる。そっと琴葉の方に目をやると、登校中にはなかった、いかにも高性能な一眼レフカメラを手にもって何やら難しそうな顔をしていた。それは何か聞いてみると、
「たつ兄専用カメラだよ。」
と、どや顔された。そんな当たり前みたいに言われても。どうやら、父親から借りてきたらしい。ぜっっったいに壊したり、失くしたりするので強く念押した。しかしまぁ、絶対にやらかすので俺が注意深く見ておこう。一応たつ兄にも連絡しておくか。などと考えていると、隣からすごい甘ったるい猫撫で声で、
「ねぇんぇ、りんくん。」
とてつもなく嫌な予感がする。このように話しかけてくるときは、決まって問題ごとを抱えてくる。しかし、無視するとそっちのほうが面倒なので要件を聞くしかない…
「これって、どうやれば写真取れるの?」
琴葉は想像するよりずっとバカなのかもしれない…。その瞬間、腹に鈍い痛みが。本当に殴るんですこの子。しかもグーで。
呆れてしまったが、連絡ついでにたつ兄に相談しようと思ったその時、むくっと頬を膨らませた琴葉の顔がいきなり笑顔に変わった。振り返ると、
「おぅ琴葉。と、ついでにりん。」
俺はついでか。しかしなぜ、ここに?とにかくナイスタイミングだ。琴葉の件で相談でもしておこう。
「そういえば琴葉。写真部のやつ連れてきたぞ。あとロッカーにつける南京錠。」
な、なんだと…?こいつ恐ろしすぎる。琴葉が起こしそうな行動を計算したらしい。ここまでくると逆に引くわ…。とにかく写真部の先輩に撮り方などを教わり、カメラは競技中などはロッカーに鍵をかけしまっておくことになった。それでも心配なのでなるべく行動を共にしよう。
「二階堂君。そろそろ開会式始まるよ。挨拶あるんだから早めにいかないと。」
たつ兄は、そうだったとうっかりした顔をした後、考え事をしながら体育館へと向かった。まさかあいさつ、今考えてる?すれ違い際に
「そうだ、りん。また後でな。サッカーの決勝で待ってるぞ。」
俺が強くうなづくと、ニヤッと笑みを浮かべ、何かを閃いて小走りに体育館へと向かっていった。俺も、遅刻してはいけないので、琴葉を引きずって体育館へと向かった。
琴葉はほんとに…ほんとに…何も出来ない…