sinθ≒0.819
パティシエの戦いは2週間前から始まる。材料の選定。作るデザートのレシピ。さらに試行回数を重ね完成に近づける。夜のパティシエで有名な人物は男性が多い中、女性として答えの見つからない森の中をただ1人突き進む。彼女の名前は、御伽琴葉。弱冠17歳。毎年この時期しか開業しないという、御伽ハウスの新作の物語は今始まる。
「ってちょっと!!!プロフェッショナルみたいなナレーション付けないでよ!!!」
そう。見た目は子供。中身も子供。この琴葉シェフの作るデザートは迷作が多い。溶かして冷やして固めるだけのチョコですら1回で上手くいったことなどない。それ故に2週間という時間をかけ、今バレンタインへ向けて…
「もういい!一人でやるから!」
「分かった分かった。俺が悪かったよ。」
琴葉に1人でやらせて怒られるのは俺だ。毎年毎年、たつ兄へのバレンタインを作るのを手伝わされてる。毎年違うものを作ろうとするから大変なのだ。その年のたつ兄の流行を取り入れ気に入ってもらうためらしいが。あの人板チョコ大好きだから板チョコでも渡せばいいのに。板チョコとは言わずとも、買って渡せばいいのに。
「買って渡したって気持ち伝わらないもん!」
そうか。もうなんでもいいから早く終わらせてくれ。
「今年は力作を作ろうと思うの。」
とても嫌な予感が。毎年張り切りすぎて作れそうも無いものを提示してくる。去年はバケツサイズのプリンだったか。そんなもの貰った方が困るだろと説得し、普通サイズのプリンを作ったな。
「今年はね!ティラミスを作ろうかなって!ママが流行ってるって言ってた!」
いつの話????琴葉の母親は数年遅れてこの時代を生きているんだろうか。そしてそれを何も疑わない琴葉も琴葉である。しかし、ティラミスか。まだ幾分か作りやすいだろう。さすがにデザートを専門としている訳では無いので作り方は分からないが、今の時代スマホでパパっと調べることが出来る。
「というわけで!材料を買いに行きます!」
今買って、今作って本番まで日持ちするものでは無い。つまり琴葉も自覚している。いくら簡単なものであろうと失敗することを。毎年の失敗を糧に学んだ。失敗をしないようにでは無い。失敗をすることを前提とすることを、だ。昔は大変だった。小学生の…何年生か忘れたけど。バレンタインの前日に作ろうとして、失敗しまくり、結局出来上がったのが当日の朝だったことがあった。それ以降どんどん作成時間が伸びていき。作成する物も難易度が高くなり。俺の負担が増えた。今年で終わりにしてくれ。
「材料何使えばいいのかな?」
そうだなぁ。今!!その手に持っている!!!スマホに聞け!!!!!
「これ以上手間をかけさせるようなら俺は手伝わないぞ。」
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なんとも。これは見事な土下座。高い芸術点に免じて手伝うことにしてやるか。とりあえず母親に、今日の夜ご飯は要らないとだけ連絡し、買い物へと向かった
タイトルが!ハイキューじゃないか!
僕はハイキューはいいぞおじさんを本職としております。
ハイキューはいいぞ




