sinθ≒0.799
冬休みが空ける直前。仙台市は大雪に見舞われた。普段は雪は降っても積もらないが、この日は違った。膝元まで積もった雪は積雪量50cmと言ったところか。雪が積もらないとはいえ、東北の家には必ず雪かき用のスコップが備え付けてある。この日も使われることになるが、もちろん雪かきをするのは俺だ。若い男はこういう力仕事を任されるし断れない。勉強したかったなぁ…。雪が降ると音が雪に吸収されとても静かになる。そんな雰囲気が俺は好きだ。静かなので勉強にも向いている。まぁ、仕方が無いので雪かきはするんだが。とりあえず早く終わらせようと、玄関から駐車場までの動線の雪を片付け、家の前の道路に出る。周りの住人も雪かきをしているみたいだ。道路の邪魔にならない位置に雪を思いっきり投げる。かいてなげてかいてなげてかいてなげ…
「ぴぎゃっっっ」
ぴぎゃって言った?ザコ敵が倒された時みたいな音がした気がしたが気のせいか。かいてなげ…
「気の所為じゃない!!!」
なんだ琴葉か。どこかの誰かが作った雪だるまかと思った。
「りんくんのせいで雪だるまになってるの!!!」
これは失敬失敬。
「琴葉の家の雪かきは終わったのか?」
「もちろん!でっかいかまくら作ってきた!」
それは雪かきした事になるのか?まぁいい、なぜここに来たんだ。
「なぜ私がここにって?」
心を読むな
「宿題を!助けてもらいに来た!!」
そんなことだろうとは思ったが、なぜ俺が琴葉を助けなければいけないのだ。俺は散々言ってきたぞ?ちゃんと宿題はやっているのかと。その度に、秘密兵器があるから大丈夫だと言っていたが。ん?もしかしてその秘密兵器って…。
「私の秘密兵器よ!いざ!起動せよ!!」
とりあえずチョップ。
「りんくん?あなたは、私を雪だるまにした。その償いをしなさい。」
そんな…。まさか、さっき雪をかけられたのって…わざとだったのか…?
「絶対答えは教えないし、俺の宿題も見せないからな。俺は解き方を教えるだけだ。分かったな?」
りょーかい!と元気よく俺の家に入っていく。さすが幼馴染。遠慮がない。
一通り雪かきを終わらせて自分の部屋に戻る。エアコンで温められた空気が冷えた指先に染みる。ん?エアコンで温められた空気?さすが琴葉。勝手に部屋を温めている。遠慮のえの字もない。
「りんくんの為に温めておいたよ!」
どこの秀吉だ。
さぁ、戦じゃ戦。ほれ宿題どのくらい終わってないか見せてみろ。
「嘘…だよな?」
「宿題やらなくてごめーんね♡」
今夜は寝れそうにないな…。
幼馴染のJKと夜通し部屋に入り浸り。何も起きないはずが無く。
りんたろうの部屋からは悲鳴が朝方まで聞こえたそうだ。




