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sinθが分からない  作者: y42ks
sinθ編
54/86

sinθ≒0.799

冬休みが空ける直前。仙台市は大雪に見舞われた。普段は雪は降っても積もらないが、この日は違った。膝元まで積もった雪は積雪量50cmと言ったところか。雪が積もらないとはいえ、東北の家には必ず雪かき用のスコップが備え付けてある。この日も使われることになるが、もちろん雪かきをするのは俺だ。若い男はこういう力仕事を任されるし断れない。勉強したかったなぁ…。雪が降ると音が雪に吸収されとても静かになる。そんな雰囲気が俺は好きだ。静かなので勉強にも向いている。まぁ、仕方が無いので雪かきはするんだが。とりあえず早く終わらせようと、玄関から駐車場までの動線の雪を片付け、家の前の道路に出る。周りの住人も雪かきをしているみたいだ。道路の邪魔にならない位置に雪を思いっきり投げる。かいてなげてかいてなげてかいてなげ…


「ぴぎゃっっっ」


ぴぎゃって言った?ザコ敵が倒された時みたいな音がした気がしたが気のせいか。かいてなげ…


「気の所為じゃない!!!」


なんだ琴葉か。どこかの誰かが作った雪だるまかと思った。


「りんくんのせいで雪だるまになってるの!!!」


これは失敬失敬。


「琴葉の家の雪かきは終わったのか?」


「もちろん!でっかいかまくら作ってきた!」


それは雪かきした事になるのか?まぁいい、なぜここに来たんだ。


「なぜ私がここにって?」


心を読むな


「宿題を!助けてもらいに来た!!」


そんなことだろうとは思ったが、なぜ俺が琴葉を助けなければいけないのだ。俺は散々言ってきたぞ?ちゃんと宿題はやっているのかと。その度に、秘密兵器があるから大丈夫だと言っていたが。ん?もしかしてその秘密兵器って…。


「私の秘密兵器よ!いざ!起動せよ!!」


とりあえずチョップ。


「りんくん?あなたは、私を雪だるまにした。その償いをしなさい。」


そんな…。まさか、さっき雪をかけられたのって…わざとだったのか…?


「絶対答えは教えないし、俺の宿題も見せないからな。俺は解き方を教えるだけだ。分かったな?」


りょーかい!と元気よく俺の家に入っていく。さすが幼馴染。遠慮がない。


一通り雪かきを終わらせて自分の部屋に戻る。エアコンで温められた空気が冷えた指先に染みる。ん?エアコンで温められた空気?さすが琴葉。勝手に部屋を温めている。遠慮のえの字もない。


「りんくんの為に温めておいたよ!」


どこの秀吉だ。

さぁ、戦じゃ戦。ほれ宿題どのくらい終わってないか見せてみろ。


「嘘…だよな?」


「宿題やらなくてごめーんね♡」


今夜は寝れそうにないな…。

幼馴染のJKと夜通し部屋に入り浸り。何も起きないはずが無く。



りんたろうの部屋からは悲鳴が朝方まで聞こえたそうだ。

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