sinθ≒0.788
なんか8テンして外したみたいなタイトルなのでやっぱパチンコは行かない方がいいかもしれない。
夏休みに比べて短い冬休みは、もちろん冬期講習も短い。年が開ければ共通テストはすぐそこであり、2年生の俺達も同日に同じような日程で同じ試験を受ける。受験勉強はもう始まっているのだ。とは様々な先生から言われている。実際、休み時間に参考書を開いて勉強をしている生徒が増えてきている。3年生になれば毎月模試が設けられており、常に自分の学力の推移を把握することができるらしい。つまり、2年生とはいえ、年末年始も多少は勉強しなきゃいけない。家族は初売りに出かけている。静かに家で勉強が出来る。うん。素晴らしい勉強日和だ。
家のチャイムが鳴る。インターホンについたモニターを見る。消す。よし、勉強再開だ。
家のチャイムが鳴る。モニターを見る必要も無い。勉強を続けよう。
ドンドンドンと扉が叩かれる。スマホが鳴る。スマホの電源を切る。
「梔子凛太郎。居るのは分かっているぞー。」
「いるぞー。」
「早く出てこないと俺達は勉強もせずここでずっと叫び続けるぞー。」
「続けるぞー。」
全く。何故、正月早々めんどくさい奴らに絡まれなければいけないのか。
「それ以上叫ぶなら宿題教えてやらないぞー。琴葉氏ー。」
「むっ。」
よし、これでひとつ声が減ったな。
「俺は叫ぶぞー。」
たつ兄を黙らせる方法を1分ほど模索し、何も思い浮かばず、堪忍して扉を開ける。
「正月からなんの用だ。」
「「あけましておめでとう!!さぁ!初詣の時間だ!!」」
事前にセリフを考えていたようで同時に発される。ちょっと待っててくれ。男とはいえ準備があるんだ。準備中も。
「早くしろー。凍え死ぬぞー。」
「死ぬぞー。」
と声が聞こえてくる。とてもやかましい。10分ほどで準備した俺は不機嫌な顔で外に出た。
「せっかくの勉強日和を邪魔しやがって。」
「まぁまぁ。ほら、綺麗だろ。琴葉。」
馬子にも衣装とはこの事で、普段は中学生にしか見えない琴葉も…。まもなく卒業するくらいまでは大人に見える。じゃじゃーんとその場でクルクル回ってみせる。そんなことをせず勉強して欲しいが。まぁ言ったって聞かないだろうし諦める。
ここら辺の住人は基本的に近くの神社へ初詣に行く。決して大きい神社ではないが、出店も多少はあり充分参拝できる。しかし、今俺はバスに乗っている。
「たつ兄も受験だし、私達も来年受験でしょ?」
ってことで、少し離れた八幡宮へ来ていた。八幡宮は学問の神様と呼ばれる菅原道真が祀られており、神社は毎年受験生やその家族で賑わっている。たつ兄や俺はそんなに神を信じていないので、どの神社に行くとかは気にしていないが、琴葉は占いなどがとても好きなのでこういうゲンは担ぎまくるタイプである。
長い長い列を抜け、参拝したあと、御籤を引くことになった。シンプルな200円の御籤。神様は信じてないけどこういう運試しは好きである。3人で同時に開くことになった。
「俺は。大吉だな。」
毎年のことだ。
「私も大吉!」
これは珍しい。雪が降りそうだ。痛い!殴るな!
2人で黙っているたつ兄の御籤を覗き込む。
「…大…凶…?」
えっ。そんな御籤入れてあるの…?受験生もいるのに?たつ兄を見る。怒っている?体が小刻みに震えている。すると、たつ兄は天を見上げ大声で笑い出した。
「はっはっはっ!!大凶てwww大吉より珍しいだろこれ!すごいな!俺運よすぎだろ!!」
まさかの喜んでいた。大凶を引いた人とは思えないくらい満面の笑み。運勢なんか関係ない。自分の実力でどんな大学だって合格するようなたつ兄。だったら珍しい大凶が嬉しいのだろう。俺と琴葉の御籤の内容は当たり障りのないことしか書いていなかった。たつ兄のには…
"あなたは日本では手に負えません。"
そんなこと書かれてる御籤あるの?!さすが俺だな!とドヤ顔をしている。どうなん?それは。
「俺は新世界の神になる!」
何処の夜○月だよ…。まぁ、嬉しいならそれで良かった。せっかく来た初詣だ。テンション下がって帰るなんて嫌だっただろう。
「さぁ。琴葉。」
「なに?りんくん。」
全ての用事が終わった。あとは帰って勉強だ!
いやぁぁぁぁあと大凶引いたような悲鳴が聞こえる。




