sinθ≒0.755
正直きつい。自分の限界を超えた跳躍はそれ相応の負担もある。現に足首が痛む。これ以上は跳べない。体がそう言っているのだ。頼む。頼むからここで終わってくれ。
そんな願いは誰かに届いたみたいだ。バレー部のエース。名前も知らない彼は190cmは跳べず、競技はここで終わった。
「優勝は決まったが、190cmの記録は体育祭の歴代記録を更新している。さらに更新するために挑戦できるがどうする?」
そういうのは、体育教師であり、陸上部の顧問でもある高城先生だ。現役時代は有名な選手だったらしい。なんの種目で有名なのかまでは分からないが、先生が現役の頃なんか俺たちは産まれてもないので知るはずもない。
「足首が痛みます。怪我をする危険性があるのでやめます。」
「そうか…。来年はもっと高く跳べるようになるんだぞ。」
なんか含みのある言葉だな。陸上部への勧誘されなかっただけマシだが。いや、今しないだけであとから来るかもしれないので油断はしないでおく。
「よく頑張った。りんたろう。ほら、保健室いくぞ。」
たつ兄が肩を貸してくれる。保健室とは名ばかりの保健の先生が待機している仮説テントに向かう。
「俺がお前の身長ならあと5cmは跳べてたな。」
この人は…。褒めたかと思ったら急にマウントを取りやがる。実際そうなんだろうけど。
「言っとくぞたつ兄。足首の怪我が無ければ俺だって跳べてた。」
言うじゃねぇか。と小さく呟くたつ兄の顔は笑っていた。
「それより、たつ兄。走幅跳の時わざと琴葉に砂かけただろ。」
「バレた?」
バレるわ。あんなに砂煙のたつ着地なんか見たことないわ。しっかり、カメラが壊れないようにタオルまで渡して、確信犯なのは間違いないだろうと考えていた。まさか本当だとは…。まぁ、琴葉が気づいてないならいいか。
「りんくん!大丈夫?」
仮説テントに琴葉が騒がしくやってくる。
「まぁ、大丈夫だろ。限界超えた代償だな。」
ふーん。とすぐに興味を無くす。ほんとに心配してたんかこいつは。
「たつ兄の翼はね黒色だったの。りんくんのは白色だった。」
何の話??
「なんでか写真には写ってなかったんだよね。」
生えてないんだから当たり前だろ。でもまぁ確かにあの時は翼が生えたかのように体が軽かったのは間違いない。たつ兄の跳躍の時も翼が生えたかのように跳んでいたし、俺の時もそう見えたんだろうな。
「私も翼生やしたい…。」
「お前に似合う翼はペンギンの翼だよ。」
むぅっ。と頬を膨らましあからさまに不機嫌になる。と思いきや、泳ぐの早いからいいか!とすぐに機嫌になる。それでいいんだな…。
足首の処置を軽くしてもらい、運営テントに戻る。閉会まで間もなくだ。得点の集計と、後期体育祭の順位と前期体育祭の得点と合算した全体の順位を出さなければならない。
まぁ、1位はたつ兄のクラスなんだろうけど。
50話まで来た?たぶん。
タイトルをsinの数値にしてるから分かりにくいわ…。
もっと楽なのにすればよかった…。
100話までに終わると思います。
たぶん




