sinθ≒0.731
走高跳にはおよそ2種類の跳び方がある。お腹を下に向けて跳ぶベリーロールと、背中を下にする背面跳びである。より高く跳ぼうとするならば背面跳びにするのが良いとされており、俺もバレー部のやつも勿論背面跳びである。とはいえ、背面跳びはとても難しい。背中を下にすることでバーとの差が分かりにくいし、足を上げるタイミングを間違えるとちゃんと高さが出ていたとしても、足に引っかかりバーは落ちてしまう。また、助走のリズムも難しい。その点に関しては、バレー部のやつとはレベルが違うと思っている。向こうは、普段からボールのタイミングに合わせて助走することに慣れており、言っちゃえば助走のスペシャリストと言っても過言では無い。俺は別にリズムとか気にしてジャンプする機会などないし、リズム感も人並みだと思っている。たつ兄は所謂音ゲーと呼ばれるリズムゲームも好きでよく生徒会室でやっていたからリズム感はあるのだろうが。そんなことも無いのかな。
「音ゲーはな。譜面覚えれば良いだけだ。この曲なら今は目を瞑っていてもできる。」
ということを言っていた気がする。
どうでもいいことを考えてたら自分の番が来ていた。175cm。たつ兄の身長は越したバーは俺にとってはまだ目線より下ではある。琴葉はバーの近くに陣取ってカメラを構えている。普通にしてても小さいのに、より屈んで、ベストショットを狙っている。目標の185cmを達成するために今のうちから調整をしておく。これまでの高さは少し助走を失敗したとしても跳べる高さではあった。たつ兄の言っていた音ゲーは暗記ゲーであるという言葉を思い出す。そうか。これもそうだと考えればいいんだ。自分のベストなリズムを覚えてしまえばいい。1回はミスることが出来ることを使い、わざと失敗する。まだ跳べる高さであることを確認しつつ、ベストな歩数歩幅を覚える。失敗した俺を横目に何かクッションの横からガミガミ文句を言う何かがいた気がするが、小さくて見えなかったのできっと気のせいだろう。勿論2回目では跳べる。さっきのジャンプから修正したつもりだがまだ少しズレがあるな。185cmを跳ぶ前に微調整をする。180cmもわざと1回失敗して2回目に最終調整を終える。これで完璧だ。
185cm。もちろん俺の目線よりは高い。しかし隣に立つそいつはそれより高く、まだ余裕の表情である。
助走。いや、ここはあえてこのように言おう。ホップステップジャンプ。まぁこれは三段跳だけど。最後の3歩でいえばこれでもいいだろ。会心のジャンプだ。けつが少しバーに触れる。一瞬焦って、着地の後後転する形で回転し、バーを見る。少し縦に揺れしかしそれは落ちない。成功である。柄にもなく小さくガッツポーズをする。だがしかし、次に跳ぶ彼も、185cmをクリアしてしまったのだ。
どこかで身長について書いたっけと思ったので一応まとめておきます。
たつ兄:173cm
凛太郎:185cm
琴葉:153cm
とかだった気がする。成長期なので前書いた身長よりでかかったら成長したと思ってくれ。小さくなってたらそれは土下座します。、




