sinθ≒0.616
文化祭2日目。我が校の文化祭の本当の勝負の日は2日目であることは開催日が金土であることから分かることではあるが、例えばある飲食店であれば2日目に使えるクーポンを一日目に配ったりと、工夫をしている。逆に味に自信があるなら少しでも売上を伸ばすために値引きなどはしないなど。家庭科部なんかはこっち側である。難しいのは、アトラクション系の出店である。琴葉のクラスもそうであるが、お化け屋敷など値引きしたところで来ない人だって多い。このような出店はいかに、来てくれた人が盛り上がっているかが大事である。その点で言えば、タイムアタック要素のある迷路なんかはゴール後の盛り上がりは期待できるものだろう。
中庭で行われているライブや演劇などの出し物は一日目と同じ内容の場合も多く、特に演劇なんかは同じ内容である意味がある。不公平なく、出店を紹介することは、競走の観点から見ると非常に大切であるからだ。
また、生徒会が集計した売上は秘匿されている。これは、例えば一日目売上1位だった場合、看板に初日売上1位などと書けばそれだけで2日目の集客につながってしまう。平等にいくなら秘匿するのも大切であると言える。
それを踏まえて今日のお客さんの入りはどうだろうか。うーん。倍?3倍?やばいな。昨日色々食べておいてよかった。あのたつ兄ですら、演劇部の看板のコスプレをやめて全力でゴミ回収している。トラブル起きそうだなぁ。嫌だなぁ。ゴミ回収で学内全部回ることでトラブルを未然に防ぐ効果もある。
どこかで聞いたことのあるロックバンドの音楽が聞こえてくる。今は軽音部のライブの時間か。本家を知っているともちろん技術の差はあるが、聞いたことある曲が流れてくると少しテンションが上がる。少し鼻歌を歌ってしまう。
「りんくん。今日テンション高いね。」
げっ。振り返るとそこには琴葉がいた。なんか。薄くなった?影がじゃない。物理的に体が。
「人多すぎてもみくちゃにされた。」
なるほどね。琴葉は一般人からしても小柄な方だ。うちの制服を着ていなければ中学生や小学生に見られてもおかしくない。
「そろそろたつ兄が迷路挑戦するんじゃないか?」
そうだった!と思い出して走り出しそうな琴葉を止める。危ないからゆっくり連れていこう。俺もたつ兄の攻略は見たい。




