sinθ≒0.454
林間学校の時、俺は確かに探偵のような事をして事件を解決した。しかしながら、俺は別にそれが得意分野という訳では無いし実際運も良く解決することが出来た。でも、たつ兄は違う。たつ兄は普段から、推理小説や探偵ものの漫画などを読み漁り、推理という場面にたつと本領を発揮することが出来る。運動神経の良さや頭の良さはあくまでも付随的なもので、彼の求める探偵像に必要だったから培っただけにすぎない。
「りん。お前に頼みたいことがある。」
たつ兄からの指示に従うことが、今は最善策である。本当は自分で解決したいけれど。いまその感情は内に秘めておく。
俺が調べた事をたつ兄に伝えると、たつ兄は笑っていた。
「よし、俺の推理は間違って無さそうだ。」
そう言うと、職員室へと歩き出した。
職員室は、すこしピリついた雰囲気が漂っていた。それはそうだろう。我が校で、物損事件が発生した。犯人が外部の人間なら不審者として対応しなければいけないし、内部のものである場合は、事件を内々で処理して外部へと漏らさないようにしなければならないだろう。
たつ兄は、勢いよく扉を開け、
「先生方諸君。看板破壊事件の犯人がわかったので、報告しに来た。」
職員室には緊張感が走る。そこに居るのは我が校きっての天才。 先生も頼りにするほどの生徒会長である。その彼が犯人を見つけたと言ってきたのだ。
「生徒会長様がどんなか知らんがな。外部の不審者がやったに決まってるんだ。犯人なんかわかるか。」
生徒指導部をやっている。例のかんたかである。
「そもそも。監視カメラもないうちの学校でどうやって昨晩の破壊事件の犯人が分かるってんだ。」
「まぁ落ち着いてください。神田先生。今から全てを話しますから。」
たつ兄の顔が少し強ばる。そして種明かしが始まる。




