sinθ≒0.391
「ぎゃぁぁぁぁ。首が締められてるぅぅぅ。」
何故こうなったのだろう。たしか昨日、蛇の話を無限に聞かされてて…
「よし!りん!琴葉!明日、勉強会終わったあとステグラ前集合な!」
この街のいちばん大きい駅には、見上げるほど大きなステンドグラスが飾られている。よく待ち合わせ場所になっているその場所に集合と、号令がかかった記憶はある。集合した後に気づいたら、琴葉の首に蛇が巻きつけられている。
「ちょっと、たつ兄。助けてあげなよ。琴葉が、可哀想なことになってる。」
がははは。と体の大きさに似合わない豪快な笑い方のたつ兄は、助ける事無くなんなら、自分の体には5匹くらい蛇を巻いている。やばいやばい、琴葉が頭から飲まれそうになってる。死を悟った顔をするな。助けてやるから諦めるな。
「ありがとう。りんくん。ほんとならたつ兄に助けてもらいたかったけど…。」
一言余計だな。再び蛇をまきつけておいた。
ここは駅から徒歩五分ほどにある、爬虫類バーというものだ。どうやら、たつ兄の行きつけらしい。バーとは言いつつ、子供から大人まで楽しめるらしく、メニューはお酒だけじゃなくてソフトドリンクも数多く揃っていた。
「どうだ。琴葉。なにかインスピレーションは得られるか?」
「得られるかーーーーー!!!」
琴葉が珍しくたつ兄につっこんでいる。そう。たつ兄が琴葉に頼んだデザインのインスピレーションを貰えるだろうとあくまで優しさで。いや、あくまでというか、悪魔だが。俺はなるべく関わらないようにゆっくり烏龍茶を飲んでいた。ひぃぃぃ。首筋に蛇をつけるな!びっくりするだろ!せめて飲み終わってからにしろ。それよりも、たつ兄はここにどれほど通っているのだろうか。店員さんとも凄い親しげに話すし、バーにいる爬虫類達がどことなく楽しそうである。爬虫類も懐くとかいう習性があるんだな。
「たつ兄。そろそろ時間だから。帰ろう。」
「そうか…。ここからが楽しいってのに…。」
ここまでも充分楽しそうだったろ。そろそろ琴葉も限界そうだから。爬虫類バーを後にした。
「夢で出てくる…。」
ただでさえ痩せ型の琴葉が、げっそりしてる。
「帰りにケーキ買ってやるからよ。デザイン頼んだぞ。」
凄い。さすがたつ兄。琴葉の扱いをすごく分かっている。
「あとついでに夢に俺も出演してやるよ。それなら問題ないだろ?」
狙った人物の夢に行けるんですか?!この人は恐ろしいな。ついでに、りんの夢にも出てやるよ。というセリフは無視しておく。
数日後、琴葉からデザインが出来上がったと連絡が来た。
爬虫類バー楽しいらしいね(妹談)




