sinθ≒0.309
宿泊施設から少し離れたところにある建物に事務所があった。ここにはこの施設を管理する人達や、講義をしてくれた方達などがいる。俺たちのような研修を受ける学生が、入れ違いにどんどんやって来るのだそう。そんな話をしてくれた人は山野さんというらしい。名前だけでここの担当になったのではないかと疑うが、さすがにそんなことは無いだろう。山野さんはここの管理を始めてから30年ほどらしい。過去に同じような事件はなかったか、部屋の物音などについて質問してみた。
「10年ほど前までは、よく色んな事件が起きていたな。でも、ぬいぐるみが切り裂かれる事件なんてものは聞いたことがなかったがなぁ。世の中物騒になったものだ。」
定年も違いだろう歳なのにその喋り方には歳の差を感じない。とてもラフで喋りやすい印象である。
「物音に関しては、逆にここ10年の間にそういう報告が増えたな。きっと野生の生物が入り込んでしまったんじゃないか。今までは何も問題は無かったから、無視していたんだけどなぁ。」
念の為、心霊現象についても聞いてみたら。山野さんはとても複雑そうな顔をした。なにか喋りにくいことでもあるのだろうか。少し悩んだあと山野さんは、
ここだけの話なんだがな。と話し始めた。
「今からちょうど10年以上前、に、ここにある少女がいたんだ。その子はここで働いていた職員の娘さんなんだが、家に1人で置いておけなくて一緒に着いてきてたんだ。小学校が入ってからは長期休暇の間はずっとここで過ごしてた。でも、ちょうど10年前の今頃だったかな。今日みたいに雨の強い日だった。山で一人で遊んでたその子は足を滑らしてそのまま亡くなってしまったんだよ。その子の親はここを辞めてしまったな。もしかしたら、その少女の霊かも?」
なんてな!がはは。と笑う。とても恰幅の良いその見た目にあった笑い方ではある。そういえば、と言い、なにやら事務所の机から一枚の写真を取り出してきた。
「この子だよ。ちなみに後ろが俺な!めっちゃ痩せててかっこいいだろ。少女の隣がその子の親だな。」
まだ不確かなことはあるが、ほぼ犯人がわかった。確証を得るために、琴葉の部屋に行きたいが…
女子の部屋に入る許可は降りるのだろうか。聞くだけ聞いてみようか。
林間学校編はあと2話かな??




