sinθ≒0.292
林間学校2日目の朝は雨だった。屋外で行う予定だった周辺の山々等の調査は明日へと延期となった。昨日の事件について調べたかった俺にとっては好都合であった。尚、室内で行える研修の班は予定通り行う。これもまた俺にとって好都合である。調査をしない代わりに、3日目の予定だった講義を受けるのだが、3日目は帰る予定もあるため、半日分しか用意されてなかった。先生たちは仕方なく残り半日は自由行動としてくれた。他の生徒たちは自由行動となったとしても、雨のためどこかに行くことも出来ずに暇を持て余している。とりあえず、昨日の予定通り、琴葉の隣の部屋に宿泊していた女子生徒を探した。琴葉は研修中のため、適当な女子に聞いてみると案外すんなりと対象の生徒がわかった。ありがたいことに、同じクラスの女子がいたのでそいつにでも聞いてみようか。
スマホが震える。
―――「よう。多分何かあったろ。今暇だから聞いてやるよ。」―――
この人はほんとに…。こんなに離れていても心が読めるのか?まぁ、たつ兄に頼るのは俺の中では負けだと思ってるので、「なんもない」とだけ打って返した。
ちなみに、たつ兄は文章を打つ際に必ず「」をつける。カッコつけてる訳じゃない。書き言葉とかめんどくさくね?「」つければ話し言葉になるから、テキトーに打ってもよくなるよな。とかいう考え方の元必ず「」つけている。カッコもつくしな( •̀ω•́ )✧みたいなことを言ってた気もするが、記憶違いだろう。
これは余談であるが、俺は他人とぶつかることは無い。曲がり角で唐突に誰かが飛び出してきても必ずよけれるからだ。しかし、今回はそうもいかなかった。歩きスマホは良くないな。
ぶつかってしまった女の子が倒れる前に抱えあげ、怪我がしないように何とか取り繕った。ちょうど良かった。琴葉の隣の部屋に宿泊来てる生徒だ。
「ごめんね。近藤さん。歩きスマホは良くないね。それはそうと聞きたいことがあるんだ。」
爽やかに。ぶつかった事を忘れ去るように笑顔で話しかける。ミスは無かったことにするのが大事である。
まぁいいか。とりあえず隣の部屋でも物音がするのかどうかを確認した。
「あぁ。言われてみればしてた…かも?でも、隣の部屋の音なのかなって思ってたから気にしてなかったよ。」
ありがとう。とその生徒とは別れた。次は、管理人に話を聞くことにしようか。




