sinθ≒0.225
すごい。遠くから見ると足だけ解像度がすごく下がって見えるぞ。ものすごく震えているだけなのだが、上半身は平常を装ってるのだからすごいとしか言いようがない。
琴葉にとって救いだったのは、大部屋で複数人で過ごすということだ。トイレも部屋についてるらしいので、まぁなんとかなるだろう。
初日は移動で半日を使ったので、午後に現地のナビゲーターが翌日以降の予定や注意点を講義してくれて終わりであった。夜は外でカレーを作る予定となっている。小さい頃にたつ兄家族に連れられてよくキャンプに行っていたので、火起こしなどは得意分野である。そもそも、不得意分野というものはほぼ無いのだが。
飯盒でご飯を炊き、食材を煮込む。ご飯はお焦げが付いてるのが好きなので、少し長めに火にかける。鍋にかけた食材のアクを取り、充分に火が通ったらルーを入れる。うん。美味しい。この程度、そこら辺の男子高校生ですら出来るだろう。俺の班は、俺に全部任せやがった。あいつら、なにUN○してるんだ。俺も混ぜろ。いやいや、混ぜるのはカレーである。焦げないように火を弱くして、じっくり煮込む必要があるから目は離せない。そういえば、琴葉の班はどうなったんだ?周りでは、いくつもの班があーでもないこーでもないと言いながらカレー作りに苦戦しているようだ。
「りんくん!」
声をかけられ少しびっくりしたが、振り返ると琴葉が小さい胸を張って誇らしげに皿に盛られた料理を見せようとしていた。
「私だってやれば出来るんだから!」
いやそれ、俺らはカレーを作れと言われていたはずなのだが…肉じゃが???
「班のみんなも私も辛いの苦手だから調味料を持ち込んでちょちょっとね(´>∀<`)ゝ」
普通に先生に怒られてた。先生も食べてたけど。
そんなことより、琴葉が料理できるわけないのに、肉じゃがなんてとても家庭的なものなんかどうやって作ったんだ…?
「琴葉は何を担当したんだ?」
「調味料持ってくるだけ」
材料提供する代わりに他の仕事を他人任せにしやがった…!まぁ、班のみんなのためにもそれが最善策であろう。
味は美味しかった。
僕の後輩はホワイトシチューを作ってるところを、鍋を見た先輩に肉じゃが作ってるの?って言われたらしい。
カレーならまだしもホワイトシチューがどうやって肉じゃがに見えるんだ…?




