sinθ≒0.174
体育祭編はあと1話か2話の予定です。
日も落ち始め、気温が下がり始める。それでも、暑い夏の陽気に止まらない汗を拭う。たつ兄はやはり、とてつもなく厄介な相手であった。最初の一点以降、マンツーマンでマークしていたが、それだけで、体力の消耗が激しい。しかし、多分たつ兄は本気を出していない。ほかの種目への影響を鑑みての判断であろう。今のうちに二点、いや三点は取りたい。とはいえ、それでも前半は点をとれなかった。俺たちのチームは、サイドからの攻撃を防がれ、攻めあぐねていたのだ。ハーフタイムも間もなく終わる。一つだけ、確実ではないが方法はある。悩んでいる暇はない。チームメイトに作戦を伝える。
「お前。本当にできるのか?」
できるかできないかではない。やるしかないのだ。覚悟と決意を込めて強く頷く。
後半がスタートする。たつ兄チームのキックオフで始まる。まずはここを凌がねば始まらない。たつ兄にボールを回さないように常に近くでマークし続ける。
「りん。貴様何か計画しているだろ。」
試合中に話しかけるなんて余裕だな。その余裕なくしてやるよ。
「なめんなよ。」
俺は、たつ兄にそう言い残しピッチを駆け上がった。
後半もあと七分。時間がない。チームメイトにアイコンタクトをとる。
「お前には何もさせねぇぞ。」
たつ兄が俺を警戒する。このタイミングしかない。たつ兄を出し抜けるとしたら俺しかいない。チームメイトがサイドを上がる。土煙が上がり、俺にクロスが上がる。俺は、覚悟と決意をもって強く地面を蹴った。




