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最前線  作者: TF
732/733

Fine 音は終わりを告げる 3

メイドちゃんが恐る恐る歩み寄ってくる。

もう、この妹もまた手のかかる!指示をだしたでしょうに!

「伝えたでしょ」

いまさら何?っと言わんばかりに呆れた声で返事を返すと

「わた、私にできます、これぇ?」

あーもう、このやり取り何度目~?まったっく、朝に伝えた時も不安そうにしてたけど

「出来る出来ないじゃない、や・る・の!」

「はぃぃ」

しっしっと手のひらを振って持ち場に戻れとジェスチャーすると肩を落として持ち場に戻っていく

その後ろ姿を見送っていると

「見送りくらい、させてあげてもいいんじゃないの?」

情け容赦ない行動に団長が呆れたのだろう

「やだ、それってさ、最後の別れ、今生の別れってやつじゃん?死に別れって感じがしない?やだよ私、生きて帰るもん」

この返答に団長は何も言わず静かに受け止めてくれる、彼女がそんなの不可能だって思っている、お互い思っているけれど、口には出せない。


そう、今生の別れになるのは決まっている。

だからNo2にも持ち場を離れないでよ?っと釘を刺してある。

だって…あの二人の泣き顔見たら、私だって揺らうじゃうもん。


許されるのなら…残された余生

二人に、ううん、みんなに囲まれて支えられて、ゆっくりと息を引き取る…

何て、夢物語を選んじゃいそうだもん


泥の中に眠っていた私達が居たら、そんなの許しはしない。

無論、泥の一員である私も、許しはしない…

安らかな死何てあり得ない…選べるわけがない。


「この機会にさ、お爺ちゃんとの仲を深めておいてもいいんじゃないの?つってね、にしし」

「流石に今の状況でお爺ちゃんもメイドちゃんをからかう余裕なんて無いでしょ」

「まぁ、ね。それに、メイドちゃんしか出来ない役割だから、この街の人達全員の顔と配置、何をしているのか把握しているのは彼女しかいない、だから、彼女が最も適しているんだよね、伝令係として、そして」ここから先は声に出したくない。

もし、これを敵の誰かが聞いていたら、メイドちゃんが真っ先に狙われるから。


魔力を飛ばす魔道具

それの扱いや指示も彼女に決定権を持たしている


過去の実績があるから?

ううん、彼女だからこそ、戦況を望遠鏡で見渡したり

周囲の状況を的確に観察し最も適した判断を下すことが出来るから


そんなことが出来るのは特殊な経験、ううん、教育が施された人物しか不可能。


まさか、こんな場面でね、彼女が培ってきた経験が生きるとはね~

囲っておくもんだね、稀有な能力を持った人材ってのはさ


…幼い頃の私がメイドちゃんを見て欲しいって思った理由が、メイドちゃんくらい強かであれば貴族達のくだらない社交場とか、取引とか、そういうの任せれるんじゃねぇの?ってね、仕事を押し付けれるんじゃないかって言う淡い期待からだったんだけどね。

こんな形で功を奏するなんて思いもしないよね。


思い返せば、彼女には助けてもらってばっかり

私の時も、今代の私の時も…見えない部分で助けてもらっている。

まぁ、彼女は仕事だから、そう思っていないかもしれないけれど


私としてはずいぶん助けられてきた

感謝してるよメイドちゃん

願わくば貴女も、生きてね…死なないでね。


私の代わりに長く生きて欲しい


この戦いが終わった後の世界で、貴女も人類にとっては必要な存在だからね。


「行っちゃったね」

遠くへと駆け出していく小さな華を見送った

本来であれば私達が見送られる側だけど、これでいい。

彼女には、私達の最後…切羽詰まった表情なんて覚えておいてほしくない。



何時だって

笑いあっていた

あの輝いた日々を胸に残しておいて欲しいから



「・・・」

「・・・」

お互いが何か、言葉を発することはない

私はただただ、雲一つない綺麗な空を見上げ続ける


今更何かを言う必要もない

私達は繋がっている


多くの悲しい結末を迎え

それでも

二人手を取り合うことが出来た


聖女としての運命に自ら身を投げ激流に流されてしまった私

敵によって時限爆弾として用意された彼女


自らの意思とは無関係に流されてしまった部分も数多く

それでも…私達が願うことは流されたから得たのではない


二人が歩んだ道だからこそ

私達はこの結末に対して抗う事を決めた


例え…人類の礎となろうと、未来の人類に否定されたとしても

私達が、人類を救う。


英雄になんてなる気は無い

救世主になる何て気も無い


私は後世では確実に否定されるであろう

そして

団長もまた、敵のスパイや隠者として罵られるだろう


それでも

構わない


私達がどの様な評価をされようが

そんなの、もうどうでもいい。


私達は、私達の大切な人を守る

人類何てどうでもいい

私は…彼女達に生きていて欲しい


いまはもう、ただ、それだけをねがっている


「準備できたみたい」

空を眺め続けていると、準備が整ったことを団長が教えてくれる

「うん…準備ヨシ!いこう、決着の時ってやつ?」

「なにそれ?ふふ、お姉ちゃんは何時だって自然体だね」

拳を前に突き出すと団長が私の拳の上に手を重ねてくれる

「さぁ、最後の戦い」

「うん」


手を重ね、私達の意思が重なっていく

愛する旦那も私を通して手を重ねてくれる


心は何時だって重なっていた。


いこう、最後の戦いへ



「では、作戦通りいくのである」

転送の陣の前へと移動すると直ぐにベテランさんが指揮をとってくれる

「一番最初に入るのはあたいだね」

久しぶりに見る女将のフル装備

綺麗に磨かれていて手入れが行き届いている

旦那さんに愛されてる証拠だね

「うん、周囲の警戒お願いね」

「応さ!」

陣の中に入る一番手は女将

理由は単純明快、一番大きいから

大きい分、敵がいた場合、直ぐに動けるように前に出てもらう

何かあったときに後退しようにも、女将が後ろにいると詰まっちゃうからね

「ついでは吾輩であるな」

「私も共に」

仮に、陣を壊す為に先行していた戦士達に敵が襲い掛かっていたとしても

女将であれば敵を引き付けておけるし

ベテランさんと閃光さんであれば、直ぐに女将と連携して敵を殲滅してくれる

「そして俺の出番というわけだ」

本当はね、次に入るのは私達がベストなんだけど

私達の後から来てなんて、彼のプライドが許してくれなかったので

私達のひとつ前に、行動してもらう。


はぁ、ったく、守る気でいないで、守られる気でいて欲しいもんだよね。

足手まといなんだから。

「っそ、君達が転送されてから次は私達の番」

前を戦士達が固めてくれていれば術者である私に奇襲なんて仕掛けようがない

万を超える数でも予め用意しておかないとね、私達を止める事なんて出来ないよ?


っま、そんな状況で転送の陣何て起動しないから

そういう危惧は無縁ってね。


「最後は、僕が入って」

「転送先にいる先行してもらった人達の指揮をとって転送の陣を守って欲しい、前へ出れる様になったら臨機応変に皆のサポートをお願い」

最後はティーチャーくん

彼の性質はオールラウンダー

術式も、アタッカーも、タンクも、攪乱、陽動といったように

何でもそつなくこなしてくれる


今回の陣形はこんな感じ


女将

ベテラン閃光

私 団長

ティーチャー


って感じかな?

まるでラスボスを倒しに行く勇者御一行ってね。


各々の役割としては


女将がアタッカー

ベテランさんが、準アタッカー

閃光さんが攪乱兼準アタッカー

王が…遊び人かな?ついてくる精鋭騎士達は3名は王の守りに徹してもらう

私が攪乱、兼、陽動、兼、アタッカー、兼、指揮、兼、術式によるサポートってところかな?

団長が守り兼ヒーラー兼術式サポート

ティーチャーくんが、全体を見通して足りてない箇所のカバー


ってところかな?

見てわかる通り、戦士達が思う存分、思いっきり暴れてもらうスタイル!

魔力の温存何て関係なしに魔石から魔力を吸い出して暴れまくってもらう!

魔力が無くなったらすぐに新しいのに交換すればいいし、皆、チャージ用の予備の魔石を持ってる

彼らが主軸!…ボスまではね


そう…出来る限り、私という切り札を温存してもらう陣形


全員が五体満足でボスのもとに辿り着いて奇跡でも起きてあのドラゴンを倒せれたら、切り札を使うことなんて無いだろうけれど


…そんな甘い展開、許してくれるわけがない。


私の切り札は、車椅子に取り付けてある今代の私が用意した武器

そして…胸に埋め込んだ邪悪な魔女が作りし錬金物


意識を向けると異物感としてしっかりと感じる異物…

神を冒涜するような異物…だというのに…彼は来なかった、来てくれなかった。


っへ、これを長期間保持しているのに粛清されないってことは

これが、粛清の対象ではなかったのかもね!


冷静に考えるとその可能性が一番高い。

命に対して冒涜ではあるけれど、始祖様達にとってはタブーではなかったのだろう。


ってなると、あの邪悪な魔女っという存在そのものがタブーだったのかもね。


今代の私は、もしかしたら…始祖様、あるいは、始祖様が与する組織の誰かがこの星に来るのではないかって期待していた、始祖様の誰かがこの星にやってくる理由を作る為に、胸に埋め込んだ異物を生み出したのかもしれない。


粛清対象となっていた邪悪な魔女が生み出した危険な品物を今代の私が生み出し保持しているからこそ、粛清しないといけない、その為に、この星に降臨するじゃないかって淡い期待


残念ながら、それは無かった。

始祖様は助けに来てくれない、なら…


自分たちの星の事は自分達で解決するべき


「最後の確認はお終い、それじゃ…」



「いこっか」

まるで散歩に行くかのように気の抜けた言葉

それでも、皆は

「っであるな」「いくとするさぁね」「・・・!」「っふ、それも良かろう」「行こう」「はい」

合わせてくれる、気の抜けた返事に合わせてくれる。


開始宣言は緩く、されど、皆の気は引き締まり

巨躯の女性が前へと進む。


女将が転送の陣前に立つと陣が起動し

「っさ、あたいからだね!確認だけど、敵が居たら潰して良いんだろう?」

「お願い」

最後の確認をした後、彼女は小さく笑みを浮かべ親指を立て

「応さ!まかせな!」

ズンズンっと重たく響く足取りで進んでいき転送の陣へと吸い込まれていく…


彼女の姿が見えなくなって僅か…幾ばくかの時間を待てど、女将が戻ってくる様子もない。

っであれば、転送の先は問題なさそうってことになる。

「…うむ、先輩が戻ってくる様子も無し、吾輩達もいくのである!」

「はい!」

私が次っと言う前にベテランさん達が動き始めてくれる。

大きな木箱を抱えた二人が転送の陣へと入っていく


そして、女将の時と同じように5秒から10秒ほど待機する


この間、多くの人が固唾をのみ待ち続けているが

私としてはこの段階で緊張するような出来事なんて起きやしないって思ってるんだけどね

こんな序盤で仕掛けてくるとしたら待ち構えるか、街へ奇襲突撃くらいしかない。


「では、ついでは俺の番だな、行くぞ我が威光についてくるがよい」

「っは!!」

金色の鎧が一つ

青色の鎧が三つ


転送の陣へと吸い込まれていく。

金色の駒はともかく、青色の駒はある程度、頑張ってくれると助かる

例えポーンだとしてもね。


ポーンを追いかけるようにクィーンも動かないとね

「進んでも?」

「いいよ!お願い」

車椅子が押され転送の陣へと踏み入れ

視界が開け


私達は死の大地へと…

視界が開け、見えるだい、ち…


視界が開けた瞬間、背筋が凍った

血の気が引いた


何かあれば戻ってくる

陣は起動したまま

何かあれば陣を閉じる


そう思っていた


『計は成った』



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