表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
726/733

Cadenza 私の、私達の…皆の歩んできた道 10

「あ!ごめん!」

自分のせいで怪我をさせてしまったのではないかと、慌てて膝をついてしまった彼女の腕を掴み立ち上がらせると眉間に小さく皺がより、頬が赤くなって、耳も赤くなってる。

瞬時に膝へと視線を向けてみるが、裂傷などは無く擦過傷もない、そうなると、頬が赤くなっているのは驚いたせいによる高揚だろう。

きっと、メイドちゃんも急に声を掛けられて驚いてしまったのだろう。

特に怪我がないのを確認すると心が落ち着いてくる。

「っふ、それを注意する我も無粋と言ったところか、許せよ。素通りすればよいモノを、ついな、出来心というやつだ、無粋な我が声を掛けてしまった」

誰に話しかけているのか内容が今一つわからないけれど、此方に向けて声を出す人が近くに歩み寄ってくる。

誰なのだろうかと、聞きなれない声をする人物の姿が月明りに照らされ、顔が見えた。

その顔に覚えがある、つい最近あったから忘れるわけがない。

「王様、お一人でどうされたのですか?」

忘れるわけがないのだけれど、王様とこんな場所で鉢合わせになるなんて思ってもいなかった。

こんな場所に居るなんて…ここってさ、病室や食堂に向かう道、どうしているのだろうか?

騎士達と一緒に門を守っているのだと思ってた。

考えられるのだとしたら、休憩時間?これから食事?それとも、お食事の帰りだろうか?


どうしてここにいるのだろうかと、首を傾げ見つめていると

「憂いた顔は似合わぬ、安心しろ、一人ではない、物陰に何名かいるぞ。ほれ?探ってみるがよい、そも、今の時点でわからぬのであれば気配を感じる訓練を怠っているのではないか?それでも、あの男の孫か?」

挑発される様にっていうか馬鹿にされた気がするので、意識を鋭くしここが死の大地と同じと考え周囲の気配を探ってみると、小さな鼓動を感じることができる。


心音が聞こえる…

とても、落ち着いて気配を殺すように息も小さくしている

数は…


「ひのふの…えっと、5人?」

物陰へ指を刺しながら数え、正解かどうか目の前にいる人に尋ねてみると

「ほぉぅ…良いな、やはり全ての理は血筋へと至る、っというわけか、っふ」

正解かどうかの答えが返ってこないばかりか、変な表情をしている。

何だろう?何か見たことのない変な顔してるけど?驚いてるのかな?


「あれはですね、皮肉を言ってるんですよ、黄昏てるってやつです」

私にだけ聞こえそうなくらい小さな声でメイドちゃんが教えてくれるので、そうなの?っと、メイドちゃんと同じように小声を出し、抱き起したメイドちゃんの顔を見ようとしたら既に、私の背中に回り込んで私の服を強くつかむ。

王様が苦手なのかな?

「秀でし血筋…あの孫にして、あの血筋は健在か。良いな、お前という存在…男であれば剣として傍に置きたかったものよ」

惜しいな、女であれば、傍に置くわけにはもいかんからなって、小さく呟いてるの聞こえたけれどさ、私、剣じゃないよ?

物扱いされる覚えなんてない…


むぅ、失礼な人だ、姫様が王様と会わない方が良いよっていうのはこういうこと?

失礼な人だからって意味かな?


「剣っというのは比喩です、例えです、王家の剣、つまりは、お爺さんと同じく筆頭騎士として傍にいて欲しいって意味です」

メイドちゃんの解説によって、物扱いされたのではなく、傍にいて欲しい人材であると褒めてくれたことに驚くの同時に、悪い気が飛び、照れくさくなる。


…あ!なるほど、そう言う意味なんだ。

言葉の意味が分かりづらい…


もしかしなくても、王様ってさ、こんな感じでずっと話してくるの?会話の内容、理解できる自信がない…


「お前らもそう思うだろう?前にするは、剣でもない娘がだ、ご自慢の磨き上げた術を易々と見抜かれたぞ、全てだ、そう全員がな。目の前の女性がこの大地で会得した鋭さやもしれぬがな、この我ですら居ても3名だろうと高をくくっていたのだが、我も、まだまだっというやつだな」

王様が、爪先で地面を叩き後ろに視線を向け

「先の言葉で焦りが伝わって来たぞ、5人全員だ。息を潜め潜伏なぞ止めて大人しく負けを認めるがよい。姿を見せ、見破った相手を賞賛するがよい、首を垂れることを俺が許そう」

暗闇にいる五名に向けて声を投げかけると…

暗闇からメイドや執事の恰好をした人が出てくる、それだけじゃない、驚いたことに、何処にでもいる普通の恰好をした人もいた…

出てきた人達の顔をよく見てみるが、全員見覚えが無い。


メイドや執事だけならまだしも、この街に居ても違和感のない服装をしている人達も、不思議なことに顔をよく見れば見覚えが無い、顔以外は全て既視感がある。

もし、昼間とかに何処かですれ違ってすれ違いざまに会釈されたら特に違和感を感じることも無く会釈して素通りするとおもう、特に気に止めることも無く、この街の人だろうって思っちゃうかも。

この街の人じゃないっということに気が付かない自信がある、それくらい自然体。


凄い人がいるんだって感心していると

「…本当に5名いたのか」

王様も感心していたのかなって思ってたら反応が違う、何処か呆れた様な感じの声と共に出てきた人達を見ている。

出てきた人達が一瞬だけ目を大きく開いてから小さな溜息を零してから背筋を正し私に向かってお辞儀をしてくれる。

王様にじゃなくて私に?王様に言われたから、かな?律儀な人達だ。


「あの~ですね」

出てきた人達の態度に感心していると背中を突かれ

「あの王様ですけど、たぶん、隠れ潜んでいる人の数、一人くらいしかいないと思っていましたよ、どんな場面でも機転が利きそうで、腹芸がお得意そうな人…嫌いですぅ」

とっても、とても、小さな声でメイドちゃんが一連の流れを解説してくれる。


でも、どうして王様はそんな風に言ったのだろうか?

一人しかいないって思ってたのに、数が分かってる風に言ったのはなんでだろう?


解説されたとしても、謎が残ってしまうあたり、私はこういうのが苦手だ。


「お前らの仕事が何たるものか理解していない俺ではない、だがな、ここが何処か理解しておろう?我が領地、敵地ではないわ、俺に付き従う者は一人で良い、他は下がれ」

不機嫌そうな感じで命令しても、メイドさんや執事以外の人達、その誰もがその言葉に従おうとせずその場から微動だにすることなく佇んでいる。


王様の命令は絶対ってわけでもないんだ。

てっきり、王様の言葉には絶対服従って思ってた。


引っ張られる感覚があろうとも、その感覚に従わず、つい、事の流れを見守ってしまう。

「こればかりは引けぬというわけか、王命だというのに、呆れてものが言えぬ、好きにしろ。忠義心溢れる者たちばかりで俺は果報者だ」

言う事を聞かない人達を一睨みしてから視線を下げ

「…この戦況下で俺を潰したとて何も益なぞ生まれぬ、砕け散り行く運命へと誘われている宝石なぞ、ほおっておけばよいモノを」

空気の読めない私でもわかる、目の前にいる人は、心が疲弊している。

医療班として何か助けてあげるべきなのだろうけれど…


踏み込んでも良いモノだろうか?

なんか、私達が関わってはいけない雰囲気ってのを感じる、これってそういうやつだよね?


空気が読めない私でも、さすがにある程度は読める。

読めるけれども、これはどうしたらいいのかわからない。


どうしようかと悩んでいる最中も服は引っ張られ続け

「いきましょう」

空気が読める女性であるメイドちゃんがさっきからずっと小声でこの場から離れる、関らない方がいいってアドバイスを囁いてくれる、勿論、ず~っと私の服を引っ張り続けてる。


空気の読めない私の判断ではなく、そういった空気の読める女性のアドバイスに従うのが一番。

…ちょっと、その、名残惜しいっていうわけでもないんだけど、何だろう?目の前にいる人が、その、助けを求めている様な、小さな子供に見えちゃったんだよね。

「それでは、王様、私達は行くところがありますので」

助けを求める子供であろうとも、目の前にいる男性は立派な大人、彼を支えてくれる人たちも多くいる。

お節介なんていらない、はず。


少々、後ろ髪を引かれる気持ちで頭を下げてから離れようと一歩踏み出そうとした

でも


「待て」


離れさせてくれなかった。

まてって言われたら待つ、それは医療班だから?幹部だから?…私だから?

きっと、そのどれもかな?


でも、何の用事だろう?王様とは、関りが殆ど無い、そんな人に呼び止められる事って、決まってるよね。

少し考えると直ぐに思い浮かぶ、私に個人的な用事、ではなく、この街の幹部に用事がある。

そうと決まれば内容なんて決まってる、彼もまた一つの頭脳だから。


「明日の作戦について、でしょうか?」

彼の言葉通り立ち止まり、彼が何を求めているのか私なり考え導き出した答えを問いかけると

メイドちゃんから溜息が漏れて私の背中に当たっているのを感じる。溜息が当たっている箇所が熱い


「違う、それに関しては既に詳細を届けられている、全て把握している疑問なぞ無い」

返ってきた返事は、予想していた返事ではなかった。

じゃあ、何だろう?

馬鹿な私では何も思い浮かばない。


「これは…俺らしくないが、知ってしまった以上、月が俺に微笑むのでな気まぐれ、っと言うやつだ」

気まぐれ?微笑む?

彼の難解な表現のせいで、今一つ話の内容についていけない。


「そも、お前たちの用事というのは、この街の支配者である彼女、あやつの世話であろう?」

支配者?…ぁ、姫様のことかな?世話?んー言い方があれだけど、間違ってはいない。

私も時折使っちゃうし。



私達の行き先を聞いてどうするんだろう?

何が言いたいのか、はっきりわからないので

「それが、何か?」

つい、言葉にして質問してしまうと、逢引ですよ逢引っという背中から聞こえてくる小さな声に私の恋愛脳が反応し、彼の言葉が何を意味するのか理解してしまった。


あ!そっか、そういうこと!

これから王様が姫様に会いに行くから私達は邪魔だって事かな?

何処かで時間を潰してこいとか、今日は部屋に行くなってこと?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ