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最前線  作者: TF
724/733

Cadenza 私の、私達の…皆の歩んできた道 8

異形な人型が置かれていた場所に指を刺し

「ここにあった槍はな、かの戦士長が命を…賭して戦った相手、それと同じであろうと思われる固体、その鋼の如き硬き肉体をも貫くことが出来た槍でな」

「・・・!」

どうやら妻は一連の出来事を知らされていなかったのであろうな、目を開き驚いている

「姫様が我らの窮地を救う為に槍を、何処か遠い場所から放ち、異形な、そう、あの場所にいない者たちであれば今まで見たことのない形状の人型であろう、その人型が突如死の大地に現れ我らも苦戦を、いや、滅びの道を進むところであった、それを姫様は遠き場所から槍を放ち倒したのだ」

「・・・!」

目を見開き聞いてくれる。

全てに置いて信じられない話だというのに

「俺はな、敵を貫いたその槍が特別なのだと、その時はあまり思わなかった、投げられた槍が鋭いのではなく力強く投げられた、その衝撃によって貫いたのだと」

「・・・」

俺のような拙い語り手であろうと、妻は、頷き目を輝かせてくれている

「槍ではなく姫様が凄いのだと思っていた、だが…考えを改めてる出来事が、俺は、見てしまった。幻かもしれない、夢なのかもしれない、荒唐無稽というのか?夢幻っというのかもしれない、だがな、あれは夢でも幻でもないと思っている。街を、大切な人達を守るために全身全霊、多くの獣達から守るために闘い続け、最後の最後、死にゆく俺は絶望ではなく希望を見た。そう、世に語られし始祖様のような伝説を…希望のような光景、全ての獣を瞬時に切り裂き蹂躙せしお子を見たのだ」

「・・・!」

妻は何も口を挟まない、俺が何か言い終わるまで何時も静かに聞いてくれる。

そういう戦闘訓練を共に過ごしたモノであれば想像つくとは思えぬほどに、愛する妻のお淑やかな部分に俺は心惹かれ、そして、心穏やかとしてお前の隣にいることができる、気が付けば俺も、お前に恋い焦がれていた。

不思議だ、今宵は色んな事が頭の中に湧いてくる。

「そのお子が握っていた槍…あの槍とこの場に残された姫様の槍が…同じではないかと不思議と心から離れることが出来なかった」

「・・・!」

此方を見ているはずの妻の目線が一瞬だけ、違う場所を見た?

一瞬、ほんの僅かな一瞬、妻が目をそらし天を見たが?気配を感じること訓練をしてきている戦士たる妻だ、何か居たのであろうか?声に出さないとなると敵ではないと思うのだが…

まぁいい、俺は語りを続けるとしよう。

「この先の戦い、俺の全てを出し切っても勝てぬかもしれない、必勝必然、俺の中にある無敗の俺とは何か?俺が最も自信を持つことが出来るのは何か?…考えるまでもない俺に必要なのは剣ではなく槍…俺の過去を否定する行為かもしれない、俺達が戦う敵は獣、一つの武具に拘っていては生き残れないと教わり、積み重ねられし教訓によって色んな武具を扱えれるように、いや、違うな俺は追いかけ続けていた真なる千の技を持つ人物、武芸百般っというのか?ありとあらゆる武器を使いこなして魅せてくれた戦士長の背中を目指し、ひたむきに訓練を重ねてきた」

「・・・」

妻が天を見上げたように俺も天を見上げる。

「俺が、憧れていたその全てを否定するかもしれない、だが、それでも俺は、命を預けるのであれば、最も得意とする幼き頃より、周囲にいる誰よりも扱いに秀でていた武器を、俺はこの最後の戦いで共にしたい。欲を言えば、いや、生き残るために戦士長が片時も離さなかった愛用の片手剣のように…特別な一振りが欲しい」

「・・・」

「そのような特別製、今この瞬間に用意するのは不可能、だが、俺は知ってしまった、これを俺は俺の人生において運命というのであれば信じよう。誰もが引き抜くことが出来なかった槍、つまり、使い手を選ぶ槍、そして、あの夢幻の世界で俺の目が閉じる瞬間、希望を与えてくれた槍…俺にはアレが必要なんだ」

「・・・」

「お前もそう思い、何も声に出してくれないのだろう?」

天を見上げ優しく妻を抱き寄せる

「・・・」

妻は静かに俺の答えを待ってくれている。

姫様は言った、沈黙は肯定だと、妻は言葉なき声で、俺の進む道、行くべき場所がどこか教えてくれている気がする。

妻の声なき声、それこそが俺を前へ押し進めてくれると信じよう

「そうだな、決めた、今からでも!誰が何を言おうが!どのような噂が流れようが!姫様や幹部に咎められようが!構わぬ!俺にはあの槍が必要だ!そうと決まれば!姫様に直談判してくる!」

病棟へと駆けだそうとしたが

「・・・!!」

「ん?なんだ?」

腕を引っ張られてしまい、動くことが出来なかった。

さすがの俺も、愛する妻を突き放してまで走り出すような愚か者ではない。

「槍」

「そうだ、俺には槍がいる、必要なんだ、お前を守る為、愛する家族を守るために俺にはあの槍が必要なんだ」

わかってくれるだろっと振り返り妻の方を掴み、目を見つめるが


様子がおかしい

妻の瞳が、視線が、俺を見ていない?

俺が正面に居るはずなのに、違う場所を見ている様な、まるで、俺の後ろ

後ろに何かあるのか?


肩から手を離し、後ろを振り返っても何もない、なら、上か?

上を見上げると眩く輝く月が俺達を見ている。


「こう、でしょうか?」

妻らしからぬ不安げな声?

妻の方へと振り向くと髪の毛を数本引き抜き手の中に丸め込んでいる

「何をしているのであるか?」

「・・・足りない?」

何が足りないのであるか?

「あなた、ちょうだい」

何処を見ているのか、わからない妻の瞳、そこから感じる妻らしからぬ圧に膝まづいてしまいそうになる。

「何をあげればいいの、で、あるか?」

「髪」

ゆっくりと俺の顔へと、いや、頭へと伸ばされる手を俺は…

振りほどくという行為を選ぶことが出来ない


妻だからか?いや違う。

普段の妻から感じることが出来ない何か、何処かで感じたことのあるプレッシャーだから、っで、ある、か?


普段であれば妻が正気を失ったと吾輩も錯乱するであろうが

不思議と、物凄い圧を感じるのに不快感と不信感を感じないのである。

吾輩は、これを、何処かで感じたことがある?経験したことがある、から、で、ある、か?


だとしたら、吾輩はこの流れ


信用するのである。

吾輩がハゲになろうと、妻は愛想をつかすことなぞ無い。

全て持っていくがよいのである。


妻が髪の毛を触りやすいように頭を下げると髪の毛に妻の手が触れ、優しく撫でられる

「これで」

特に痛みも無く妻の手が離れて行く

「もう、良いのであるか?」

「・・・」

髪の毛に触れて見ると、何処を抜かれたのかわからないほどに、僅かな量を持って行ったみたいだ。

妻は…祈るように己のが手を握りしめ、手の中を見つめるように集中している。


何が起きているのか、わからない、予想なんて出来やしないが、きっと、これには何かがある。


俺は、ゆっくりと消えていく圧から解放されても、愛する妻から視線を逸らすことなく見守り続ける

「足りない」

「足りないのであれば、もっと持って行っていいぞ」

頭を下げると

「違う、手を、私の手に重ねて」

「ぬ?次は何が必要であるか?」

違うと言われ頭をあげ、言われた通り、愛する妻の小さな手に両手で包み込むように重ねると

「魔力を」

「わかったのである」

短い言葉でも自然と理解する、妻が欲しているのは紙ではなか卯魔力、多くの魔力が必要なのだろう。

言われた通り、手のひらに魔力を込める。

幸いにして、吾輩はあの訓練を通して、更なる高みへと昇ったのである。


手のひらに魔力を圧縮し込めるなぞ児戯に等しい

求められるように魔力を込めていく…こめて・・・こ・・・ん?


おかしい

魔力を、かなりの魔力を込めているはずなのに、魔力が何処かに吸い込まれているのか、手のひらに集まることなく消えていく

何処かで魔力が抜けていっているのだろうか?…わからない。

おごっていたというのか?


魔力を姫様のように自在に扱えれるのだと思っていたが、まだ、その領域に爪先を踏み込んだ、っと言う事か?


はは

渇いた声が漏れる。

己がこの分野においてはまだまだ浅いっということに変わりは無し。

だが


己を低く見るほど、俺は弱くない!


軽く鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐き

意識を、集中力を高め

魔石から魔力を吸い出し、全身の魔力を腕へと向けて流し込み

手のひらへと集約させる


っが、予想と反して返ってくる反応に焦ってしまう。


魔力が集まっていく感覚がない!?

腕から先まで魔力が流れていくのがわかる、だが、手のひらに集めた瞬間から魔力が消える!?


何処までも何処までも流れ消えていく今まで感じたことのない不可思議な感覚が腕から伝わってくる。

まるで、この分野においてはまだまだ未熟脆弱であるのだと己の未熟さを嘲笑っているかのように手のひらから感じてしまう。


そう、まるで、姫様が吾輩をからかってきたときのような!っである!


なにくそ負けるかっと意地になって魔力を込め続ける

幸いにして魔石は先ほど新しいのに交換してある!


魔石の中にある、魔力量は相当な量が入っているのである!

技術屋がいうには、背中に取り付けた魔石一つ、たったのこれ一つで王都中の魔道具を補えるほどの魔力量が保存されているのである!


まだまだ!魔力は!あるので、ある!!!


魔石から魔力を吸い出し全身に流れる魔力を一点へ向けて動かし続け

魔力を込め続ける、今まで生きてきた、長く生きてきたが、これ程までに魔力を流し続けたことは無かった。


未知の領域

自分が何処まで集中力を維持できるのか

試したことのない領域


もういいと言われるまで

手のひらに魔力が集まっていくのを感じることが出来なくなるまで

俺は、俺を、止めることはしない。


意固地だと言われようが、俺はこの新たな領域に足を踏み込んだのであれば、何処までいけるのか試してみたくなるのも男としてのサガ!


意地でも己の集中力が負けてしまわないように、意識を集中させ魔力を込め続けている

すると、ふと、気が付く


手の中に集めている吾輩の、俺の、魔力とは違う、別の何かを感じる。



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