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最前線  作者: TF
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Cadenza 想いを背負って空気に熱を 5

助けてくれるのだったらとっくの昔に助けに来てくれている。

今、始祖様が何処にいるのか、私にはもうわからない…


「始祖様に比べたら私達はね凡人、何処にでもあって何処にでもいる弱き人、凡人では英雄とは呼べない。勝てない相手に挑むのは愚かな行為、無謀ってわけ」

何か言いたそうに此方を見てくる女将、わかってるよ、慰め方が下手糞だって。

「だからね、悲しまないで良いんだよ、己が勇気がない愚か者だなんて思わなくていい。ベテランさんが辿り着いてしまった結論は間違ってないよ、凡人はね準備に準備を重ねて最も適したタイミング迄、準備を怠らない、逆にこう考えよう、私達はこのタイミングを待っていたんだって」

彼を慰めるつもりはないけれど、彼の意見を肯定すると、部屋に溢れかえろうとしていた殺気がゆっくりとしぼんでいく。


膨らんだ殺気も落ち着いていく…

しょうのないこだっていう視線を送ってくる女将に、自分の情けない部分を曝け出して少し気恥ずかしそうにしているベテランさん。


部屋の中の温度が下がったみたいに、落ち着いてしまう。


さて、どうやって次の話に進めたらいいのかな?流れぶった切ってもいいのかな?

ちらっとNo2へと視線を向けてみるが、何も返ってこない。

「では、姫様、少しよろしいでしょうか?」

先達者達の溢れんばかりの気迫が落ち着いていき、会話の流れが変わったのを見計らってからの挙手!

ほんっと空気が読めるよね、ティーチャーくんは!助かる!

つっても、彼が投げかける質問なんてね、わかりきってる、便乗させてもらうよ。

「いいよ、つっても質問したい内容はね、わかってるよ。大穴の構造を知らないのに相手に勝てるのかって言いたいんでしょ?」

「ぁ、はい、そう、です」

綺麗に上げられた手がゆっくりと下がり不安そうに此方を見てくる。

そりゃ、私だって100%勝てるっていう勝負に出たいよ?でもね、駒が違い過ぎるんだよね。

私達は歩兵、でも、相手はぜーんぶ、クィーンか、飛車や角ばっかりってところかな?

終いには、キングなんて全ての駒が持つ性能を秘めている化け物って感じ?


「前も言った…かな?正直に言えば今回の戦い、絶対に勝てるっていう絶対的自信なんてないよ?私は始祖様みたいに圧倒的で超絶的で私達の理外の外…みたいな強さ何て持ち合わせていない、何度も何度も敗北し死んでいる弱者だからね?それを踏まえて聞いて欲しいかな」

私らしくない弱気の発言に多くの人が困惑しているのが伝わってくる。

今代の私みたいに何が有ろうと解決してくれるのではって淡い希望を抱いていたのかな?

その期待に応えてあげたいけれども…私一人じゃ絶対に勝てないんだよね。


「だからこそ…弱者だからこそ、一人では勝利をこの手に掴み取れない、私達の…人類の未来を獣共から勝ち取ることなんて出来るわけがない。独りでは無理だって確信持って言えるからこそ、皆の助けが欲しいんじゃんか」

情けない姿だって笑う人もいるだろう、成長したねって褒めてくれる人もいるだろう。

何ていわれたって構わない、私は…背負うって決めたんだもん。

「本音を言うとね、独りで全てを終わらせれるほどの力を得られるのなら私だって力が欲しいよ?それでパパっとみんなが気が付かないうちに解決してあげるんだから!…でも、そうはいかない、私一人の体を改造したとしても勝てる見込み何て無い、出来る事なら、皆と一緒にその宿業を背負い無限の魔力で戦いたかった、研鑽し学び、磨いてきた魔術で敵を吹っ飛ばしてやりたいもん…」

己の弱さを叩き潰すように小さな手で机を叩くと閃光さんが静かに視線を背ける

ぁ、君を責めたわけじゃないからね?


「でもね、安心して、私が何もしないわけじゃない口だけご立派な司令官様になるつもりいなんて無いよ!一人では気が付かなかった。気が付かせてくれた。ある人物がね、私が戦う為の方法を提案してくれた。だからこそ、皆が背負った宿業、その席を外すという決断へと至ることが出来た」

提案してくれた団長に視線を向けると何か、背筋を伸ばして目を瞑ってさ、うんうんって頷いてるけど、貴女の事を言ってるんだよ?話聞いてない可能性あるな、妹は…

「ただ、弱点は勿論あるよ?弱点っていうか条件だね、私と団長、二人が揃っているっていう条件になっちゃうけど、魔力が乏しい私だってみんなと一緒に戦うことができるから!魔術を惜しみなく行使できちゃうんだから!その点は任せてよね!バッチリサポートするから!」

そうだよね、団長っと念を押すように視線を向けると自分の名前が出されると思っていなかったのか一瞬だけ肩がピクっと小さく跳ね、薄眼でこっちを見て直ぐに視線を逸らされた。

お疲れのご様子でー、もう、疲れてるのなら休んでたらいいのに。

「そう!無限の魔力と繋がっていないからって力が無いわけじゃない、戦場へ…最も前へ出てもお飾りじゃない!何もしないわけじゃない。策だけを伝えて皆を見送るなんてこともしない」

視線を閃光さんに向けると、申し訳なさそうな顔でこっちを見てる。

貴女にその席を譲ったことに関してはね、私は後悔してないからね?


戦力は多い方がいい。

それにね、先の訓練を見て私達の至った結論に関しては何一つ間違ってないって思えれた。

閃光さんがいるからこそ、得られた成果がある。

彼女が居たからこそ、皆がまだ見ぬ領域に進めたのだと思ってるよ?


私じゃ、きっと無理だったと思う。


心配しないでっと意志を込めて閃光さんに視線を送ると申し訳なさそうに頷かれる。


「戦場で魔力の受け渡し何て曲芸ができるのもこの街では、ううん、世界中探しても団長だけ。私と団長が長い間、ううん、何回も何代も…時を超えて共に研鑽を積んできた、私達だからこそ出来る芸当。それすらも私は無駄にしない!余すことなく私の持てる全てを使って皆をサポートするよ。そ・れ・に!私の席を奪ってしまったんじゃないかって、すこ~しでも感じちゃってるならさ、背中で語って欲しいかな?私以上の活躍を期待してるからね?」

「・・・!」

顔を上げて熱のこもった瞳を、視線を此方の目を真っすぐと射貫くほどに…ううん、細く鋭い剣先で貫かんといわんばかりに、熱い視線が返ってくる。

その熱い瞳を受け止め、彼女に向けて小さく頷くと、彼女もまたそれに応えるように小さく頷いてくれる。

表情とか大きく崩れたりしないけれど心の熱量は凄そう。

クールに情熱的な人なんだね、閃光さんって。


彼女の熱を、ううん、皆の熱を背負って語る、語り続ける。

「っていうかさ、敵の本拠地の構造って本当に必要?調べる時間が欲しかったって?調べる時間がほしいからと言ってさ、獣が此方の言うとおりに悠長に待ってくれると思う?」

おもわねぇなぁっと女将が零すと全員が頷いて噛み締めている。

「そうだよね。思わないよね、あいつ等が此方の都合に合わせてくれるなんてね、優しい敵じゃない。これは殺し合い滅ぼしあいなんだから。後は、打って出ないってのも一つの策だよ?つまり、この街を戦場とする」

この一言で途轍もない殺気が突き刺さる。大丈夫ですって、絶対にそんな選択肢選ばせないからぁ。

もう怖いなぁ…私だってスピカを危険な目に合わせたくないんだから。

殺気に突き刺されても平然と動じることなく、言葉を続ける。

「聞くけどさ、この街で迎え撃つのが正解だと思う?攻めてくるのを永遠と緊張しながら待っていられると思う?ご存じの通り、報告上がってるよね?異形の人型は始祖様の壁を超えれるよ?それにドラゴンもね…」

「・・・」

全員が最後の一言によって小さく首を振って迎え撃つ方が敗北する可能性が高いのだと想像できてしまっている。

「そもそも私達が…待てるって状態じゃない、ベストな状態で戦うべき、敵が私達が最も疲弊して力を出せない状況になるのを待ってる可能性だって高いし、敵からすれば捨ててもいい駒なんて山ほど用意できる可能性だってあるんだからね?」

余り言いたくないけれど、現状はしっかりと言葉にしないと伝わらないからね。声に出したくないけどね!

っま、私達が待てないっていうのも、結果論になっちゃうっていうか、そういうのを施してから籠城戦について言うべきじゃないんだけどね。


そう、私達には時間が無いんだもん。

ううん…正確には私が一番危ういか…


私の時計がもう何時止まってもおかしくないから。


正直に言えば、最も望ましいのって、誰も改造もせずに私抜きで皆が、この絶望を乗り越えれること何だけど、それが出来るなんてね、微塵も思えれない。

私が居なかったらどう考えても全員が死ぬ未来しか見えない…


唯一可能性があるとすれば…そうだね、彼の存在だけが頼りになっちゃうかな?

スピカとお母さんだけを他の大陸に逃がして、何処かで息を潜めて生き延びてもらい、何十年後に成長したスピカによって敵を殲滅してもらう。

っていうね、どうしようもない絶望的な方法でしか敵に勝つことが出来ないんだよなぁ…


先の問いかけによって、私の死を体験してきた人達だからこそ、ノンビリとしていたらどうしようもなく蹂躙されて終わるのだと薄っすらと徐々に実感がわいてきているって感じかな?


何故そう感じのたかだって?

だってさ、私を見て決意滾っていた瞳が曇った瞳へと変わってしまった、でも私は言葉を止めない。

「敵はね、巧妙だよ?知恵がある。策略を講じる術がある。あいつらはね、どうやってか何て、方法は知らないよ?敵の全てを知ってるわけじゃないんだもん、どうやってるのかわからないけれど、私達を見ている、聞いている…観察している」

昔だったらそんなの有り得ないって笑い声に包まれるんだろうけれど、誰も笑うことなく真剣な瞳で此方を見続けている。

「今もね、たぶんだけど、ある程度は敵に此方の情報は伝わってるとおもうべき、なんだよね…ベテランさんがさ大穴の構造を知りたいようにね、敵だって私達の情報を知りたいんだよ?」

そんなまさかっという顔をしているのは一部の人達だけ、他な真剣に耳を傾けてくれている。

「戦いってね。私はこう思ってる。情報こそ全てだって…うん、そうだって言いきれちゃう。敵の数、敵の攻撃手段、敵の部隊がどう行動するのか、全部把握していたら、そんなの、誰だって勝てるいーじーげーむってわけ…そう思わない?」

この言葉にずっとドラゴンの話題を出してから視線を背けていたNo2がこっちを見てくる。


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