Cadenza 想いを背負って空気に熱を 1
こんなにも切羽詰まった状況だというのに、目の前に広がる美しき世界はまるで平和な座談会?ううん、違うお弁当片手に気心知れた人達との穏やかなピクニック…あんま変わんないか。てひひ。
私達のリミットが近い何て感じさせないほどに緩い雰囲気の食事会。
それもほんの僅かな時間だった…
だって、騒ぎを聞きつけてきた古株の戦士達が押し寄せてきちゃっただもん、君たちの仕事はー?王都騎士団に押し付けてない?ったく、嫌味を直接ぶつけられるの私なんだけど?まぁいいか、今夜は流石のアレも気を使って遊びに来ないでしょ。
戦士達は、集まってきた古株の人達と話し合いながら、最後の訓練
許せる限り、限界ギリギリの時間まで魔力の使い方を研究し続けた。
全ての訓練を終わりを告げないといけない頃合い、確認の為に各々を呼び最後の研鑽結果を報告してもらった。
感嘆な結果に驚いてばかりだった。
だって彼らは私が用意した魔力を飛ばす、偉大なりし戦士長が死を覚悟して放ったあの一撃、それを再現出来ればよいと思っていたのに…彼らは更にその先へと歩もうとし、何か言葉にできない新たな感覚を掴みつつあると、報告してもらった。
私としてはね、彼らが披露してくれた内容だけでも十二分に期待できるって思ってたんだけど彼らの飽くなき向上心に感服する思い。
っま、彼らだけじゃないよ?私だって…彼らなりの言葉で感覚による魔力の扱い方を感覚で説明してくれたからこそ得られた部分もある。
…私もまたそ魔力に対して新たな扉を開けそうな気がする。時間があればこの部分を徹底的に研究したいけれど、そうはいかないよね。
そう、彼らも私も…まだまだ、成長する余地が残されていたってこと。
ぶっちゃけ私としてはこれ以上はない、もう限界だって…思っていたんだけど、技術に限界なんてないのかもしれない、ううん、技術に終わりなんて無い、だって、私の技術なんて始祖様が残してくれた地球の知識を再現しようとしてるだけだもん、その先へと私は踏み込めてなんて無い。
今はもう見ることも知ることも出来ない加護の中に残された地球の知識、ううん、違う星々の技術。
そこに私は到達なんて出来てはいない、再現も完璧じゃない…
そうだよ、私達はまだまだ発展途中、更にその上があるんじゃん…
もう一度、あの頃のように上を目指そうと心が前を向こうとしてくれる。
…嫌な現実を見ないように目を背けてしまう。
私はともかく、皆も未来を見つめて動いてくれるのが凄く嬉しい。
それもこれも、きっと彼らを導いてきた指導者が立派なんだろうなぁ…
たゆまぬ努力を続けるために必要な心の強さを育ててくれた戦士長のおかげってことだね。
戦士長かぁ~…ちらっと彼が指導するときに愛用していた椅子を見てみる。
不思議と会ったことが無い筈なのに、彼の面影が想像できてしまう。
もしかしたら、終わりを迎えた私の誰かがあっているのかもね。泥が目を開かないから、私の記憶と今代の記憶以外が朧気になりつつあるんだよなぁ…
戦士長かー
彼の事を思い浮かべると真っ先に脳裏に浮かび上がってくる人物
No2こと、お母さんと叔母様。
申し訳ないんだけど団長のお母さんは思い浮かんでこないんだよなぁ、関りは…そっか、今代の私はそこそこあるんだね、私は殆ど無かったから。
そう、団長のお父さんは、お母さんの愛する人。
そして、私の妹みたいな団長のお父さん。
ってことはさ?家族みたいなもんだから、戦士長の事を私もお父さんって呼んだ方がいいのかな?
って、今代の私は、そう思ったこともあるみたい、私も、彼の事をお父さんって呼んだ方がいいって思うんだけど、何でだろう、何かね引っかかるんだよなぁ…
なんかね、彼に会うのが、その、少し…すこ~っし!だけ、抵抗があるんだよね?
何でだろう?面識何て無い筈、なんだけどね…私は。
彼が愛用していた椅子に視線を向けると何も感じない、何も見えない。
でも…あの椅子を見つめていると自然と胸が熱くなる。
どうしてかな、彼の魂が震えている様な気がする。
きっと、この平和な光景を眺めているんだろうね。
誰も居るはずのない椅子に向けて声を飛ばす…音に出さない声を。
私も、もし、そっちにいったら、その、お父さんって呼んだほうが、いいのかな?
でもなぁ、一応さ?実の父親が生きているから、その、実の親に対してそんな親不孝なことを考えてしまっていいのかってことだよね?
こんなことを考えてしまう辺り、私ってのは実の親を何だと思ってんだってーのって叱られちゃうよね?
椅子からは何も伝わってこない
…でも、話を聞く限り、戦士長って理想のお父さんって感じがするんだよなぁ~。
誰も座っていない椅子を眺め続けていると何故か、許しを得たような気がした。
許しを得たのなら、もし、会うことがあれば…お父さんって呼ぶね、にへへ。
それじゃ、お父さん、行ってくるね。
椅子に手を振ると、困った顔、でも、笑顔で手を振ってくれた…そんな気がした。
最後に、椅子へと軽く会釈をして戦士達がいる方へと車椅子の向きを変え戦士達に号令を出す
「後、10分で会議を開始するから!」
各々の戦士達が手を上げたりして言葉に出すことなく了承したと合図を送ってくれる。
彼らの合図を見てから顎を上げ天をみる。
月の傾きから見てもほんっと、時間が限界ギリギリ。
体力に余裕があるのなら向こうが何かする前に、アクションを起こす前に行動を起こすのがいいのかもしれないけれど…
今はダメ。夜に作戦を開始するのは好ましくないから、決戦は明日の朝かな?
最後の夜くらい…僅かな猶予くれるよね?許してくれるよね?先生…
天を眺め薄っすらと見える星々が瞬きどうにかしてみせるっと囁いてくれたような気がした。
空を眺め続けること10分、戦士達が会議室へ行こうぜっと声を掛けてくれる。
時間通り宣言した10分をもって最後の鍛錬を終了した。
空から大地へと視線を向けなおすと、各々が汗をタオルで拭きながらある場所へと足を揃えて向かって歩いていくのが見える。
当然、私も彼らと共に歩み出す、私が何か言う前に車椅子が動き出す。
彼らの隣へとメイドちゃんが車椅子を押してくれる。
最後の作戦会議を開始するためにこの街の主要メンバー全員で会議室へと肩を並べ歩く。
若い人もいれば、歳を重ねた人もいる、
産まれた場所も、時間も、世代も違えど
私達が歩むこの場所こそ
人類の存続を勝ち取る為の最前線
人類の希望、それが私達…
私達こそ人類存続するための精鋭達、最も前に出る物達、そう、言わんばかりに全員が胸を張り前を向き一歩ずつ力を込めて大地を踏みしめる。
人類の明日を背負い私達は進む。
何時もの会議室。全員が入った後に私も仲へと入っていくと各々が普段から愛用しているのか同じ場所に座る。誰が決めたのかわからないが当たり前のように自分の居場所に座ってくれる。
当然私の場所も決まっている、此方を見ている戦士達の前へと運ばれる。
椅子に座る彼らの瞳からは何一つ影が無い、曇り一つない。
作戦を告げる私に覚悟を決めた戦士達の視線が集まってくる。
彼から伝わってくる熱き想いを束ね受け止める。
それが指揮官だからね、こういうのは慣れてる、私も愛する旦那様もね。
さぁ…彼らに最後の作戦を伝えよう…
口を開き作戦の概要と流れを矢継ぎ早に説明していく。
説明している間は何度も何度も喉が渇ききってしまいそうなほどに熱を感じた。
何時もよりも熱く溶けてしまいそうな熱すぎる視線を背負い説明を続けていく。
この会議室はね当然、対策は施してある。
外に音が漏れないように対策用魔道具は私が会議室に入った時から起動させてある。
っま、今となってはどうでもいいのかもしれない。
仮にさ、敵に情報が伝わっているっと想定しても、お互い、そんなのはもうどうでもいいって譲許だろうね。
彼らが何を用意して私達を迎え討とうとしているのか私も知らないんだから…
大掛かりな兵器を用意してるわけでもないし、敵の事だから人が魔力を得ただけだろって今まで通り舐めてくれると重畳かな?
作戦を伝えながらも、自分の作戦が行き当たりばったりだなぁっと、運が良くないとどうしようもない作戦だなぁっと感じているけれども、これしかないのだと作戦を伝えていく。
喉が擦り切れる前に、戦士達に最終目標や作戦の大まかな概要を伝え終わった。
直ぐにメイドちゃんが飲み物を渡してくれるので口に含みながら部屋にいる戦士達の様子を伺ってみる。
部屋中を一瞥する様に視線を動かすと、予想通りの反応。
伝えたのはいいんだけどさ、やっぱりっていうか予想通りだね、皆、この作戦に対して素直に受け止めてくれやしない。
本当にこれでいいのかって各々が疑問を抱いてる。
多くの人達が作戦内容に対して多くの疑問を持つかのように腕を組んだり、顎を触ったり、首を傾げたり、明後日の方向を見ていたりと…伝えた作戦で本当に大丈夫なのかと考え込んでいる。
私の時と違って、今代の皆は考える力を持っているってことだね。
だとしたら、この内容で素直に頷いてくれる、そんな人たちではない、ってことだね。
私の時代と違って彼らは自我が強いっていうか、私の時は有無を言わさない圧を出し過ぎたのかも?
っま、私の時は、ほんっっっと、心が燃え続けていたからなぁ…
さて、このまま強引に開始!なんて言わない、こうなると予想はしていた、だから、時間ギリギリだなって思ってたんだよね。作戦を話し合う時間ってのは必要だからね。
蟠りがある状態で作戦に望むのは良くないからね!各々が説明を聞いて感じた不安要素をディスカッションしていこうかな!…してくれると嬉しいんだけどね。




