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最前線  作者: TF
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Cadenza 花車 ⑮

周囲に飛び散った木片を見て、思考が一気に加速する。

ベテランさんの真なる才能は器用貧乏っというよりも、オールラウンダー、ありとあらゆる武具を扱いきれる、戦士の枠組みの中で前衛中衛後衛、全てを担当することができる。

だけど、本当の意味は戦士や騎士という枠組みではなかったのかもしれない、例えるなら、魔剣士、そう、術式を使いながら戦う方法が実は最も才があったのではないかと言う新たな可能性を見出してしまった。

恐らく、ティーチャーくんも同じ素質をあるはず、ティーチャーくんは同じような系統である彼から教えを何年も受けていた、本能的に最も自分に適している師匠だと気が付いていたのかもしれない。

新たな考察はひとまず置いといて

「あー…木刀じゃ耐え切れないのか」

「な、ななな、なんであるかぁ!?」「ど、どうなった?どうやった!?」

振り下ろされた木刀は衝撃に耐えられず、木片を周囲にばら撒くように持ち手以降が砕け散っていた。

そして目標となっていた丸太は切れるっと言うよりも小さな裂けめが出来ている、まるで丸太を槍で突いたみたいな、小さな亀裂が出来ている。


流石は、私の魔道具って言うべきかなのか、ベテランさんが稀有な才能を秘めていたのか…

そうだよね、そっちの可能性もあるよね、だって、彼は直ぐに木刀に変化が起きたことに気が付いていた。

でもなー彼の性格を考えるとさ素直にベテランさんを褒めるべきか、悩むところだよね、下手に褒めるとすーぐ調子に乗るからなぁ~、っま、それはさておいて。

何をしたのか教えてあげないとね。


「今のがね、戦士長が放った奇跡の一撃…死の一撃を模倣した魔力の刃だよ」


自分が放った技が想像していなかったのか、この説明に二人がシンクロし目を開いて大きく口を開き

「「な、なんだってー!?」」

驚きの声が修練場に響き渡る…静かにして欲しいけど、もう、どうでもいいや。

敵の事やアレの事を考えたってもう手遅れなほどに周囲に広まっているだろうねっと呆れていると戦士の部、デリカシーの欠片も無い二人が慌てふためきながら直ぐに駆け寄ってくる、って!

「いいいいい、いまのが!?おれ、し、しぬのか!?」「あ、あんな簡単にできるものなのか!?お、俺にも伝授してくれ!!」

近づきすぎ!!こっちは直ぐに下がれないんだって!ちょ、こら!暑苦しい顔が真正面に…!

って!唾を飛ばすな!汚いなぁ!!!

手を伸ばして何とか押し出そうとするが私の力じゃ重たくて無理ぃ!!

「ちょっと離れて!セクハラ!セクハラだよ!!!奥様達に言うよ!?」

最後の一言が聞いたのか二人が同時に少しだけ離れてくれる…

もう少し離れろよっと、しっしっと手首を返すと通じたのか少しだけ離れてくれる。


ったく!この二人は私の事を女性だと思ってないでしょ!!

エチケットがなってない!!私の事、子供か何かだと思ってるでしょ!!


悪友二人がお互いを見て、小さく頷いた後、一人は背筋を伸ばし、一人は明後日の方向を見て

「すまぬのである、つい」「貴族として恥ずべき行為をしてしまったな」

一人は申し訳なさそうに少しだけ頭を下げ、一人は小さな咳払いをして遠回しに謝罪の言葉を述べてくれる。その気持ちを汲んで今回は許してあげる!けど!

きちんとした謝罪を言わなかった方を睨みつけると視線を合わせる気が無い、合わせたが最後、何を言われるかわかったもんじゃないと逃げの姿勢!

これだから貴族は!真っすぐに謝罪できない!


彼の態度に一瞬だけ頬を膨らませてしまい、そういった行動が彼らを私の事を子供扱いしてしまうのだろうっと自身の不断の行いを反省し、ぽふっと頬から空気を抜いて肘掛けに乗せている腕に力を込めて背筋を伸ばす。

「うん、まず、ベテランさんからの質問に答えましょう」

頼むのであるっと小さな声と共に小さく頭を下げてくれる、ベテランさんは意外とね、こういう殊勝な心掛けが出来る、そう言うところが色んな人からもセクハラしようが許されている部分だよね。

「死ぬことはないよ、死の一撃で死ぬのは己の魔力を限界以上に必要とする術を発動させた代償によって死ぬ。今回のはさ、己の魔力を消費していないから、大丈夫、魔石さえ交換すれば何度だって扱えれるよ」

思い出したのか照れた顔で

「ぁ、そうであったそうであったな!姫様の言葉に血の気が引いたのである!」

忘れるなよ…っていうか、私からも説明したし、きっと団長からも説明されてるよね?

これだからベテランさんはー直ぐ説明したこと忘れるよね?

お金の事とベテランさんが興味があることに関しては忘れないのになー!

馬鹿そうな顔から真剣そうな表情に切り替わると

「この満ちるような感覚…今まで感じたことがない感覚である、全身が軽く何かに満たされている感覚、若い頃ですら感じたことのない感覚である。これが魔力が全身に満ちるっと言う事であるな」

真剣な表情で握っている砕けて切っ先が無い木刀の持ち手を眺めて、何度も頷いている。

「はい、ベテランさんの質問の次はこっち!これはね、何も対策しないで君たちが放つとたぶんだけど、その後、魔力が空っぽになりかねないんだよね、セーフティーをつけていないから己が込めた分だけ魔力を消費するからね?だから、想定以上に魔力を込めてしまうと魔力を使った分、己の肉体を強化するための魔力が無くなってしまい、身体強化が出来なくなるからね?」

此方もまた真剣な表情で頷いてはいるけれど、たぶん、実体験する迄は納得しないだろうね。

遠回しにやめとけって言ってるんだけど、闘志が瞳にやどってんだよなぁ…

しゃあねぇ、やらしてあげるか。彼一人、魔力欠乏になったとしても、今、医療班は落ち着いているから魔力をぶち込んでくれ…ないかもなぁ、セクハラされるの嫌がって、まぁ、魔力回復促進剤はなら在庫あるし地獄を見てもらえばいいか。

「…まぁ、覚えておいてもいいの、かも?」

まぁ、その、さ?

何処かで役に立つ場面があるかもしれないよね?

ここぞという時に感覚さえ覚えておけば、自力で発動できる、かも?

したら、死んでしまいそうだから感覚を掴んで欲しくない部分もあれば、死なない程度の感覚を掴めれるかもしれないっていう淡い期待もある。

やんわりと使用許可をだすと

「なら!是非に!俺にも!伝授してくれ姫様!」

頭を下げるのが嫌いな君にさ、がばっと頭を下げられちゃ~、ね?

でもなぁ、もう一転気になることがあるんだけど?持ち場は慣れてきてるよね?君の恰好を見てる限り?そうだよね?

まずは、その点を確認しないとね!

「持ち場に戻らなくてもいいの?」

がっつりと外用の鎧を着てるんだよなぁ…

魔力を過度に消費したらその日は持ち場に戻れなくなるよ?

君が持ち場を離れても大丈夫なの?

「先も行ったが俺のような木端、居なくても良かろう」

っけ!っと悪態をつく様に地面を爪先で蹴らないの~、子供じゃあるまいし。

「それよりも!」

また!顔を近づけてこないで!わかったから!

「木箱の中にベテランさんが持っている魔道具が入ってるから!」

木箱を指さすと木箱に駆け寄り木箱に手を突っ込むことなく此方を見てくる。

「先のを見る限り木刀じゃ耐えられない、さっきみたいに木刀に装着したらどんどん壊しちゃうからね、無駄に消費するってのは良くないから、んー…適当な鉄製の剣、練習用の鉄剣でいいかな?刃を潰してあるやつ、その持ち手に装着してみて」

指示を出しても此方を見続けている、はいはい、許可が欲しいんだね!

「木箱の中にある魔道具持って行っていいから」

許可を出すと直ぐに木箱に手を突っ込み魔道具を取り出して、練習用の鉄剣につけろって言ったのに、反射的に腰に身に着けている愛刀の持ち手に触れるが装着するのを躊躇ってからこれでも良いのかと判断を委ねるように此方を見てくる。

判断を委ねるな!言われたとおりに取りに行けよ!横着すな!

「鉄の剣だとしても耐えられる保証なんてないからね?実験してないんだもん壊れると嫌でしょ?だから、適当な!壊れても!誰も!文句を言わない剣を使ってね!」

横着せずに取りに行けよこのやろーっという意志を込めて語尾を強めにすると、幾ばくかの間によって投げかけられた言葉の意味を理解したのか、己の愚行な振舞いに少々お叱りの言葉を受けてしまったのだと理解したのか、照れ隠しなのかわかんないけど、口角を少しだけ挙げて小さく頷き歩き出す。


向かっている方向は~…

彼の進行方向に何があるのか視線を向けてみると納得する。

樽の中に剣が放り込まれている場所?

あーそっか、あれが練習用の刃を潰してある鉄剣か。


それを取りに鎧を鳴らしながらも偉そうに腕を組んで向かっている。

その後ろを追いかけるようにベテランさんも取りに歩いている。


二人仲良く練習用の鉄剣を取りに行ってる間に、確認するために少しだけ前かがみになって木箱の中を覗き込む。


ベテランさんが装着した魔力を放出するための補助魔道具の数は…うん、此方も人数分しか用意されていない。

あの二人が持って行った二つと、箱には三つ、ってことはさ、これも貴重品ってことになるのかな?量産出来なかったのかもしれない。

─ いえ、量産することは可能。時間もあった、構造的に量産が難しいモノではない

即座に否定される。疑問に答えてくれるのなら投げかけようかと思ったが

なら、どうして数を用意しなかったの?って言うまでも無いか。

直ぐに自身でその答えに辿り着いてしまう。


扱いきれる人がいないからっという答えに。


これを全部隊に配備するというのがどういう結果になるのか…想像しなくてもわかりきっている。

戦士達が自身の中にある全ての魔力を魔道具に注がれ眼前の敵に向けて放出して敵を倒せたとしても…


この一撃を放ってしまったがゆえに彼らは…終わる。



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