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最前線  作者: TF
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Cadenza 花車 ⑦

彼女の奇跡は再現できなくても、っま、戦士として必要な…

魔力に質量を付与して飛ばすっということに関しては再現できる。


─ 問題なく、その為の補助魔道具も製造済み


ふふ、今代の私は裏でしっかりと準備をしすぎだよ。

他にもあるんでしょ?


─ もちろん。あの魔道具は団長に持ってもらうよ


そう、私の相棒、光は…団長が一番相応しい。

そして、私に最も相応しいモノは


─ もちろん。用意してある


後はある程度、ぶっつけ本番

各々が体内に無限の魔力を宿したときにどの様に力を使うのか。

理解してくれれば良し、理解できそうも無ければ、偉大なりし戦士長の技を模倣してもらう。


「それで、姫ちゃん、時間は無いのでしょう?」

「うん、悠長に言ってらんないかな、敵はもうすでに動き始めているから」

「なら、直ぐにでも始めましょう」

うん、その方がいい、良いんだけど…


どうしても、この一点だけが不安になってしまって踏ん切りがつかない。


私に無限の魔力が無いってのがやっぱり不安かなぁ…

私という砲台が無いのってさ、何度考えてみてもマイナスな気がする。


うーん、大きな戦力ダウンな気がするけど…

しょうがないっで片付けてもいいのかな?魔石から吸い出した魔力を即座に団長を通して私に魔力を渡せれるのかな?

出来れば今すぐにでも魔石と繋がって泥の中にいる私達や、愛する旦那を起して全力で話し合いをしたいんだけど、それが出来ないのが怖いってのもあるんだけど…


魔力を欲しているのは、この先に待ち受けている不安を話し合って確かめたいだけなのかもしれない。


どうしてだろうか?どうしてここまで、不安を感じてしまうのだろうか?

私の中にいる私達だけじゃなく、何か、何かがおかしいような気がする。

小さな違和感…気づいていない何か、見落としがあるんじゃないかって言う不安がずっとある。


私は、何を見逃している?

何が通り過ぎた?

先生は何か、私に合図を送った?


何に私は、気が付いていない?


思い出す為に一瞬だけ瞳を閉じると


不敵な笑みが此方を見つめている。

今も見ているの?聞いているの?ワーム対策は万全だよ?

土へ音という信号は流れて行かないように建物に対策を施しているよ?


他にも私達を監視する術があるっていうの?


…今更、敵が私が知らない技術で此方を監視しているのなんて考えるだけ無駄。

向こうが対策しきれないほどの速さで事を起し終わらせればいい、まさにほーりーばーすとの如き光の速さで…敵の本陣へ突き抜ければいい。


そう私達がほーりーばーすとになる、光となって野を駆け、皆を導く太陽や月…光の道となる。

白き黄金の太陽が世界に示したように私達が希望の光となって全ての元凶である敵が待ち受けるあの大穴がある奥地へ飛んでいく!


その為の道具は全て揃っている。

揃えてくれている、今代の私が用意した魔道具、その全てを使い切る。

…残しちゃったらそれが火種になりかねない危険な代物ばっかりだからね。きひひ。


思考を巡らせていると

「…ってところかしらね、手配を急がせるわね」

「はい!私は先に部屋の準備に取り掛かります、姫様、培養ユニットの場所って、姫様の部屋?」

少々物思いにふけっている間に話が進んでいた、いけないいけない、指示を出さないと。

「えっと、私の隠し部屋わかる?」

「わかるよ、そこの何処にある?」

えっと─ 棚の中にある、一番下

「棚の中にある、一番下、団長だったらすぐにわかると思うよ」

「うん!」

覚悟の決まった瞳で頷かれるとドアが開かれる音が聞こえ

音の方へ視線を向けるとNo2が部屋の外へと駆け足で出ていった。


その後ろ姿を見て、もう、ここからは止まることが許されないのだと突きつけられているような気がした。

出来る事なら、もう少しだけ、ほんのもう少しだけ、この暖かい陽だまりのような日々…まるで一歩も進めない進みたくなくなるような泥濘に浸かっていたかったな

溢れ出そうになる水を拭い。

「私も外に出る、多くの人達と話をしてくる」

「わかった!それじゃ一緒に降りよう」

ベッドで寝ている私をテキパキと手慣れた手つきでシーツをごと背負い、シーツの端を綺麗にたたんでひも状にして抱っこ紐の要領で私を背負ってくれる。


トントントンっと軽快な足取りで階段を下りていく。


一階に降りて直ぐに階段の近くに用意されている車椅子を取り出して座らせてもらう。

そのまま車椅子を押され病棟の外へと運ばれる。

「何処までいく?」

何処か寄るところがあるのならってことだろうけれど、寄る場所なんて無い、私が待つべき場所はただ一つ

「…戦士達の修練所が適切かな?施した後にそこに来るように伝えて」

彼らに力の使い方を教える、それが…無限の魔力を熱かったことがある唯一の人物である私がすべきこと

「わかった…まかせてって言うべき?」

「ふふ、言っても良いんじゃない?」

「それじゃ、まかせて」

軽快な足取りで外を駆ける、車椅子を押しているんだから丁寧にって言いたいけれど、時間が無いので我慢する。

病棟から左程離れていない戦士達の修練所に到着すると「それじゃ、準備してくる」一瞬だけ顔を覗かせてから私の部屋へ向かって駆けていく…足音がどんどん遠のいていき聞こえなくなる。


足音が聞こえなくなってから、今いる場所をゆっくりと首を動かして見回していく。


戦士の修練所には誰も居ない、まぁ当然っちゃ当然だよね、訓練何てしてる場合じゃないもん。

静かな修練所の中にただ一つだけ、存在感を放つモノがいる


誰も居ない修練所に一つだけ置かれている古い椅子


その近くまで車椅子の車輪を手で動かしてなんとか手が届く距離に移動し、そっと椅子に触れる


そこには誰も座っていない筈なのに、誰かが居るような気がする。


…貴方の愛弟子たちの命、使わせてもらいます。

どうか、最後まで見守っててください。


祈りを捧げると不思議と肩を叩かれたような気がした。



「姫様!」

可愛らしい声によって瞳を開き声のする方へと視線を向ける、うん、今日も可憐な華。

あの笑顔こそ、メイドちゃんって感じだよね。

「メイドちゃん、来て早々だけど、私の部屋にいって団長の手伝いをして欲しい。団長が色んな品物を運ぶために作業しているからさ、結構な量なうえに、各地に運ばないといけないから人数が必要なんだよね、だから、適当に誰か見繕って品物を運ぶのを手伝ってもらって」

適切な指示を飛ばすと、此方に近づく足をとめ

「はい!承りました」

体を捻る反動でスカートが花びらのように舞い、足元から小さな土煙を出して綺麗なターンと共に向きを変え、私の部屋がある方へと駆けていく

つい、その後ろ姿が見えなくなるまで見送ってしまう。

メイドちゃんの後姿が小さくなっていき見えなくなると、自然と空へと視線を向けてしまう。


天は今年も晴れ

雨は降るけれど、頻繁に降るわけじゃない

なのに、昔は…この大地は雪に覆われていたらしい


そして、今また、その雪の時代に戻ろうとしている

だとしたら、雨が降ってもおかしくはない願わくば降らないことを祈るばかり。

天気も作戦に大きな影響がある


どうか、どうか…天だけでも私達の味方をしていただけることを望んでおります。

小さく天に向かって祈りを捧げる


ここからは神頼み。

ありとあらゆる幸運が起きないと私達は勝てない。

些細な不運で全てが台無しになる、その些細な不運を軽々と上回らることが出来るほどの幸運が必要。

そういった運の偏り、そういった要因が無いと勝ちの目なんて圧倒的に低い


それ程までに私達と敵との間に大きな戦力差がある。

数も個も、全てに置いて負けている。


…たとえ、私が人を捨てたとしても、勝てる保証はない。


そう、全員の改造が終わったら

私にも、小さな小さな…改造術を施してもらわないとね。

これは団長にもNo2にも伝えていない、全部終わってからこっそりとやる。

だって…絶対に団長もNo2も頷いてくれないから、最悪、独りでもやる。


最悪、私一人でも出来るくらい簡単な改造だから良いんだけどね。

だって、小さな切り札を私の体に埋め込むだけだもん。


それを使って私は最悪を最良へと転じてやる…

普通に倒すことが出来れば良し、それが叶わない、純粋に勝てない、もしくは…特殊な状況になったときに備えての切り札。


きっと、私なら…ううん、私と愛する旦那二人と、子供達が私を導いてくれる。


「あの」

天へと祈りを捧げていると少し離れた方から声を掛けられてしまう

「なに?」

声の主に向けて声を出すと

「お近くに」

集中しているのを邪魔しちゃ悪いって思ってるのかな?

なら、声をかけんなって、突っぱねるのが偉いさんだろうけれど私は違う。

「いいよ、おいで」

「っは!」

敬礼でもしてそうな声と共に鎧が擦れる音を響かせながら近くにくる

天から視線を大地へと戻すと

「膝をつくなっての、立ってていいからね何なら、座っててもいいよ?」

片膝をついて頭を垂れている一人の鎧騎士、私の為に用意された戦乙女部隊、その一人。

「では、遠慮なく。もうお体は良いのですか?」

ゆっくりと立ち上がり兜を外して精悍な顔つきを見せてくれる。

勇ましく戦場に立つ表情ではなく、此方を安心させるように笑顔を絶やすことがなかった。


良く知っている顔、なのに、残念なことに…

名前を…駄目だ思い出せない。


「うん、もう大丈夫だよ、それでどうしたの?何か戦場で困ったことでもあった?筆頭騎士様にセクハラでもされた?」

名前を呼べないことに小さな罪悪感を覚えつつもそれを悟られないように軽い話題を振る。

その話題に笑顔を絶やさまいと緊張していた頬の筋肉が緩み、緩やかな笑顔になる。


その笑顔には覚えがある、長年、私の傍で戦乙女部隊として共に戦い抜いてくれた女性だもん、名前を呼んであげたいけれど、ごめんね、思い出せない。


「いえ、其方に関しては何も問題ありません。此方に顔を出したのは、本当に偶々なんです、偶々、その、華が此方から駆けていくのを目撃してしまいまして、その、居るはずがないのだと思っていたのですが、その」

偶然メイドちゃんを見かけて、場所が場所だけに私が居るわけ何てって思っていたら居た、居たら祈りを捧げているだけって感じだとしたら、うん、私だったら声をかけちゃうね。

「祈りを捧げている私がいたからつい、声をかけちゃったってことだね?」

「はい、その通りです」

彼女が所属する部隊、戦乙女部隊。

幼き頃の私を支えてくれた親衛隊、その流れを受け継いでくれている。

ある理由で私の傍にいるのは女性の方が良いだろうっということで、親衛隊の皆にも納得してもらって親衛隊は解散してもらった。

その際に親衛隊の中にも女性の戦士や騎士が居た、その人達は継続して戦乙女部隊という名前に変えてからも所属してくれた。



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