Cadenza 花車 ⑥
ごもっともな意見に何も言えなくなってしまう、本来はその部分を使ってNo2を説得しようと考えていた理詰めの部分、逆に言われるとは思ってもいなかった。
まさかの感情でぶつかってきそうな人が理詰めでこられると思っていなかったから、思考が止まってしまい、どうしたらいいのかわからなくなってしまい、何も言えなくなる。
「あれにはかなりの魔力を消費するのをわかっているでしょう。陣を維持するための魔力波ある程度は魔石から行うけど、術者が自身を守る為の術式を維持するのは己の魔力が頼りになるのよ?」
はい、存じ上げております。そもそも、一番最初に私と魔石を繋いで無限の魔力を宿した状態で他の人達を私一人でも改造術を施せるようにっていうのが
─ はい、そのプランが初期案です
今代の私が得害が絵面でして
っというのを口に出したいが相手の目を見る事すら怖い…口なんて開けないよ。
ゆっくりと更に視線を下げ、ベッドの隅っこを見つめていると
「まったく!私が居ない所でそういう大事なことを決めないでもらえますか?だ・ん・ちょ・う?」
圧が団長の方へ向けられたので、視線を少し上げて団長の様子を見ると、団長もこの状況で怒る相手に視線を向ける勇気がないのか私と同じように逸らし続けている。
それでも、返事をしっかりと返そうと
「はい、その件については、後日改めて」
「改める時間なんてないのでしょう?ねぇ、ひ・め・さ・ま」
叔母様と等しい程の圧を感じ
「っぴ!?…はい、ない、です」
全身が縮こまってしまう…
均等に攻めてくる!こうなるとお母さんって怖いんだから!!
「それに!最後の方!貴女達!…わかってるの?」
最後のトーンから怒気が抜け一気に悲しそうな声へと変わっていく
恐る恐る視線を向けると怒っている表情ではなく、涙を、大粒の涙を流しながら拳を震わせ
「どう、して、そこに私の名前が無いのよ!!!」
全力の叫びが部屋の中を埋め尽くす…
その叫びに対しては反論しないといけない。
できるわけないじゃん、お母さんにはスピカを守るって言う使命があるんだから
…それだけじゃないけどね。
「私よりも!団長の方が!この街に必要でしょう!医療班として動く魔石としてあるべきなら私でもいい筈よ!!」
反論しようにも言葉が止まる様子が無い!
ダメだ!迂闊に挟み込んだらもっと感情が溢れ出て止められなくなる!!
感情のままで動かれると此方が圧倒的に不利!!こういう時は!
「お、叔母様!」
こういう時に冷静に抑え込んでくれる人物に助けを求めるが
「呼んでも無駄よ!!!あいつは今ぐっすりと寝てるわよ!!先ほどまで誰がこの部屋にいたのか忘れてないかしら?」
助けの綱は即座に切り落とされる。
っふぐぅ!頼みの綱が!!
叔母様は、お爺ちゃんと会いたくない、だから、それを…お母さんの癖に知恵が回るじゃん!!!
「No2!お、おちついて!」
「落ち着いてるわよ!!!」
諫めようとした団長に全力でぶつかってる時点でダメじゃん…落ち着いていない!
「私は!…わたしは、また、除け者になるのが嫌、なのよ…貴女達を死なせたくない、その想いは、誰よりも強い、それを、わかってるでしょう?」
「もちろんだよ、だから」「伝えにくかったことに関しては謝ります」
二人同時に頭を下げると
「二人で話し合った末であれば、口を挟む気はもうないわよ。悔しいけれど、体力面やいざという時の戦闘力に関しては団長には遠く及ばない事なんて重々承知してるわよ、作戦を確固たるものにするのであれば、貴女達の考え、判断、間違えていないわ、正しいわよ」
怒られるかと思ったら鼻声で淡々と自分の考えを語ってくれる。
冷静に合理的な考えを言われてしまっては、私達も何も言えない、口を挟むことが出来ない。
だって、私達もそう思っているから。肯定しか出来ない。
「それでも、一言、一言でいいから正面から相談してほしかった」
私達は彼女に辛い選択肢を選ばせないという親に辛い思いをさせたくないという恩によって選択肢を間違えたってことだよね。
できることなら、最初っからってことか、うん。相談するべきだったんだろうけど、色々な事が起こりすぎていて私自身も状況整理するだけで頭一杯だった…
なんて、言い訳だよね。
「ごめんなさいね、年甲斐も無く声を荒げてしまって、もう、嫌なのよ、私が何も出来ずに全てが進み終わろうとするのなんて、もう、託されたからといって傍観者になるつもりなんてないのよ」
彼女の言い分が最も過ぎて、反省する事ばかりだ。感情ってやつは厄介だよね。
何が冷酷で冷静な指揮官だってーの。
己の未熟さを何時だって痛感し何時だって成長しない私を見つめなおしながら前を向く。
「うん、そうだよね、この街に駆けつけてくれた時点でお母さんの気持ちを理解しておくべきだったよね。ごめんなさい、浅慮でした」
もう一度、頭を下げると優しく頭を撫でられる
「これからすること、私が出来る事、三人でもう一度話し合いましょう」
「うん…」
その優しさに甘えそうになる、でも、譲れない部分もある。
絶対に貴女の命だけは守って見せる。
絶対に貴女を前へ出さない危険な目に逢わせない。
彼女と歩んだ全てが私の心を強く強く、彼女を守るのだと決意を固めていく。
何処でどう、彼女の意見が変わるかもしれない、だとしても、この一線だけは絶対に超えさせない。
もう一度、話し合いを始める…
といっても、部屋の外で聞いていたみたいなので、順番やその後の流れの相談だけで話し合いは終わった。
「だいたい、こんな感じかな?」
「そうね、これがベストって形かしらね」
「うん、順番も問題ないと思う」
改造術を施す順番も決まり、その後に無限の魔力を得た彼らの力、その使い方などの調整をする流れも凡そ決まった。
彼らに渡す魔道具の細かい調整なども行わないといけないし、行き成り無限の魔力を得たところで扱うコツを教えてあげないといけないし、外部ユニットにつけられた魔石の交換方法とか、魔力を充填する為の一連の流れを彼らにも把握しておいてもらいたい。
ぶっつけ本番で出来るとは思っていないしね。
敵に手の内を晒すのは致し方ないが、敵がそれを見たところで瞬時に対策を練ることは出来ない筈、一連の流れを知られたとしても問題なし。
要である部分は、すでに使っているんだから…そう魔力を送信する方法を
なら、敵が警戒しているのは当たり前。
先生なら何かしらの策を考案しているはずだよね。
つっても、敵が考えそうなことは此方も考案済みってね!
その策に対してどうすればいいのか、凡その策は講じてある。
後は、それを戦士の中でも上位に与する人物達に概要を伝えるだけ、あとは彼らが防いでくれる。
問題あるとすれば…
ぶっつけ本番ってわけじゃないけれど、訓練する時間が僅かってのが問題かな~…
女将たちが無限の魔力と繋がって、どの様に魔力を扱いきれるのかってことだよね。
死の一撃は人によって発現する能力が違うっと考察されている本に書かれているのを読んだことがある。
私が知る限り、死の一撃を放った人物と、それがどの様な技だったのか、報告書と現地に赴くことによって凡そは理解できた。
偉大なりし戦士長は己の肉体を魔力へと昇華し、溢れるほどに得た魔力を極限にまで圧縮し敵に向けて飛ばした、魔力に質量を加え激しく勢いよく飛ばす、その圧力によって敵を圧殺した
報告書を読んだときは、魔力そのものを鋭く細かい粒子として飛ばし尚且つ、質量を付与してぶつけたってところかな?っと、推察していた、そう、実際に見ていないから推測の域を出なかったし、今も出ない、でも!
─ あの現場に辿り着き、あの衝撃が残った地面に岩を見て私は確信している、あれはある意味、散弾、一種のショットガン、それも指向性を徹底的に持たせて力が分散しないように力のベクトルを統一されている、ショットガンというよりも、レーザーポインターが近いのかもしれない、それを複数同時に放ち一定の方向へと収束する様に放たれている、絶対に逸れることなく目標に向かって突き進む。
ってことらしい、あの岩に残された残滓からよく読み取れたもんだよね。
他の文献だと、確か、術士が己の命と引き換えに独りの人間を消滅させ、残された現場には足元に焦げ付いた後だけが残ったっと言う記述が残されていたりもする。
っま、これに関しては眉唾物だけどねー
後は…最初の聖女様、白き黄金の太陽と共に大地を駆け、多くの人を癒し支えてきた人、彼女もまた、その領域に居た人。
彼女が起した奇跡
魔力を持って欠損した部位を復元する
そんなの、奇跡としか言いようがないよね。
どんな方程式でそんなのが発動するかなんて理解することも想像することもできない。
文献によると、聖女様は、かなりの数、多くの人を救ったらしい。
彼女は死の一撃と同じような途方もない魔力をどうにかして集めて奇跡を何度も実演してみせた。
そんなのありえないって思ったりもしていた。
何処かで教会が仕組んだショーじゃないのかって思ったりもした、だけど、実演した場所がショーとかそういう場所ではない。
故に、本当の奇跡としが言いようがない。
だって、戦場でもその奇跡を起こしたと書かれているし、目撃者も数多くいる。
その当時、助けられた人の声を纏められた本もあるし、ある貴族も祖先が聖女に助けられたと伝えられ聖女信仰を続けている人達もいる。
教会が仕組んだパフォーマンスだったらさ、信仰を集めるためだけに仕組んだショーだっていう意見もあるけど、するなら街中でするよね?どうして、そんな危険な場所でする必要があるんだってーの。
その結論に到達してから、聖女は何かしらの方法で奇跡を何度も起こして魅せた。
惜しむらくはその術に対してもっと具体的な内容が書かれていたらヒントになったんだろうけどね、今すぐにでも会得したいよ。
…どうして彼女の歌が残されていないのか不思議だけど、仮説は出来てる、私達ルの力に目覚めた少女たちが残した残滓は始祖様の加護を通して私に受け継がれている、つまるところ…
聖女様は始祖様と会っていない、加護の対象者じゃないから彼女の歌は加護に収納されていなかったんだろうね。




