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最前線  作者: TF
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Cadenza 花車 ④

「それじゃあの、孫ちゃん達」

別れを惜しむような雰囲気を出しつつ、顔を近づけてくるので挨拶として頬にキスをする

「・・・」

満足気な顔をした後に団長の方へ視線を向けると、はいはいっと小さな溜息をこぼしてから団長もお爺ちゃんの頬へキスをする

満足したのか溢れんばかりの笑顔で

「うむ!良い女に育ったもんじゃ!育ったというのに…幸せになるんじゃぞ、絶対に、死ぬんじゃないぞ」

溢れんばかりの笑顔を保ちながらも、何時どこで決壊するかわからない程に涙を溜め込んでから零れ落ちる前に急ぎ足で部屋を去って行った。


「・・・」「・・・」

彼の言葉を最後とするのであれば、気を利かせるべきなのだけれど、困ったことに私たち二人はこういう時にそういった言葉を言えない…

私達は彼が見てしまった不安を取り除くことが出来なかった。


気休めでも死なないって言えればよかったんだけど、それは約束を破ってしまうことになる、だから、言えない。


お互い、覚悟なんてものはとっくの昔に決まっている、例え死んだとしても…この世界を救うのだと、人類を守る。


彼の過ぎ去ったドアから視線を外し何も変わらない天井へと視線を向けると

「約束なんて出来ない」

「うん、そうだね」


お互いのわかりきっている言葉が何も変わらない天井へと吸い込まれていった。


天井を眺めているとつい、考えてしまう。

私達という存在はこの世界に何を残せたのか…


花が咲き誇った、されども、種を残すことなく散る。

そういう運命だとしても、咲いたことに変わりはない、咲いたことに意味がある。

私達という花を見てくれた人達がいる。

散るという過程…その先へ、未来へ行くのがどういうことなのか、きっと、考えてくれる。

苦しくても険しくても困難な道を花を思い出し一歩ずつ踏みしめて歩みぬいてくれると信じて。


嗚呼、だから、始祖様は私達、白き短命種に花の名を授けたがるのでしょうか?

種を残すことが出来なくても、明日を繋げと…


お互い、何かしら感情の整理がついたのか前へ進む為の

「さて、お爺ちゃんも帰ったし」

「会議、はじめる?…難攻不落のNo2を説得するための?」

会議を始めようって、思ったら思いの外、団長の察しが良い。

本当に貴女は団長かなぁ?なんつってね。

彼女の言い分もごもっとも、彼女の協力失くして先は無い、命を失うための術なんて協力してくれない、可能性がある。でも…

「お母さんに関してはね、勢いでどうにかする、あの人は感情で貫くのが一番、理詰めは無理」

「その通りだと思う、あの人って意固地になると絶対に首を縦に振ってくれると思えれない」

お互いの意見は一致している、関係性は違えどお互い彼女とは長い付き合いだもんね。

理詰めでゆっくりと語ると絶対に説明している段階で心と思考が冷静になって、感情が抑えきれなくなって命を大切にしろに思考が固まる。

そうなる前に、勢いで首を縦に振らせる。

これしか突破口が無い気がする…二人係ならいけ、る、よね?

不安を感じているが、それよりも、一発勝負、絶対に失敗できない事の方を話し合っておきたい。


「お母さん、医療班No2の説得に関しては二人同時に感情で攻め込もう、勢いで誤魔化す!その先の事を徹底的に話し合おう、私だけじゃ気が付かないこともある、改造術に関しての打ち合わせ、手順や流れの会議をしておきたい」

「あ、それ、私も聞いておきたかった、行き成り全部の準備が終えた状態でぶっつけ本番ってのは厳しい」

まったくもってその通り、失敗が許されるのならぶっつけ本番でもいいと思うよ?でも、今回は材料的にも時間的にも失敗が許される様な状況じゃない。

その為には念入りに説明をする必要がある。

話をするために上半身を起こそうと右腕を持ち上げ柵を握ろうと手のひらを彷徨わせていると

「よいしょっと」

腕を掴まれ慣れた手つきで上半身を起こしてもらい、そのまま背中に枕を詰め込まれ準備が整い次第、体を背もたれがある方へと滑るようにずらされ簡易的に用意された背もたれに案内され、息が乱れることなく

「姫様は軽い、ご飯食べれるのなら食べてほしい」

「食べれるならね」

生きる為には職が必要だとNo2から忘れることが出来ない程に何度も言われたことを言われてしまう。

正直に言えば、食べるって言う行為に不安を感じている。

食べて、しっかりと消化できるのかって部分が不安なんだよね。

下手に食べてこの状態でお腹を下したくないんだよなぁ…っていうか、トイレに行くのが嫌!一人で出来ないんだもん!

…精神的な部分もそうだけど、内臓全てが弱ってる気がするからなぁ。


それを悟られたくないので話を進めよう。


「はい、それじゃ人体改造術について、その中身についてお話していくね、分からないことがあれば都度質問してね、講義は何時だって止めてもいいから」

「珍しく止めていいんだ」

普段なら説明を全部聞いてから質問をしてって感じだけどさ、今回に関しては私も今代の記憶と対話しながらだからやや不安を感じているんだよね。

少しでも何かしらの気付きがあるのなら知りたい。

「止めていいよ、二人だけなんだから」

「わかった、始めてください」

大きく静かに頷き私が寝ているベッドの端に胡坐をかく様に座る。

向かい合わせで、口頭での人体改造術について説明を開始していく


大雑把に概要を説明していったけれど、何一つ質問が無くスムーズに概要の説明を終えた。

基本的なことに関しては何も問題ない、さすがは医療班団長っていうか、私の経験を体験したからこそある程度、察しがついているって感じ。


続いて、埋め込む魔道具の説明をしていく。


①外部ユニットから魔力を体内へと流す為に必要な経路を体内に設置する

今代の私の記憶によると

─ 外部ユニットと体内へと埋め込んである内臓ユニットを連結し外部ユニットにセットされている魔石から魔力を抽出し特定の術式を刻んだ濾過魔道具によって魔力を出来る限り他の干渉を受けないように施してから外部ユニットを通り内臓ユニットを通り魔力を体内へと送り込む。


まずは、初手としてこの魔力が流れる経路、生体ユニットを埋め込む。




用意されている全てのパーツ…私が使っていたタイプよりも数段改良されている

当然、失態してしまったあの過ちもしっかりと対策を講じてある。

もしもに備えて魔力を徹底的に純粋な、まるで天然の大気に漂うような魔力へと変換させている。

これによって余計な汚染や楔を打ち込まれていたとしても一度分解しているから、術式も分解されているっという考え。

これによって魔石から体内に魔力を取り込んだとしても敵の楔が魂に打ち込まれないようにしているので、もしもの出来事で起きた憂いはない。

っていうか、そもそも、魔力を集める為の術式も改良に改良されているから、問題はない。はず。


「ふんふん、内臓ユニットの大きさは?」

今代の私の記憶に呼びかけると応えてくれる

─ 人体に適合する生体ユニット、候補となる人物、その全ては既に培養してあり、其方を用いる、形状は血管と左程大きさは変わらない、形状も血管と類似している。

瞬時に頭の中にどの様な物質なのか本を開くかのように思い出させてくれる。

出来る事なら現物を見せながら説明したかったけれども言葉での説明だけだとしても、医療に関しては問題が無いみたい、困り顔をすることなく頷いてくれている。


「なるほど、栄養を通す為の管を通すって感じ、柔軟性もありそう、激しく動くうえで術前と術後で些細な影響がありそうだけど、どうだろうか?邪魔にはならなさそう?」

その疑問はごもっとも、私の時は今代のに比べて硬い素材で造ってた、当然、影響はある、硬い素材が体内に入っているんだもん、当然、影響があった。

地味にだけどね、関節のえっと…主に背中だね、体を捻る動作、可動域に僅かな制限が起きてしまったんだよね。

っま、その辺りに関しては不便だってのは感じなかったけれど、それは私の戦闘スタイルが術者だからであって、戦士からすればその小さな違和感で怪我を負いかねない。


─ 過去のデータから推察し、どんな動きにも対応できるように製造している

今代の私も当然、その点に着目して改良を施して柔らかく柔軟性のある素材、つまるところ、血管、それも自身の体から培養した血管、用意周到だよ。


「うん、この辺りはね、実はね、私も考えたんだよね。何度も何度も。色んな材料を使って研究してきて柔軟性のある物質が人体の動きに対して最適だってわかっていたけれど…自身をベースとして生体ユニットを作るって言うのは考えたことが無かった。私の時は、魔力を弾く物質、鉱石と言えど一定量の魔力を吸い込んでしまう性質がある、魔石という鉱物は魔力の吸収量が途轍もなく低い…その特性を生かして魔石を砕いて混ぜ込んだ特製の合金ってほどでもないか?特製の管を使って造ったけれど、今代の方が最も合理的だよね。魔力を流す管を培養して尚且つ改良を施しておけばいいのか」


─ 人工魔石。構造は至ってシンプルで魔力を吸収しない性質を持った鉱石、それを私達は魔石と呼んでいる。敵が体内に持つ魔石の構造をヒントにし、何度も改良を重ねてきたのが私達ご自慢の人口魔石。

過去に作成した魔石の構造として中にいくつもの空洞を作り、出口と入り口の穴も用意し、出口には予め蓋をしておき入り口から出口に向けて魔力を押し込む様に流し込む、出口の蓋は魔力をゆっくりと通す物質によって一定量の魔力が流れるような作りとなっている。


っそ、解説ありがとね。

空洞の中に出来る限り魔力を押し込んで保管するってのが魔石としての基本的構造。

必要な時に蓋を外すだけっていうシンプルな構造、言うなれば水筒みたいなもの、それが私達が作り出した人工魔石。

今代の私が作り出した魔石は更に構造を進化させて小型化に成功している。


「その方が理にかなってると私も思うよ、姫様はいつも何かしら研究していたからこんな研究をしていたなんて知らなかった。全てを自慢げに語ってくれたわけじゃないってことか、だからといって驚かないよ、姫様ならそれくらいやってのける、だよね?」

飄々と商人としての日々を過ごしているような雰囲気を出して取引先の貴族との商談をまとめる以外にも、色々と秘密裏にこの日の為に準備を進めてくれていたんだね。

今代の私は中々に食わせ物だね。

「もう少し真っすぐに褒めて欲しいかな?っで、話を続けるけど、その内臓ユニットに関しては主要メンバー分は用意してある、具体的に何処に埋め込み何処に繋げるのかってことだけど」

─ 繋げる先は肝臓です。理想は大動脈弓だが、傷つけるリスクが高い。骨に繋げるっという考えもあったが…骨から魔力を帯びた赤血球が精製される可能性が低い、っであれば、血液の中に直接魔力を流し込む。

外部ユニットと内臓ユニットを接続するのは背中が最も体の動きに対して邪魔をしない、肩甲骨の互いの肩甲棘を線で真っすぐに背骨へと引き、そこから胸椎を2個ほど下げた箇所辺りが好ましい


っと、解説ありがと。



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