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最前線  作者: TF
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Cadenza 戦士達 ⑮

二人の反応に小さくありがとうっと呟いて直ぐに覚悟を決めた戦士の顔つきとなり

「こうやって、君たちと顔を会せるのは、今回が最後となる、この術式はサクラの負担にも繋がるし、妹の体にも負担がかかる、だから、今生の別れではないが、我らの志は変わらない、人類の為に、今一度、力を貸してほしい」

力強く前を見据えゆっくりと腕が前へと伸ばされていく。

私を抱きしめていない方の腕、拳を力強く握りしめ真っすぐに伸ばすと

女将とティーチャーくんも同じように力強く拳を前へと突き出している。

私も同じように拳を握り締め伸ばしてみるが…届かない!

必死に伸ばそうとしても届かない仕草を見て女将が「だはは、もうちょっと前へ行くよ」豪快に笑い、ティーチャーくんの背中を叩いて二人が前へ出てくれる

二人の拳、ううん、三人の腕が私の為に肘を曲げて各々の距離を近づけてくれる

私も同じように拳を前に出し、4人全員の拳が重なると

「「「応!!」」」

戦士達の力強い声が発せられると同時に、私の視界が愛する旦那の隣から引きはがされていく。

『これ以上は、妹の魔力が不安だ、連日使い過ぎているし、何よりも』

気取られる、何かしているという気配が相手に伝わっちゃう、よね?

『うん、ここは獣達にとっても見やすい場所だからね』

死の大地はなだらかな登り坂、幾ら高い塔だといってもあいつ等の住処全てを診下ろせない、果ての方は塔と同じくらいの高さじゃないかな?


視界が真っ暗に染まる。

染まると同時に足の感覚が消え、肉の重みを感じる。


ゆっくりと瞼に力を籠め、光を受け止める様に目を開くと

目の前に居る二人から光が差し込んでる様な、彼らの後ろに太陽があるように輝いて見えてしまった。

「姫ちゃん…いや、司令官!あたいは戦士として輝くよ」

「はい、僕も同じ気持ちです」

力強い言葉に、後ろから布が引っ張られる様な感覚が伝わってくる。

私を包んでいる布を掴んでしまっている妹の手を握り締めてあげたいけれど、それはまた今度ね。


「それじゃ、私と、女将と、団長、この三人は改造手術を施すとして、ティーチャーくんはダメだよ?君は残ってこの街を最後まで守ってくれないと」

最終防衛ラインとして彼はという存在は大きい、この街の要として待機してもらいたい。

彼は攻めるよりも守ることの方が上手いからね。

前へ出るのが苦手なティーチャーくんならこの指令受け止めてくれるは、ずだと、思っていた。

「いえ、その命令はお受けできません。僕もそれを施して下さい」

迷うことなくはっきりと断ってくる。

指令への申し入れに驚いてしまう、今回に関しては前へ出るっということは意味合いが違うんだけど?

前へ出るという事=己の未来を閉ざすんだよ?

それがわかっていないはずじゃない、あの、ティーチャーくんが自分の意見を真っすぐに突き付けてくるなんて…ちょっと胸に来るね。彼の心は二度と前へ向かないと思っていたから。

「奥さんと子供はどうするの?ちゃんと話し合ってきた?」

「はい、会議室でお話されていたのを勝手ながら拝聴しておりました、その事についても妻に相談し、僕は決意を伝えました、妻は…僕の背中を押してくれました」

決意は固そうかぁ、まぁバックパックに余裕はないけれど誰にするかは完全に決まってないもんなぁ、このままでいくとすると


1私

2団長

3女将

4ベテランさん

5ティーチャーくん


って形にするべきかな?

…んーお爺ちゃんの年齢を考えると前へ出るよりも、防衛に尽力を尽くしてもらった方がいいのかも?

今のお爺ちゃんがどの程度動けるのか、私は把握できていないし、ティーチャーくんがどの程度動けるのかもわからない。

街の防衛を王都騎士団に任せるのだとしても、ティーチャーくんの素性を知らない若い騎士ばかりってわけでもないから、すんなりと指示は受け入れてくれると思う。

お爺ちゃんだとしても、その辺りは抜かりなく問題ないだろうし、陣頭指揮なんて何度も経験しているからその辺りを頼りにしてたりしている部分もある。

予定としては、お爺ちゃんを後方支援に備えてもらいつつ、全体を見回して私の補助に徹して貰いたかったんだけどなぁ。


んー…この辺りに関しては未知数って感じだよなぁ。

まぁ、どの道、敵の戦力も未知数だから比べようがないんだけどね。

歩が金と成る…ティーチャーくんの血筋は申し分ないし、実績もある。

獣との闘いにおいてはティーチャーくんの方が一日の長があるっか。

指揮系統に関してもお爺ちゃんの方が安定する、気がする。


「それじゃ、候補として受け取らせてもらうね?取り合えず決定までは候補っていう立ち位置でいい?」

ズルい手だけど、まだ、お爺ちゃんから話を聞いていない。

「ええ、勿論です。司令官が眺める天空からの盤上、その駒として抜かりが無い事を祈っています」

王都騎士団がするように胸に手を当て背筋を伸ばす。

敬礼するなってーのここは、ぐんたいじゃない…ここは騎士団じゃない。


ここは、人類を守るために集まった戦士達の集まりなんだから。


っま、彼の意気込みを表す為ってことだから、受け止めましょ。

彼の敬礼を受け止めると、彼らの後ろの方、正確には下かな?階段を登る足音が近づいてくるのが聞こえてくる。全員がその足音の主が昇ってくるのを待ち続ける

「その候補というのは吾輩も、であるか?」

階段から顔を出すと同時に話が聞こえていたのか、確認を取ろうとしてくる

せっかちさんだなぁもう。

「候補どころか、会議室でもいったよね?あてにしてるんだよ?」

「期待を背負うっと言うのは実力者として当然であるな」

自信満々な表情と偉そうな態度で前へ進んでくる、でも、奥様の手を握りしており、その腕が小さく震えている。


ったく、腕が震えてるよ?覚悟決まってないじゃん。

次の言葉を出す為に己の震えを止めるためなのか、私達に気付かれないように小さく深呼吸をしてから

「わがは」「私も候補としてください!」

宣言をしようとしたら奥様に被せられてしまい、唖然としている。

ベテランさんの発言の途中で奥様が大きく頭を下げてくる。


ぶっちゃけると会議室に入ってきたってだけで、こうなるんじゃないかって予感はしてた。

だってさ、常に彼女の目って力強いんだもん、アレは、愛する人を守るって決めた力強い目をしてんだもんなぁ。

会議室では一部始終を黙って見ていたけれどさ、会議室から出たその後でより一層、何かがあって決意を固めちゃったんだろうね。

想像しちゃうよね、そう言う一連の流れがあったって


情けない姿を見せすぎたんじゃないのー?ったくもう。


奥様の独断によるムーブをベテランさんはどうするのか、私から何か声を掛けるべきなのか様子見かな。

先に動いたのはベテランさんだね、奥様はたぶん、私が許可するまで頭下げ続けそうな気がするし。

旦那として愛する妻の行動をどうするのか観察を開始ってね。

「な、なに、を」

予想外の展開に思考が追い付いていないのか顔面蒼白になっている、慌てながらも頭を下げるのを止めさせようとしているが、軽く肩を叩くその程度でやめる人じゃない

「女として恋を知りました、母として愛を知りました、でも、私は一人の、いいえ、一つの武です。武人として悔いがあります」

ほら、とまらない、やめない、突き進もうとしてるよ?

「や、とま、るのである」

小さな声で奥様にだけ届く様に声を出してるけど聞こえてるからね?情けない、亭主関白だって言っておきながら実のところってやつ?

これ以上、辱めをさせるわけにもいかない、助け舟を出すとしましょう。

頭を下げ続けながら宣言を続けている奥様に

「頭を上げて」

声を掛けると綺麗な所作で背筋を伸ばし真っすぐに此方を見つめてくる。

その瞳から伝わってくる、会議室よりも…

うん、会議室よりも目に光が力強く宿ってる、助け舟とか考えちゃったけれど、これはもう、私じゃ御せれないかな。

「そして!…恋した男性の傍に、武人としても惚れた相手の傍に!最後の最後まで武人として、彼の恋人として、愛する人として、傍に入れる資格を有していながら今のこの場で懇願しないのは、私は、その後の人生、耐えられません…永遠に後悔という念が突き刺さって、生涯の悔いとして残ってしまいます。私は」

徐々に熱が籠り視線が突き刺さるほどに睨みつける様に此方を見ながら宣言を続けていると、全て言い終わる前に、顔を赤く染めたベテランさんに肩を掴まれ

「何を言うのである!吾輩は!お前が、お前が」

「大事だというのですか?では、私も貴方が大事です。愛しているの。止められないの、私の剣は貴方の横でだけ輝けるの」

言葉を遮られても今度は奥様が遮り返す、見事なカウンターにベテランさんも黙っちゃった。


感情をぶつけられる前にきっちりと感情でカウンターを打ち込むあたり、この人は強かだよ。

ベテランさんでも説き伏せるのは難しいだろうね。

っとなるとさ、ベテランさんじゃ解決できそうもないって、感じかなぁ?

だとしたら、人情の姫様ではなく、司令官として一肌脱ぐべきか。


司令官として冷徹に拒否すれば彼女は納得するだろう。


これ以上、ベテランさんの心を揺さぶられては困ると声を出そうとしたら

「吾輩は!いや、俺は!間違っていた!」

大きな声と同時に奥様を強く抱きしめ

「今、この瞬間、見えた!俺は…俺の武は君の隣でのみ輝く!」

その勢いのまま、周りに誰かいようがお構いなしに感情をぶつける様に熱いキスをしてから、此方に顔を向け

「姫様!いえ、司令官殿!俺と、この、つ、ま、いや。閃光姫を共に前へ出撃させてほしい!!」

決意に満ちた表情を向けてくる。この流れで断れるかってーの!

「あー、後戻りできないからねー?」

「もちろんです!」


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