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最前線  作者: TF
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Cadenza 戦士達 ⑥

二人が情けない私に寄り添おうとしてくれること涙を流したくなる。

「ううん、そういうのじゃない、次の戦いは生きて帰ってこれないかもっとか、そういう覚悟の確認じゃないんだ」

潤んだ視界に見えた二人の顔が伝えたいことが真に理解できていないのだと伝わってくる。

その二人に、ううん、三人に伝える。

「二人の未来は閉ざされる。今回の戦いを勝つために、二人の未来を人類の為に捧げて欲しい」

喉から言いたくない音が過ぎていくと

「それは…どういうことだい?馬鹿な私でもわかる様にはっきりいってくれないかい?」

更にわかりやすく、言いたくない音を言わないといけない

拳を握り締め声を出す

「はっきり言うね。今回の戦いの為に覚悟を決めてくれた人の体をいじる、わかりやすくいうと人体改造をする。悪いけれど、勝手に候補者…肉体を改造する対象者を選ばせてもらったよ、対象者として、私、団長、ベテランさん、女将の四名、この四名。彼らには肉体改造を施して無限に近い魔力を肉体へ注ぐためとその魔力を自在に操れる改造術をうけて、もらう」

「むげんの?」「まりょく?」

二人ともピンっときていないのか不可思議な顔で此方を見ているので説明を続ける

「えっとね、戦士としても魔力って重要だよね?肉体を強化するために必要な魔力それを無限に扱えれるっで」「吾輩達に無限の魔力を宿ったとしてもである、無限の魔力を姫様のように扱いきれるとは思えれないのである」

言葉を遮るないってーの。

うん、その点も当然、考慮済み

「っで!魔力が体に流れたとしても扱いきれなかったら意味がない、そんなの当然じゃん、だから、放出できるのかどうかを今確かめたの、女将も放出は出来ないでしょ?」

「いや、んなこたぁねぇよ?何となくだけど感覚は掴んでるさぁね」

予想通り、女将は放出が出来ると思っていた、先ほどの問いかけと今代の私の記録で何となくそんな気はした。

スイッチを押せるっと言うことは、技量に関しても到達しているとみていいからね。

「女将は出来る、でも、ベテランさんは放出が出来ない」

事実を突きつけるとしかめっ面で此方を睨まないの

今からそのしかめっ面も全て意味をなさなくなるから。

「でも、それが出来るようになるとしたら?」

眉毛が動いた、驚いたのが伝わってくる。

「まさか、いや、姫様であれば、っであるな。そんな簡単に会得できるものであったのであるか。して、どの様な訓練であるか?」

話を聞いてたのかな?改造するって言わなかったっけ?…そもそも、改造って言葉の内容が理解できてないのかも?

「訓練じゃないよ。時間があれば訓練によって身に着ける事も出来たけどさ、今はそんな悠長にしてらんないよね?なら、どうすればいいのか、答えは目の前にある」

人差し指の先を自身の胸骨につけ

「二人はさ、私の体質、知ってる?」

二人揃って首を横に振る。

どうやら、私の記憶、その一部に触れたみたいだけど、全てを知っているわけではないってことかな?

「私の体質、生まれ持って…ある運命を背負わされた一族が命と引き換えに奇跡を発現した代償。白き乙女達は体内を巡る魔力が自然と勝手に意図することなく体が抜け出ていく、それも凄い量が…」

ベテランさんは首を軽く傾げている。

これが如何に危険なのが分かっていない様子。

魔力を放出し過ぎることが如何に危ないのか身をもって体験したことが無いからだろうね。

っま、そんな感じだよねっと反応に反応を示さず言葉を続けていく、壊れた蓄音機のように、淡々と…

「本来人ってのは魔力が多少は体外へと流れていく、理屈としては魔力を体外へと放出する為に弁のような機構が人体には備わっているの。その弁が体内から魔力が溢れ出て行かないように機能しているんだけど…私は壊れている、その弁が。壊れているから魔力が外へ垂れ流しにさせたくなくても勝手に溢れ出ていく。それが私の体質、これを技能として表現するのなら魔力放出(特)ってことかな?普通はね、特訓して特訓して、意識を深く鋭く魔力へ意識を伸ばして術式を行使するために必要だから体も心も理解して放出することが出来る、そこまでしないと大量の生命を維持できない程の魔力を放出する事なんて出来ないのに、私の体は勝手にそれが行われている」

女将が小さく頷いてから

「姫様が術を得意なのはそういった理由ってことかい?なら便利」

女将の視線が私に向けられていたと思ったら青ざめた表情で驚いた顔をしている

たぶん、私の後ろにいる団長が深刻そうな顔で首を横に振りその発言を否定したのだろう、女将が静かに視線を下げると後ろから冷静な声が聞こえてくる。

「医療班として説明させていただきます。暫しご清聴ください。姫様の症状は魔力欠乏症と医療班は古くから診断しております。この病気は病気と言っても良いのか、体質なのか、どう表現したらいいのか、私達にはわかりません。現時点での医療としては完全なる原因が掴めていません。敢えて言うのであれば先天性の疾患、この疾患により姫様は自身が体内で生み出せる魔力よりもより多くの魔力を意図することなく体外へと放出し続けてしまいます。人の体には魔力が血のように循環し、生命を維持する役目も担っています。その魔力が無くなると…人は死ぬと言われています」

女将が深刻そうな顔で口を何度も何度も開いたり閉じたりをしている間にベテランさんが何も考えずに発言してくる。

「では、姫様はどうして生きているのであるか?医療班として治癒できているのであろう?」

ごもっともな意見だし、その疑問は正しい。

「No2と一緒にね、研究したの、これをどうにか出来ないかって」

腕を前へと伸ばし団長から受け取った魔力を封印術式に向けると腕から…ううん、全身に赤い模様が浮き出てくる

「こ、な…なんで、ある、か?」

驚くのも無理ないよね、入れ墨みたいにさ常に見える物じゃないからね、それも…赤々と原液はNo2の血液だからね。

「ベースは人の魔力を封印する術式、これが描かれた陣の上に人を乗せると陣の作用によって陣の上に居る人達は魔力を行使できなくなる。さらには、これを人体に描くことによりその人物は魔術を行使できなくさせる…悪しき術式、それを幾度となく改良し続け、私の体から不必要に魔力が外へ流れでないように施した術式、これが無かったら私は…この街に来て直ぐに死んでたと思う」

最後の一言によって女将の瞳から大粒の涙がこぼれ

「あ、あれ、徐々に姫ちゃんが起きなくなって、おきてきたら、片目がなくなって、ひにひに…ほそく、食べ物も、たべれなくなって・・・それで・・・トカゲが、多くの獣を引き連れて」

ただでさえ大きな瞳をより大きく瞼を開き呪詛のような悲しき結末が彼女の口から零れ落ちていく。

悲しき死が女将の中を通り過ぎていってる、それ以上は良くない、心が滅入るからね。あと…わたしのほのおがもえひろがるから

「それ以上、思い出さなくていいからね、その悲しき世界は過ぎ去ったから、乗り越えたんだから」

意識を逸らす様にしてみたが火に油を注いでしまったのか、ダンっと机を叩く音が会議室に響き渡る。叩かれた机を見るとヒビが走っている。

「よくねぇよ!あたいは!あいつに…あたいたちは!あいつに!噛み千切られその場に放り捨てられてんだぞ!獣として食すことなく!」

そんなの白き獣達からすれば常識じゃん、あいつらは私達を捕食するために襲うんじゃない、ただただ、目の前に居るから襲ってくる…恨みを込めて、ね。

「…その恨みは忘れなくてもいいから、今は置いといて、その恨みは…私の中でも消えることが無いから、呼び起こさないで」

女将に釣られ泥の奥底から膨れ上がり湧き上がっていく殺気を押し殺してみたけれど、溢れ出てしまったのか、近くにいる人達から生唾を飲む音が聞こえてくる。

「す、すまねぇ」

「謝ることなんて無いよ、その怒りは最もだもの」

はい、落ち着いてっと団長が紅茶が入ったカップを渡してくれるので一口飲むと気が付けばベテランさんが自分の席に戻り、私と同じように紅茶を口につけたけれど、カップをカップソーに乗せる際にカチャカチャと震えるような音が聞こえてくる。

「うん、ごめんね。話を逸らしちゃった。元の流れに戻すけど、無限の魔力、それを放出するために…そこの部分も改造する。魔力が外へ流れ出て行かないようにする弁をあえて壊す私と同じ体質になってもらう、そう、封印術式の逆を…対象者に施す」

どういう改造を行うのか説明を終えると挙手など無く質問が飛んでくる

「それによって吾輩も魔力を外へ出すことが出来るってことであるか…吾輩は学が無いのでわからないのであるが、魔力を外へ出したとしてもどういう意味があるのであるか?吾輩ははっきり言うのである、学が無く術式にも疎いのである。当然、術式を術者のように扱えれないのであるが?そんな吾輩にそのようなことをしても無駄ではないのでは、なかろうか?である。」

彼の質問に対して、私は静かにゆっくりと首を横に振る。

無駄なんて起きないよ。


だって、君たちは見てるはずだよ?命の本流を


「死の一撃、みたんだよね?」

「ああ、あたいは、この目に焼き付いている、戦士長が見せた、何時思い出しても鳥肌が止まらない、見る度に思い出すたびに、あの、一撃は…心が整理できないさぁね」

それを目撃した人はその人が死ぬのだと肌で感じちゃうんだろうね。

質問の本質はそこじゃないんだけどね。

「それを何発でも撃てるってなったら、どうみる?」

気が付いていなかった一言なのか、涙の痕跡なんて消えてしまいそうな程に女将が口元に小さな皺を作り自然と口元に指先が触れ

「あの、一撃を…命を賭さなくても?撃てる、っての、かい?」

私が何を言いたいのか理解した瞬間、女将の体が小さく震え始めている。

「そうだよ、無限の魔力、それがあれば何も犠牲にすることなく放てる」

っま、改造しちゃうと…その時点で犠牲になるんだけどね、人類の礎としてね。

その事は一旦ひとまず置いといて


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