表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
665/694

Cadenza 戦士達 ④

こうなることを見越してなのか具足を装着してる辺り、お互いの考えや行動原理をしっかりと把握しているってことだよね。普段から仲が良いんだろうね。

今代の私の記憶だと、ベテランさんとこの奥様って気が強いんだよね。

口下手なだけで、芯が通っていてああ見えて肝っ玉母ちゃんなんだよね。


二人の激しいやり取りのせいか、女将が口を開いて呆れたように、ううん、違うどうやって喧嘩を止めようか悩んでる感じだね?

つまり声を掛けるタイミングを完全に失ってしまったって感じだよね。

女将が口を挟むと二人のヘイトを女将が請け負ってしまうからね、計らずとも結果良し!ってさ、言いたいけれど~、私がこの状況をどうにかしないといけないんだよね?ってことはさ、単純に出てくる選択肢はこの二つ。


取り合えず、場を動かすために浮かんだこの二択をどうしたものかな?

①奥様も会議に参加してもらう

②ベテランさんの言う通り幹部しか参加させない


ん~…戦力を補強するって考えであれば戦闘に参加したがっている奥様を招き入れるべきなんだけど、それをするとベテランさんの士気が落ちる。

かといって?奥様を邪険に扱うと奥様が不機嫌になってベテランさんのやる気が削がれる。


…であれば!奥様に発言権を無しにして話を聞くだけって形がベスト、かな?


「ほらもう、ドアを開けっぱなしでもめないの!奥様も中に入って良いから、その代わり、発言権は無いからね?あと、他言無用!これ、守れるのなら旦那さんの隣に居てもいいから」

「・・・!!」「姫様!?あ、こら!」

奥さんが大きく頷いて中に入ってくると女将が普段ベテランさんが座っている席を指さすとその隣の隣に椅子を運んでここから一歩も動きませんからと言わんばかりに力強く背筋を伸ばして此方を見てくるので「座って良いよ」許可を出すと真剣な瞳のまま椅子に座り、背筋を伸ばしている。

「先輩も!ああ、ああ!そういうことであるか!まったく!裏で!いつの間にである!!」その愚痴に反論しておかないと小さな亀裂が生まれる、今は些細な亀裂も欲しくない。

「私は奥様から何かお願いなんてされてないからね」

疑われそうなので即座に釘を刺すと近くに居た女将がバツの悪そうな顔をしている。

動きが物語っている、言うまでも無く黒ってことだね。

三人の関係性は古くから繋がっている、そこを新参者…ってわけじゃないけれど彼らほど関係という年季は深くない。

なので、この問題については当人同士で蟠りなく解消してね~。

取り合えずここまでくらいかな?干渉するのは。


後に関しては、私はしーらない、この一件に関しては私がどう動こうが損しかしない気がするんだもん。


「っぐ、そうで、あるな。姫様はずっと面会禁止であったであるな。お前が姫様と顔を会す隙間は無いのである。あるが、姫様はNo2と仲が良いのであるし、それに先輩も」

睨みつける様に女将の背中を睨みながら奥様が待っている自分の席に移動しようとしているベテランさんの声を太い声が遮る

「あたいは何も姫ちゃんに頼んでねぇよ、あいつも…いや、それはわからねぇか」

唇を尖がらせながら悪態をつき事実を挟み込みつつNo2なら有り得そうだと、流れる様に…反論しないとね、巻き込まれたくないもーん。

「ざーんねん、私はNo2から奥様の事について何か頼まれたりして無いから」

そうであるか?っと奥様を睨みつけると奥様は一切視線を交えることなく背筋を伸ばし続け鼻筋を前へ向けている。

反応を示さない頑な姿勢にベテランさんも呆れることなく、視線を逸らすだけ。

奥様のこういった姿を何度も目撃してるんだろうね。

「そもそも、奥様が私に用事があるって時点でね、この状況で何用かなんて察することが出来ない私じゃないってーの」

この言葉に奥様が期待を込めて視線を此方に向けてくるのと同時に、ベテランさんから睨まれてしまう。

「殺気を向けんなってーの。そもそもね?私が参加しろなんて強要すると思う?そういうのは当人たちの問題、お互いで話し合って決めて欲しいかな。まぁ、司令官としてであれば奥様の手を借りれるのなら喜んで!だけどね~」

椅子から勢いよく立ち上がろうとするのを「はい、発言は許可してませんからね」制止すると悔しそうな顔で椅子に着席し、また背筋を伸ばし澄ました顔で真っすぐに此方を見つめてくる、当然、私も参加させろと圧を込めて。

その程度の圧、私は何も感じない。


女将に自身の席に移動するように声を掛け、女将がベテランさんの隣で豪快に座ったのを合図として会議を始める為の声を出す。

「さて、目的の両人が揃った事だし、始めるよ、確認の会議を」

二人が今回の戦いで何処まで覚悟を決めているのかまずはそれを確認したい。

「確認?何を確認するのであるか?事前の策を受け取った記憶はないのであるが?」

「あたいもだね」

何を当たり前の事を、確認の会議、作戦を確認する会議じゃないよ

「二人のね、技量…私が欲しいと思う程の技量に到達しているのか、悪いけれどそれを確認するための会議だよ」

その一言で二人が同時に立ち上がり

「「足でまといって言いたいのか!」」

顔を真っ赤にし眉間に大きな皺を作り直ぐにでも飛び掛かってきそうな剣幕で前のめりになっている、血の気が多いのは良い事だよ。

「うん、その可能性を無くすための確認だよ。悪いけどさ、記憶に触れたんでしょ?だったら、敵がどれ程までに凶悪なのか理解してるよね?」

冷静に冷淡に待ち受けているであろう事実を告げると

「なら証明するまでさぁね!」

「ああ!姫様と矛を交えればいいのか!?」

鼻息が荒すぎる、二人の息が同時に渦を巻いて此方に迄、届いてるってーの

「そんな無駄なことはしない、私が聞きたいのは一つだけ」

この一言で嫌そうな顔をしたのが一人、不思議そうに小さく首を傾げ片眉を上げたのが一人、小さく眉間に皺を作り一瞬だけ体を跳ねさせた人が一人。

三者三葉の仕草にはっきりと告げる


「死の一撃を放てれるの?」


三人にとって、ううん、武人にとって憧れる頂。武の極地に到達したモノだけが放てると語り継がれる一撃。

この言葉が何を意味するのか知らない三人じゃない。

誰がいの一番で前へ出てくるのか考える間も無かった。

「…あたいは出来る、その境地を理解したさぁね」

嫌そうな顔をしている人が一瞬だけ肩が動いた、彼女がその領域に立てていることに驚いているんだろうね。

自分の才を僻んで卑屈にならないで欲しいなぁ、ベテランさんは心が弱いから。

私は、ううん、この街の誰もが貴方の事を認めてはいるんだよ?

一部の女性達から被害届が出てるけどな!

視線を女将に戻すと精悍な顔つき、覚悟が決まっていると伝わってくる。

「あれだろ?なんつうか、この、叩いてはいけないドアがあってよ、そのドアを強引にあけるとよ、自分が死ぬって不思議とよ?何故か知ってる、わかってる…そのドアを開けれるかどうかだろ?」

「うん、そうだよ。その扉の先に生命を魔力へと変えるスイッチがある」

求める答えを教えてあげると驚く素振りも無く小さく頷き机の上に置かれた拳に力が込められていく


うん、表現は人それぞれ、女将の場合はドアとして感じている。

それを感じ取れている時点で心の極地に…その領域に到達している。


自身の細胞を肉体を生命を…魂を魔力へと昇華させることができても膨大な魔力を扱いきれるかどうかってのは置いといて、心がその極地にまで高まっているのであれば問題はない、そこに立てているかどうかが一番大事、膨大な魔力?無限の魔力?…アレを味わえば彼女であれば御せれるでしょ、女将は体感できないと会得できない肉体言語の人だもん。


静かな沈黙が会議室を包み込む。

女将の宣言が終わって次の人物の発言を待っているんだけど、自ら口を動かせれないのなら、嫌そうな顔をしている人物に

「っで、ベテランさんはどうなの?」

声を投げかけると、悲しそうな顔をしている。

心の極地、己の命を賭してでも、そういう心境に心の奥底から、魂の魂底から覚悟を決めないと肉体は応えてくれない。

ベテランさんは…己の欲を満たす為に長くながく、生きたいと願ってる人だもん、その極地に辿り着けない。


自己犠牲の極地に…


彼の情けない言い訳、なんて断罪するつもりはない。

彼は…尊敬する師匠を失った影響もある、心が拒否反応を示すのも仕方ないよ。

技量に関しては文句なしでその極地に到達してるって知ってるから。

彼の…悲しくて切ない吐露を受け止めてあげるから感じてきたことを言ってくれると嬉しいかな。

「吾輩は…わからないのである、何度、槍を振ろうが、何度、剣を握ろうが、何度…皆が言うその境地に、戦士長の域に吾輩は届かぬのである、吾輩は、わが、ぼくにはさい」

これ以上は良くない、それ以上、自分を責めてしまうと心が完全に停止する。

辛そうにしているベテランさんに手招きをして、それ以上、踏み込ませないようにする

「こっちに来てくれる?」

辛く苦しく情けないのか、悲しいのか読み取れない表情が向けられる。

どうして呼ばれたのか不思議そうな顔で言われたとおりに近くに来てくれる

「手を、両手を此方に伸ばして…あっと、忘れてた、だんちょー!」

炊事場から出てこない団長を呼びかけると「ぇ?私?今行くね」

手をハンカチで拭きながら此方に急いで駆けつけてくれるので

「魔力ちょうだい」

要件を伝えると直ぐに私の後ろに立つと、首に手を添えられ魔力が流し込まれていく。

魔力が体に流れていくのを感じてから、此方に真っすぐに伸ばされているベテランさんの両手を握り

「魔力をどの程度コントロールできるのか、チェックするから覚悟してね、これによっては今回の作戦、最前線から退いてもらうから」

非道な物言いだけど、軽くプレッシャーをかけておいた方が彼は力を発揮するからね。

言葉を受け取ったベテランさんの顔から彼特有の緩さが消え、先ほどの表情も消えていき、戦士としての顔つきへと変化していく…

彼の腕から神経が研ぎ澄まされていくのを感じる

「これってね、かなり危険だから、危ないと感じたら中止するからね?」

言葉と同時に彼の魔力と私の魔力を繋げ私の魔力を彼の中に溶け込ませ魔力と魔力を混ぜ重ねるようにし…彼の魔力と同調させていく。


いとも簡単にやってのけたけれど、自分でも驚き。

今までの人生で彼から魔力を受け取ったりしたことがない、はずなのに、抵抗など無く不思議と私の…私の体を通っていく団長の魔力がベテランさんとの魔力と交わっていく。

きっと…団長の魔力だから、かな?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ