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最前線  作者: TF
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Cadenza 戦士達 ①

瞼が自然と上がり目が開かれると、視界に蛍光灯の灯りを模して作った明かり、白い光が脳に突き刺さる。


眩しい…目に光が差し込んでくる…


光りが目に居たいと感じた瞬間、脳を声が通り抜けようとする。

【原理としては火で灯りを灯すのではなく、光源を生み出す術式をベースとして──


ストップ…脳内を走り抜けようとする今代の私が残した記録を止める。

凄く魅惑的な解説だけどさ、今はいいよ。ってか、だいたいわかってるから。


寝起きで思考が起きてもいないのに、光源についての記憶が再生されてしまうってのも状況を考えて欲しいかな。


今代の私の記録に小さく文句を言う、記憶が蘇ってから意識しなかったけれど、随所でそういった説明が勝手に再生されるときがある、知りたいときとか、思い出したいときは神経を向けるけど、どうでもいい時は今後はさっきみたいに止めよう。


目覚めていく自身の感覚を感じながら小さく自身に向けて悪態をつく。

凡その見当はついてるからいいってのに…


目覚めていく感覚に誘われるようについつい、日常のように体を起こそうとしても足に力が入ることが無かった。

せめて上半身を起こす為に腹筋に力を込めると痛みが走りつい口から「腰が痛い」愚痴が零れてしまう。

腰が痛いのは寝返りが出来ていなかったのか、無理な姿勢で寝ていたのか、はたまた、昨日、動いたせいで筋肉痛っとか?っかな?

考えるまでも無いんじゃない?目覚めるまでの間、寝たきりだったから筋肉が落ちているってことじゃないのかな?っま、どうでもいいか。


目も覚めてきたし、さて、こんな真っ白で退屈な天井を眺め続けていても、何も始まらない。起きよう。


私達残された時間はなんてない


先生が動いたのであれば、此方も全速力で動かないと…一手どころか何手先も置いて行かれてしまう。

思い返してみれば見るほど…うん、先生らしくない。

此方が動く前から、あそこ迄、あからさまな先手、先生らしくない…

もしかしたら先生が考案した作戦ではないのかもしれない、でも、先生らしさもある、そうであった場合、何かしらの意図があるのだと信じて動く、ううん、動かないといけない。


人類を殲滅するのを優先するのであれば、段階なんて踏まない。

村が毒で滅ぼされたりと…

女将の村が滅んだり…

海にいるであろう敵が動いたり…

一つ一つの作戦、行動の間に時間がある、間髪入れずに動いていない。

猶予をつくってくれている辺り、先生は先生で必死に敵の動きを遅らせてくれていたのかも…しれない。


なら、その意図を汲み上げる。

先生が望む一手を此方も打つだけ。

そのおかげで、今代の私は秘密裏に用意してくれた…人類を強化する術を。


今代の私が…人々の祈りで動く私が望む未来を掴むためにゆっくりと天へ向けて腕を伸ばし…祈りを掴む!っと、天井へ伸ばした腕が掴まれその腕に黒い袋を通され「はい、血圧はかるね」しゅこしゅこと空気が送られていく音が聞こえ上腕が圧迫されていく


されるがままに、じっとしていると

「はい、異常なし、血圧は安定してますね」「それは良い事ね寝起きで安定しているのであれば、酸欠の心配も無し心臓の動きも正常ってことよ」

血圧は?他はって言いたいけれど、聞いたところで、ね?


ただなぁ…うん、相も変わらず、医療となると此方の意思確認とか無いよね?君たちはさ?まぁ、血圧測るくらいかだからさ、別に良いんだけど、なんかなー、私の記憶だと容赦なく問答無用で意思確認無しで薬を投与されるわ導尿まで勝手に設置されるわ…ってかさ?一か八かの薬も投与された気がするんだけど?

…私に対して遠慮や配慮ってなかったりしない?

…まぁいいけどさ、どうせ許可するし、それが必要なんだからしょうがないじゃん。


「ってことで、姫様、どうする?起きる?」

「うん、起きる。あと、ついでにトイレ連れて行って欲しい」

頷くと同時に背中とベッドの間に手が差し込まれ血圧を測っていた方の手を握られ上半身を起こされ、手慣れた手つきで車椅子に移動させてもらう。

そのまま車椅子を押されトイレの中に連れていかれ慣れた手つきでトイレ介助してもらう…

その流れるような動きに感心してしまう。

医療班って、ここまで練習してたんだ、足が動けない患者なんてそうそういないはずなのに。


感心している間に全てが終わりトイレから出るとお母さん…ううん、医療班No2が治療の方針を聞いてくる

「水、飲める?難しいのなら点滴にするわよ?」

「水分は飲むよ、でもね、点滴もお願い、出来れば」

「ええ、わかったわ」

此方が全てを言う間に頷いてくれる。

その仕草で理解する、此方の意図を伝えるまでも無く伝わったのだと。

「それじゃ、私は点滴液などを調合してくるわね」

真剣な表情でされど微笑んで手を振って部屋を出ようとするので幹部として言伝をお願いする

「会議をするから、ベテランさん、女将を会議室に呼んできてもらってもいいかな?」

「他は立ち入り禁止?」

ドアの前で立ち止まり、確認をしてくれる。その声から伝わってくる背けたくなるほどの圧を…私はその圧に何度も何度でも向き合わないといけない。

それが…私が選ばれた理由だろうから。

「一部の人は立ち入り禁止、部外者、は、ね?言うまでもないよね?」

「ええ、わかったわ」

静かにされど重い声と共にドアが開かれNo2が外へ出てドアが閉まる間際「はじめるのね」悲しそうな音色が聞こえてきた。


終わりを告げる始まりの…ラッパを吹くよ。


先生に置いて行かれない、ううん、追い越す為にね、人類に未来を繋げるために。

…仮に、皆が動いてくれなかったとしても…


私と旦那の二人だけでもやる、やってみせる。

もう…次は無い。


静かに失う覚悟を決意に変えていく。

不思議と、私を…ううん、私達を支え続けてくれた彼が背中を押してくれたような気がした。




朝の仕度を終え、メイドちゃんに指示を出してから、団長に車椅子を押してもらい会議室に連れて行ってもらう、道中で見えた世界は眩しかった。


誰も居ないであろう会議室のドアを開き、中に入っていく。

当然誰も居ない。いない筈なのに、不思議と、多くの人達の視線を感じた。


何時もの…議長席に連れて行ってもらい、何時ものように会議室の全てが見渡せる席。

何時ものように並べられた机と椅子を眺めていると「私も居た方がいい、よね?」不安そうな声が耳に入ってくる。

恐らく、団長の中で色んな変化が起きてしまい、自身の感覚がわからなくなっているんじゃないかっていう仮説は立てておいたけれど、否定できないかも?

何時もの彼女であれば我関せずに炊事場で自分が飲みたいからお茶を用意するくらい図太いのにね、判断力が低下してようが待ってくれないし、彼女なら心が追い付いてくると信じよう


っま、これに関してはね気にしたってどうしようもない気がするし、今の雰囲気であれば自然と彼女と彼女は馴染んでいくんじゃないかな?


机の一点を見つめながら力強く意志を込めて声を出す

「当たり前、団長はこの街の幹部でしょ?No2に色々と任せすぎ。医療班のトップとして全てを受け止めて欲しい…覚悟だけしていてね」

最後の言葉だけは、彼女の瞳を見て声に出す。

彼女のもまた、しっかりとこっちを真っすぐに見つめ返してくれている。


そうだったね。■■さんは、今代の私が全てを託せるほどに成長している。

何も、心配なんていらない、私が知ってる彼女ではない、今代の記録が彼女が強く成長したのだと後押ししてくれる。


…彼女には非常に辛い作業を押し付けてしまうってわかっているからこそ、私も背負わないといけない。


命を散らしてもらうっという宣言をすることに


目の前にある机をぼんやりと眺めながら心を固めていると

いつの間にか炊事場に移動していたのか、炊事場から出てきた団長が

「会議とはいえ、メイドちゃんは?」

此方に真剣な顔つきで質問をしてくる彼女に向けて首を横に振り

「彼女には、して貰わないといけないことがある。あいつをこの部屋に近づかせたくないから」

その言葉に、納得して頷いてくれるけれど不満そうな顔?

「大丈夫?メイドちゃんだけじゃ厳しくない?」

不満ではなく不安だったかも?偉い人に苦手なメイドちゃんには荷が重いかもしれないってことね?優しいな団長は。

「きっと、大丈夫、メイドちゃんだったら足止めくらいやってのけるよ」

今代のメイドちゃんならそれくらいのらりくらりとやってのけてくれる。


絶対に、この先の会話は王族に知られたくないからね。

何故かって?


それを他の人にも施せと無理難題を吹っ掛けてくるだろうからね。

無理だってーの、機材が足りてねぇんだから、選べるのは5人までだもん。

私、団長、女将、ベテランさん、後は…お爺ちゃん、かな?


今からその条件にあった人を選定しなおすなんて、時間が無い。

先生は止まらない、今も次の一手を進めるために何かをしているはずだ。

その一手に間に合わず後手後手に回っている様では、私は先生を卒業できたとは言えないからね。


最後の最後

不出来な教え子は最後の最後、彼を超えないといけない。


…それが一番の難所だったりするんだろうね。

あの人はさ、人のゆるみ、人の感情、人の心にある隙をつくのがうますぎるんだもん。


「メイドちゃんはこの先の内容って、知ってるの?」

首を横に振ると「ってことは、メイドちゃんには知られたくないってことだ。悪い上司だね」溜息と共に自分の卑怯で非道な部分を指摘される。


うん、わかってるよ。

今回の会議、メイドちゃんの耳に入るのは良くない、とっても良くない。

彼女は…この作戦を否定するだろうから。



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