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最前線  作者: TF
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Cadenza おまけ 盗み聞き


姪の病室から出ると、嫌な気配が廊下の奥から伝わってくる。

それを見ると抑えきれないので見ることなく、静かに廊下を歩き愛する家族が待っている部屋、そのドアを開けると

視界に入ってきた光景によって自然と拳を握り締め黒い炎が臓物を燃やす

燃え上がる様な感情のまま歩を進める


「・・・」

部屋の中央にある二つのベッドを重ね広々と複数の人が寝れるようにしたベッドのど真ん中を占拠する様に寝ている二つの人物。


小娘が!!

私の大切なだーりんの!!

湧き上がる怒りのままベッドに向かっていくと

「はいはい、これくらいで怒るんじゃないわよ」

寸でのところで意識を奪い返す、まったく!姫ちゃんに用事があるからって僅かな間、体を動かさせてあげたってのに!

この程度で目くじらを立てるんじゃないわよ。


ベッドの上で心地よさそうに寝ている二人の女性。

一人は満足気に愛する人の腕に絡みつく様にして寝ている。

もう一人は、そんなことを一切気にすることなく、気持ちよさそうに寝ている。

これくらいなら許容範囲でしょう?腕に絡みつくくらい許してあげなさい。僅かな時間だもの。

二人に危害を及ぼすことなく止めれたことに安堵すると同時に睡魔が込み上げてくる。


さて…

私もひと眠りしようかしら


寝る為のスペースを作る為にベッドにのぼり、ベッドのど真ん中で寝ている小娘の腕を掴んで団長の腕から引きはがして、体を転がして二人の間に隙間を作り終えたので、間に割り込み横になろうとした…だが!一つの声が耳に届く!!私の体が寝ようとする意識を制止させる!


「まって…男の人の声?」


隣の姫ちゃんの部屋から男性の声が聞こえてきた?誰よ?こんな夜中に?

瞼を閉じ聴覚に意識を向けると姫ちゃん以外の声がもう一つ?

…女性の声もするわね、どういうこと?

もう一人の私に質問を投げかけると何も返ってこない。

先ほどまで一緒に居たのだからある程度、状況を知ってるでしょうに!

ほんっと、そう言うところは非協力的なのよね!!

ベッドから下りて状況を把握するために壁に近づき


不安を感じつつも壁に耳をあてて隣の部屋から聞こえてくる声に集中する…


『きょうは、もう・・やす、め?・・・これいごは、よぶことは、ない?』


聞き覚えの無い声、それに、この言葉!!

瞬時に理解する!

これは、そう、これってやつは!!


よ・ば・い


この街で聞き覚えが無くて、尚且つ!姫ちゃんの部屋に夜遅く訪れる人なんて!

決まってるじゃない!現王の夜這い!!やだもう!姫ちゃんったら!!

何時の間にそんなに!?もしかしたらって考えたこともあったわよ!?

まさか、まさかの!?


音を立てずに地面に膝をつき慎重に隣の部屋にいる姫ちゃんに気取られないように気配を消して壁に耳を当て、必死に壁向こうの音を拾う為に集中力を限界まで高めていく。

ドアが静かに閉まる音が聞こえ、もし、姫ちゃんがそういった状況になるのだとしたら助けに向かうべきなのかどうか、真剣に悩みつつも、この先の展開に胸を弾ませてしまう。



音を拾い続けていると、時折、小さな笑い声が聞こえてきたりと、意外と良い雰囲気なのでは?っと、荒事に発展する気配も無く、安心していると、背中に暖かく柔らかいモノが触れる。

眼を開き、後ろを振り返ると

「・・・!」

鼻息を少し荒くしている団長が同じように壁に耳をあて意識を集中させ、その後ろに小娘が団長にくっつきながら同じように壁に耳を当てている。


っふ、娯楽に飢えているのね貴女達…

怒られるのなら三人一緒に怒られましょう。

もう一度、壁に耳をあて隣で行われている蜜月を味わい尽くす為に集中する。



集中して会話を拾い続けてみたものの?

会話の内容が…真面目過ぎない?浮ついた雰囲気もしない

眼を開き、後ろを振り返ると、団長が何とも言えない残念そうな苦悶の表情で壁に耳を当てている。

貴女も思っているのね、そういう雰囲気じゃないって。


それでも!男と女がこんな夜中に!しっぽりとしないわけがない!

この先に何が起きてもおかしくないという期待を込めて、もう一度、耳を壁に当て続ける


何事も無く、淡々と会話が続けられていく。

男と、女が…夜中を共にしている、ってのに?

恋の伝道師としての勘は落ちたものね…


これ以上何も起きない、流れ的にそうなりそうだと落胆していると

隣の部屋からドアを開く音が聞こえてくるので慌てて立ち上がろうとしても

長い時間、膝をついて座っていた為なのか、団長の重みのせいなのか、立ち上がれない!!


後ろを振り返って団長に視線を向けると

「・・・?」

団長は状況を理解できていないのか、首をかしげて此方を見てるじゃないの!

姫ちゃんが部屋の外に出るっていうことは!部屋に戻らずこっちに来るってことじゃないの!


気付いてと団長の腕を叩くとドアが開かれ

三人、慌ててその場から逃げる様に腰を曲げたままベッドへと向かっていく…




「はい、痛いところない?」

姫様をベッドの上に寝かせてから確認すると小さく頷いてくれるので、ふぁあっと欠伸をしながら姫様から離れ寝るために向かい側のベッドの端にのそのそと歩いていく。


一番奥にNo2、その隣にメイドちゃん、その隣に姫様、そして最後に先ほどまで寝ようとしていたベッドの端っこは、まだスペースが残っている。

No2の隣に移動してベッドに登って横になる。


奥から見て

私・No2・メイドちゃん・姫様の順番でベッドで横になる。

ベッドを二台並べただけなのに、意外と?4人も寝れることに驚いてしまうのと同時に、こういった感じで友達と一緒に寝るのって夢みたいで…嬉しいと感じてしまうのは、貴女の心、なのかな?


瞳を閉じて呼びかけて見ても、返事がない。

うん、遠い遠い記憶、前世だっけ?そういう言葉があるとしたら彼女は私の前世。

地球の記憶が…彼女の記録が私の中で溶け込んでいるから、色んな知らない言葉なのに知ってる。

不思議な感覚。


ふふ、テレビばっかり見てたから変な言葉ばっかり思い浮かんできちゃう。

君の願いも、全部、私が紡いで叶えるからね。


さっきも、君からしたら楽しかったのかな?

名も無き私…恋の聞き耳なんて、そうそうできる事じゃないもんね。


先ほどの三人並んで壁に耳を当てていたのを思い出してしまう、笑ってしまう。

いいなぁ、こういうの…ずっと続けばいいのに

「ええ、そうよ、ずっと続かせていくのよ」

ぽんぽんっと優しく肩を叩かれる

どうやら、声に出しちゃって居たみたい。No2が優しく私の独り言に応えてくれる。


その温もりを感じながら、先ほどの…聞き耳を立てていて聞こえてきた内容を思い返してみると、一気に込み上げてきた笑いが消え、溜息が零れてしまう。


まったくもう、お姉ちゃんも、お兄ちゃんがいるからって好いてくれる人をさ、そんなに邪険に扱わなくてもいいんじゃないの?って義理の妹ながら思ってしまう。

お兄ちゃんだったらそれくらい、許して…くれる、よね?

どうなんだろう?


一度、自分も同じ立場となって考えてみる。


ティーチャーくんが奥さんと楽しそうに会話している?

微笑ましくて別に?何もおもわない…だってもう、二人は結ばれて幸せだもん…

ティーチャーくんが奥さんと楽しそうにお茶を飲んでる。

夫婦だし、おかしいどころか?微笑ましい、よね?新婚さんだもん…


二人が楽しそうにしている姿を想像してみても、たぶん、その光景を見たら私は心の中で祝福を送って微笑ましく見守るだけ…


…駄目だ、よくわからなくなってきた。


今日は色んな事が起きすぎて頭がうまく働かない。

こういう時は寝るに限る。

睡眠することで脳が休まって、記憶を整理する。

思考の休息は大事、だよね?


優しく抱きしめられるようなNo2の腕の重みと温もりを感じながら眠りへと落ちていく。

意識が消える、最後の最後…


この温もりに涙を流しながら喜んでいる小さな女の子が見えたような気がした…



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