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最前線  作者: TF
647/694

Cadenza ⑪


─ いやだ、うごかないで からだが 勝手に動く ─


・・・ユキが求めたのはこれであってる?

違う!こんなの求めてない!!

私は、わたしは、お母さん達みたいに医者になりたかった!

人を傷つけるために体が動いて欲しかったんじゃない!

・・・ユキは、人で居たいの?

そうだよ!

私は、ふつうに、学校の皆と一緒に成長したかった

人として、恋をして、遊んで、学んで、お父さんやお母さんと一緒に笑顔で生きたかった

・・・ユキは、僕たちがいない方がいい?

それは違う!!

皆は、私の、大切な友達、いなくなって欲しくない。

ずっと傍に居て欲しい、私と一緒に生きて欲しい

・・・でも、妖精にはなりたくないんだよね?

そうだよ…

皆と一緒に居たいけど、でも、皆は妖精で私は人、でも友達だよ、友達だよ!

そこに何の違いがあるの?昔みたいに一緒に遊ぼうよ

妖精と人では遊べないの?違うよね?

今まで一緒に遊んでいた!これからだっていっぱい遊べる!!殺しあいたくない!!

・・・うん、そう、だよね。僕たちが間違ってた

なら!力を貸して!

私をここから出して!!

君たちのママが、私のお姉ちゃんが、殺される!!


・・・うん、僕たちは決めたよ。力を合わせるママをユキを殺させない!!


「ああああああああああああ!!!!!!!!」


大きな雄たけびが喉から溢れ出ると

視界が開け体の感覚が伝わってくる!!動かせれる!!


私の体が帰ってきた!!


皆が何をすればいいのか教えてくれる!!

左手を上げ腋を露にし右手に持った槍を左腋の下を通すようにして自身の背にある翅に向けて突き刺すように力を込める!!

勢いよく腋下を槍が過ぎ去っていく、だが、槍が何かを貫いた、刺さった様な感触が伝わってこない

手ごたえの無さに焦りが心臓を打つ


これだけではダメ、なの!?一つでは足りないの!?

焦りと同時に言葉が頭に響く


妖精の槍では妖精は殺せない?

人の槍がいる


槍を此方に向けている女性、その槍を…駄目、彼女の…母としての願いが籠っている槍で子供達を傷つけるのはダメだよね、なら!槍はもう一つある!!

「メイドちゃん!!!」

左手を伸ばし

「槍を!!」

その一言で彼女が直ぐに自身の服に手を突っ込み胸からネックレスを取り出し

「はい!!」

槍の部分だけを外し投げてくれる

受け取った槍に力を込めると槍は直ぐに応えてくれる。

槍が爪楊枝のサイズから短剣と同じくらいに大きくなるのと同時に

メイドちゃんの心が伝わってくる


うん、知ってる!

メイドちゃんは私の心が好きだって知ってるよ!!


人の願い、人の想い、愛する心が槍となり顕現する。

人の槍を右肩の上に乗せるように握りしめ自身の背にある翅に向けて真の姿を現す様に大きく変化させ突き刺す!!


何かに当り一瞬だけ抵抗を感じたのちに振動が伝わってくる、とても嫌な感触が…

槍が翅を貫いたのだと伝わってくる、でも、皆の叫び声は聞こえない、それだけが救いだった。


それに呼応するようにもう片方の手にも嫌な感触が伝わってくる。

妖精の槍も翅を貫いのだと伝わってくる


「ぅぅぅぅぅぅぅ!!」


両腕に力を込め槍をより遠くへもっともっと先へと…

未来へと延びる様に力を込める


「うぅぅうううぅぅぅう!!!」


力を込め続けていると視界に槍を持った女性が此方に向けて足を踏み出すのがみえ、反射的に

「ダメ!ママが子供を傷つけちゃダメ!!」

声で制止すると彼女が持っていた槍を離して落としてしまう、手から槍が離れ地面に向かって落ちていく、その姿が友達達も見ていたのか背中から伝わってくる…


槍を手放してしまった女性は…君たちのママは大粒の涙を流しているよ

悲しませちゃダメだよ


・・・うん、僕たちがダメだったから、僕たちは大人にならなきゃ、ね

君たちは私と一緒にいる、ずっとだよ

・・・うん、ありがとう名を消された、こことは違う世界の女の子

うん、名前を失った妖精の皆、こちらこそ、ありがとう

・・・へへ、僕たちに名前なんて元から無いんだよ


だって親がいないから


ありがとう、僕たちの為にいっぱい遊んでくれて

ありがとう、僕たちの為にたくさん泣いてくれて

ありがとう、僕たちを叱ってくれて


・・・さぁ、僕たちを…月の裏側へ招待してよ、あいつらの仲間何てごめんだね


うん、さようなら。

君たちの決意、受け取ったよ。

里を滅ぼしたヤツの仲間になんてなりたくないよね…


皆の仇は絶対に私が、ううん、違う!

あんな悪いやつに!この世界を渡さない!!

ヒーローは!悪に屈しない!!


わたしたちはぜったいにまけない!!!


あの日見た、幸せの記憶が

翅が千切れると同時に弾け飛び全てが繋がる


そう…私は地球の女の子じゃない!


私は!ユキ!地球の女の子じゃない!

この世界に生きるユキ!!

偉大なりし戦士長、シヨウが子!


勇気ある人に育って欲しいと願いを託された!


私の名前はユキ!!


「私達を穢したお前を、お前たちを滅ぼす!わたしたちはぜったいにまけない!!」


決意を込めた叫び声を祝福するかの様に黄金の光が部屋中に弾け飛ぶ

煌めき世界を照らすその一粒一粒が私に盛大な拍手を送り祝福していると感じた


この煌めきが何を意味するのか、私は馬鹿だからわからないけれど

想いは受け止めたよ…





団長の背中から光りの粒たちが弾け飛ぶ

その輝くは…刹那的な輝きは命が弾け飛ぶ輝き

多くの光の粒が叫んでいる


もっと遊びたかったと


まだまだ遊びたかった

それでも、もういっぱい遊んだと満足したよと

叫び終えた後に微笑み返してくれた


あの子達の無念を受け止めるように手を光の粒へ向けると

多くの光の粒が私の手に触れてくれる

手のひらから伝わってくる彼らの心を受け止め抱きしめる


ママが、君たちを連れていくね


光りの粒が消えていく。

幻想的な光、これを花火というべきなのか、蛍と言うべきなのか

私はその何方の輝きも否定する。


これは、この輝きは彼らだけの光

他と同じに何てしてはいけない


全ての光の粒が消えると自然と足に力が入る様になってくる

泥の奥へと意識を向けると歌が聞こえてくる。


敵の干渉が終わったのだろう

泥の奥へと声を向ける

魔力は、足りそう?

『ああ、問題ない、あの子達が託しくれた』


魔力は心、心は魔力…魂は魔力…

その魔力が私に語りかけてくる

・・・大人になったよ

うん、私の知らない所で成長しちゃって、ママとしてちょっと物足りないよ。

全部終わらせて、君たちの故郷に王様と一緒に帰るからね。


それまでの少しの間、月の裏側で待っててね。

君達ならきっと、人として受け入れてくれるから


「お姉ちゃん、お兄ちゃん、助けてくれてありがとう」

この場に居るはずのない幼い少女の声が聞こえ、視線を向けると

金色の髪の色が、ゆっくりと黒へと変わっていく、その僅かな、一秒にも満たない一瞬


金色の輝きに包まれていた団長の表情が歳からかけ離れた幼気な表情だった。

その表情に笑顔で応えると少女もまた満足気に笑顔で応えてくれた


幼き少女を見送る様に見守っていると表情がいつもの団長に変わっていく。

「…ごめん、色々と、ごめん」

恥ずかしそうに二つの槍を抱きしめて恥ずかしそうにしている

申し訳なさそうに誰かに迷惑をかけてしまうのが嫌な…何時もの団長であると伝わってくる

「な~にを謝る必要があるんだっての、無事乗り切れてよかった」

にへへっと笑って一歩踏み出そうとすると

「っだ!?」

膝の力が抜け倒れそうになる!?

「危ないわね」

後頭部と地面が挨拶をする前に力強い腕に支えてもらった!っぶなー!

泥の中に意識を向けて文句でも言おうと思ったら、なんだろう?

お取込み中みたい…歌も終わってる、今の状況を見守っているのかな?

後で報告宜しくっと泥の中に言葉を溶け込ます

「にへへ、なんか、ごめん」

照れた笑いで誤魔化してしまう

「いいのよ、魔力切れでしょ?今は…少し厳しいわね。後で出来る限り渡してあげるわね」

「うん」

困ったことに、自分の事をママって言いながらも、お母さんが傍に居ると私は子供になっちゃうんだよなぁ。この人になら素直に甘えてしまう、情けないママでごめんね。

「車椅子お持ちしました!」

その声と同時に力強い腕から解放され車椅子に座らせてもらう。

「姫様、大丈夫?」

心配そうに槍を抱えている団長がベッドから下りて近づいてくれる

大丈夫ってのはこっちが言いたいんだけどね。

「槍が大きいままだと大変でしょ?」

大きな槍を抱えて歩きにくそうに頷いてるので

「槍に魔力を…心を通わすような感じで小さくなるように語り掛けて見て」

頷いてから目を閉じると槍が小さくなり

「うん、出来る。出来るよ…よかった、お兄ちゃんも皆も居ないのに私ちゃんと魔力を扱えれてる」

魔力を使った後の残滓、団長が目を開いた瞬間…

私は見逃さなかった、団長の瞳が黒から一瞬だけ金色の光が走ったのを…

これが不安材料となるのか、良きことなのか、後で相談しないといけない。


この予測が正しいのだとすれば、団長の体は…

だとしても、彼女なら問題はないと思いたい、ううん、信じよう。

…信じはするけど、相談はしておこう。うん。


自分でも嫌という程わかってる。

この一連の流れで再確認させられちゃったよ…

過去に情報を送れないっというこの状況に不安を感じ続けているのを…

私は私で心の弱さを克服していかないといけないね。


「はい、メイドちゃんの槍」

団長が槍をメイドちゃんに渡してる、けど…そもそも、何でメイドちゃんが槍を持っていたんだろう?

「そのまま、団長が持っていてください、私ではその槍は扱いきれないです」

おっと?槍の性質までは学んでいないって感じかな?教えてあげないとね

「ううん、メイドちゃんが持ってた方が良いよ、槍は魔力を糧に成長するから、メイドちゃんが団長の生末を願う心を…祈りを槍に捧げ続けて、それが団長の救いとなり力となるから」

受け取るのを躊躇っていたメイドちゃんに槍の特性を説明すると

「ぇ、でも」

それでも、躊躇っているのは、先の出来事が大きいのかも

「でもじゃないの、さっきだってメイドちゃんが槍を肌身離さず持っていたから槍は応えてくれたんだよ?槍の中に託されたメイドちゃんの願いに応えてくれたんだから」


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