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最前線  作者: TF
645/694

Cadenza ⑨

「お母さん!メイドちゃん!!団長に語り掛ける!私に続いて声を出して!各々が思っていることを叫んでくれても大丈夫!!」

「わかったわ!」「はい!!」

二人の頼りになる返事!運命ってやつがあるとしたらこのタイミング僥倖すぎる!

だって!団長が心を通わせている人物が揃いに揃ってる!

…そりゃぁ、団長のお母さんや、医療班全員に、ティーチャーくんも居れば尚良し!ううん、逆にティーチャーくんが居ると耳を塞ぎそうだから、いない方がベストじゃないの!?

「団長!聞こえる!?」

「後輩!」「団長!!」

繭の中で何処を見ているのかわからない瞳が動く事も無く、耳が動く事も無い。

何一つ変化がない。

反応が無い?そんなのわかってる!初手から反応してくれたら、ここまで悩まないっての!

反応があろうがなかろうが!彼女が反応するまで!続ける!!

「団長はそれでいいの?本当に願いは叶ったの?」

「こうは…ん?」「ねが…い?」

後ろから言葉が続いてこない。

ぁ、状況が理解できない二人だと続けて何を言えばいいのかわかってないや!

二人を先導するように声を投げかけないと!

「今、団長は妖精になるか人で生き続けるのか、選べる状況じゃないのはわかってる!強引に妖精にさせられようとしているの!それに抗うためには団長が確固たる意志で人で居たいと願わないといけない!お願い!人でありたいと願って!!」

「え!?」「ダメです!!」

ぁ、団長が人ではなくなっていっているっていうこの状況を見て二人は理解していなかったのか、っていうか、金色に輝く髪の毛に瞳をみて、どう思っていたんだろう?


近くにいる二人が本当に最良なのか幾ばくかの不安を感じてしまうけれど、きっと今が最善!

もしかしたら、先生もそれを感じて今を狙ってくれたのかもしれない!!


先生は、敵じゃない、何とか、敵の言う事を聞くふりをしつつ私達を助けようと考えてくれている!!んだけど、ちょっとえげつない選択肢を突き付けてくるし、判断をミスったり、意図に気が付かなかったら滅びるけどね!!


「後輩!まだ女性として生きていないでしょ!人を捨てるのはどうなの?!」

「団長は!私と共に生きるって言ってくれたじゃないですか!」

「ぁ?」「・・・」

聞き捨てならないワードに反応している…呆れそうになるのを堪える。

ぁ、これ、私が知らない場所で衝突してたでしょこの二人。

今はそういうタイミングじゃないってのに!うん!無視しよう!


「もっといっぱい体を動かしたいよね!出来なかったことをいっぱいしたいよね!泳ぎたいよね!草原を走り回りたいよね!皆と一緒にもっともっと遊びに行きたかったよね!」

「そうよ!私達だって貴女と一緒に過ごしたいのよ」

「そうですよ!まだまだ遊び足りません!」

自分で語り掛けておきながら言葉にパンチが無い、説得力が薄い。

だって、これだと妖精となったとしても遊べるじゃんってなりそうだよね?ちょっと弱いかも?

現に未だに何一つ!反応が一切ない!指先一つすら言葉に反応しない!

尖ろうとしている耳の一つや二つ動いても良くない?


繭に包まれている彼女を見ると、僅かな変化に気が付いてしまう。


…ん?尖ろうとしている?妖精化が進んでるってことだよね?良くない傾向だよね!?

良くない変化に心が騒めき焦りが喉を撫でていく。

『あれは、僕だ、僕の体へと変貌しようとしている?いや違う…ユキは完全なる妖精の王へと羽化させようとしている?』

妖精の魔眼って人を妖精へと変体させる能力があるの?

『違う、妖精の魔眼にそんな力、僕は知らない。あれは…確かに僕を殺して奪った僕の魔眼だ、敵は僕たちが知らない魔眼に秘められた力を行使して、いるのだろうか?だとしたら、魔眼の力を使って僕の体を再現しようとしているのか?それとも…違う、魔力の流れとしておかしい、魔眼に魔力が集められていない?もしかしなくても僕の体を何処かで保管しユキの体と僕の体を繋げ合成しようとしている?それに近いのだと…それを裏付ける様に感じる、僕にはわかる、感じるんだ、あれは僕の体だ』

物凄い速さで言葉が駆け巡っていく。その中から気になる情報だけを抜き取り、気になる部分がある。

団長の体は女将の体とは違う意味で最も秀でている肉体、私が知る限り最も始祖様に近い天性の肉体。

その肉体が人を捨て妖精へと至り、更には、心が敵に支配されてしまった場合…どうな、るの?

考えたくない未来、絶望・破滅・終焉、それしか表現できない未来が思い描かれてしまう。

『…俺が殺すと判断した、その理由、最たる理由がそれだ…あの体にアレが宿ると終わるぞ?誰も防ぐ術…抗うことなくこの世から人が完全に消える』

絶望的な未来を予測しているからこそ、大切な妹であろうと殺す覚悟を二人は胸に秘め続けていた、その感情と覚悟に文句を言いたくなる。


私よりもしっかりと先を見据えてるじゃん!

冷静に分析できてるじゃん!だったらさー!!

もっと早めに危機的状況になる可能性に気が付いていたのならさ!!

相談してくれてもよかったんじゃないの!?


除け者にされ、相談されなかったことに激しい苛立ちが火となり腸を燃やそうと熱を与えてくる


『それに関しては僕たち二人で決めたことだから、そもそも、僕たちは』

ふーん、ふぅ~ん?いいけどさ…コンタクト取れないからさ、良いけどさ。

敵の情報を知りすぎてる私達が表立って行動を共にするのは危険だと判断したのは私。

故に、怒るに怒れない!


湧き上がる苛立ちを直ぐに鎮火してくる辺り、妖精の王様は私の事をよくわかっている。


…って、そうじゃない、今はそうじゃない!流されるな自分!!

流される?…何かを生み出し変化する、膨大な力、それを逆手にとる?

敵が生み出している変体するために必要な力の流れを此方で制御できたり、しないかな?

振ってわいた妙案が実行できるのか問いを投げかける。


ねぇ?逆に妖精の体に向かっているからこそ出来る一手ってさ、ない?あったりする?

『敵の魔力、力を奪う、または、制御下に置き遅延させるってことか?こちらに干渉してくる可能性がある、が、どうだ?やってみるよ。僕の体だ、魂が離れたとしても呼応する、パスを繋げてみるよ』

妖精王の意識が沈んでいくのを感じる。

彼が何かをする間も、私達が出来る事をする!策を幾重にも!同時並行で!!

「二人は団長に語り続けて!私はもう一度、団長の心と私を繋げてみる!!」

声を張り上げる為に意識を外に向けると自然とカットしていた声が聞こえてくる

「貴女は金色よりも黒の方が似合ってるわよ!」「お願いです!私に貴女の子供を抱かせてください!」

私達、三人が泥の中で話し合っている間もお母さんとメイドちゃんはずっと団長に語り掛けてくれていたみたい!私の声が届かない程に必死になってくれている!

私も何か団長に語り掛けようと喉と腹筋に力を込めると

『繋がった!!』

思いの外、妖精王の手腕は素晴らしかった!

『だけど、■■■!長く持たない、皆が徹底的に妨害してくる!今までこんなに言う事を聞かない時なんてなかった、僕に敵意を向けて攻撃してくる』

繋がったことに対して褒めるタイミングなんだけど、返ってきた言葉が余りにも王は下の気持ちを理解していないのだと、馬鹿げた言葉に呆れてしまう。


…そりゃそうでしょって、呆れたくなる!

殺そうとしてくる相手が攻め込んできてるんだよ!?

フレンドリーに出迎えてくれる程、妖精たちであろうと甘くないっての!


人の気持ちが理解できない妖精王に適切な助言を進言する。


下手に彼らを刺激しないで!

私達の声に団長が反応しているかだけ探って!下手な干渉はしない方が最善!

『・・・』

適切な進言に対して何もリアクションが返ってこない辺り、二人とも手が足りてないってことだろうね。


一人は指揮棒を振って敵からの介入をさせないように全力を尽くし

一人は精神を自分の体に繋げつつ、敵意むき出しで襲い掛かってくる同胞の攻撃に耐えてる


思考の外では、二人が必死に団長に話しかけ続けてくれている。


愛する旦那をサポートしようにも、何をするべきか考え憑かない

団長に語り掛けようにも、彼女が反応するワードが思い浮かばない


だとしたら、私は何をするべきか?

司令官として、知恵ありし者として…するべきことは…

決まっている!


今この瞬間、私がするべきことを定めるためには、自分の状況を一旦把握!


私の体なのに色んな場所で同時進行で色んな事が起きている。

ってことは、魔力を常に消費しているってことだよね!

どれ程の魔力を消費したのか、お母さんから受け取り続けている魔力で補え続けているのか…

今も流れ込んでくる魔力を感じてはいるが、少しずつ、魔力の流れが弱くなっている。


どれ程、持つのか…

焦りが喉を締め付け、手に汗が生み出されてしまう。


焦りと不安に押しつぶされないように、一度だけ深く息を吸い込む

肺に満たされた空気を唇を窄め、ゆっくりと吐き出し焦りと不安を思考から押し出す。


まずは、状況整理!第三者のように、思いつめないで思考をクリアに!


一人の女性を囲む様に二人が全力で語り掛け

私の中にいる二人も必死に女性を救おうと裏方とはいえ徹してくれている。

全員が力を合わせ一人の少女を救おうと全力を尽くそうとしてくれている。


ふと、この光景に覚えを感じてしまった。


どこで、だろうか?私は、この状況を知っている?

違う…私はこれに近い状況を経験していない。

知っているだけ、感じただけ、何処かで…似た雰囲気を、


見た

聞いた

肌で感じた

それを…第三者として…


そう!団長の心で!!記憶で!記録で!私は経験した!!

団長の、ううん、幼き少女が魂に刻んだ幸せの記憶…敵に加工されたとしても守り通した幸せな記録。


魂に残されていた残滓


彼女が最後の最後まで絶対に失わないと抱きしめ敵の加工からも逃れた幸せな記憶

これこそが、彼女を呼び起こすきっかけになるんじゃないの!?


何処かの…私達の世界には無い娯楽施設で起きた出来事。

遊園地と呼ばれる場所で

小さな子供達に向けて開催されている催しもの

通称、ヒーローショー


まさに、今この時がその状況だと言える。

既視感?違う…これは、ショーじゃない、でも、結果が決まっていないだけで本質は変わらない?


だとしたら、私達は…応援するだけ、そう、純粋な気持ちで悪と戦うヒーローに力を、傷つき今にも倒れそうなヒーローに心の力を!勇気を!奮起してもらう為に応援するだけ!!


こういう時のお決まりがある、団長の記憶で垣間見た記憶では、どうしてた?

叫ぶ、そう、叫ぶんだ

ヒーローは子供達の力で想いを受け止めて立ち上がる!!


舞台の上で苦しみ今にも悪に負けてしまうかもしれない窮地に立たされたヒーローを応援する



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