表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
644/694

Cadenza ⑧

ここ?は?…うん!ベッドの上に戻された!

押し寄せてくる肉体の感覚、まずは呼吸を取り戻す

「・・・っは!じょ、状況は!?」

呼吸と同時に声を出すと肉体の感覚が研ぎ澄まされて返ってくる、おかげで私の体がどういう状態なのか知ることが出来る。


全身から恐ろしい程の汗が溢れ出ている!結構無茶してたかも!?


『■■■!離れるんだ!』

声と同時に足に力を込めベッドを蹴ってバックステップの要領でベッドから飛び降りる様に離れようとすると金色の翅が大きく広がっていき周囲を吹き飛ばす

「!?」

突如発生した暴発するような力の胎動に吹き飛ばされ受け身を取ろうとしたが、柔らかいクッションのような物に包まれ痛みが無い

「姫ちゃん!大丈夫!?何処か捻ったりしていない?」

顔を上げるとお母さんが私を覗き込んでいる。

さっきの柔らかいクッションの正体がわかると同時に

「ありがとう!メイドちゃんは!?」

「います!無事です!!」

視線を向ける前に少し離れた場所から声が聞こえてくる、なら大丈夫!

声で安否を確認したので、臨戦態勢になる為に足に力を込めるが

お母さんを下敷きにしてるせいか立ち上がりにくい!


足に力を込めて立ち上がろうと藻掻いていると、下敷きになっているお母さんが先に立ち上がり、力強く握られた腕を引っ張り上げてもらい立たせてくれるので立たせてくれた人の顔を上目遣いで覗き込むと

「貴女くらい軽いわよ」

私が何か言う前に笑顔で応えてくれる。

その笑顔に何度救われたことか!

「それで…こ、の、状況、私達に何か出来ることはあるの?」

その質問に対して私が出来ることは二人に心配をかけない事くらいかな?

なんとか笑顔を保って「まかせて」小さく返事を返してみるが冷や汗を抑えることが出来ない。

汗を流しながらも団長へと視線を向ける、まだ繭のまま、まだ思考を巡らせる時間はありそう。


内側に意識を向けると

多くの歌が全力で破邪の歌を歌っている

幸いにして魔力はずっとお母さんから流し込まれている。


敵の干渉は?

『鋭くなってきている、いつ■■に干渉されてもおかしくはないぞ』

何処からパスを繋げているのか何てね、考えるまでも無い。

団長は…産まれた時から敵の手の内、ストレスとか関係なく何時でも爆弾に変えれるってこと!!


このままだと、団長言う肉体は確実に爆弾として機能する。

それを防ぐには強引なやり方なら頭の中に浮かんでいる、でも、それをするということは、地球の少女の願いを踏みじることになりかねないし、一歩間違えれば…

背筋が凍り付きそうな程、胸が張り裂けそうな程、狂った叫び声が思考を埋め尽くそうとする。

それを振り払う様に意識を切り替える。


それをしない為にも、私は知らないといけない。

彼女の望みを知らない私が、私達の望みを押し付けていいのかと躊躇いは…ある。


思い浮かんだ最悪を回避するために、まずは、前々からこの状況を想定していそうな人物に策が無いかと聞くべきだよね?


何か、策はあるの!?

『…』

返ってくるのは沈黙、その沈黙が何を意味するのか…瞬時に導き出される彼との一連の会話。

付き合いの長い彼の考えならわかる、その全てが繋がり導き出してしまった答えは


妹であろうと、人類の未来ためなら…あいつの思惑通りにさせるわけにはいかない。

殺すだけ


その結論に辿り着く…辿り着いてしまう、彼が何をしようとしていたのか。


ぁ、黙るってことはそういうことじゃん!?ダメだって!!

そりゃ、団長の中にいる子供達が必死に守ろうとするよ!!!

お兄ちゃんでしょ!妹を見捨てんなっての!!!


『・・・枠組みから外れし者を処罰する。それもまた、王の役目なんだ』

妖精の王と言えど!そんなの許されないからね!!


それをするまえに

何か、なにか、考えろ!

なにか、なにかを考えるの!!

彼女の望み何て知ったことかと処理されるまえに!!


殺させやしない!敵の思惑なんかで愛する妹を、愛する親友を!!

失ったりするもんか!!


考える!!彼女の、魂を揺さぶる方法を

魂底に有りし願いを…幾ら魂を加工されたとしても

何かしらの制約に縛られたとしても

付け入る隙は、ある!!


思い出せ、気が付け、団長の…地球から連れてこられた少女が望むものってなに?


自由に動かせなかった体

└今は、健康そのもの動かせている


友達と遊べなかった日々

└今は、私と…遊んでいたし、黒い世界の中でたくさん遊んでいた。


お母さんとお父さんと一緒に過ごしたい?

└それは、叶っていたんじゃない、かな?


っとなると、団長が望んでいたものは全て叶っている?

願いを叶えた代償として爆弾となれが定められた約定だったら?

それを反故にするのは、不可能、だって叶っちゃってるんだもん。

それを、団長が心の中で満足していたら、定めの通り物事は進む。


…だったら、約束が満たされていないと団長に思わせる!!

前提条件を覆す!!

団長が納得したら負け!

約束を、相手が取り付けた約定が契約違反をしているのだと団長に理解させる!!


【自由に動かせなかった体=自由に動かせれる体】

否!

団長の心は女性!男の人の体では叶えることが出来ない蟠りがずっと彼女にはあった!

ううん、今もある!!

それを自由と表現するのは無理がある!契約違反だ!!


【友達と遊べなかった日々=純真無垢に子供として遊ぶこと】

否!

友達は、団長的に言わせれば私だけみたいな感じだった!

幼少期は周囲の子供と遊んでいたかもしれない!でも!

彼女は成長と共に心と体にズレがあった!

彼女は男友達じゃなくて女の子の友達を欲していた!!


彼女が男性の肉体であるがために!女性の友達がいなかった!!

もっと、もっと数多くの同世代の!女性達と遊びきれていない!

もっともっと遊びたかったはずだよ!!

彼女が真に望んだ望みじゃない!そんなの約束してた内容と違う!!


【お母さんとお父さんと一緒に過ごしたい?=平穏な世界を望んだ】

否!!

お母さんは仕事が忙しくて、団長の事を少し放置しぎみだった!

故に!団長の幼少期は家ではなく外で過ごしていることが多かった!

それに!お父さんはずっと、ずっと、この街で過ごすことが多かった!!

さらには!お父さんと関係が浅いままお父さんは月の裏側へと旅立ってしまった!!


平穏で、お母さんとお父さんと一緒に何不自由することなく動き回れる体で家族仲良く手を繋いで草原を走れていない!

何一つ!彼女が望んだ未来は叶えられていない!!

そんなの彼女が捧げた代償と釣り合っていない!


団長は!!■■さんは!!

願った願いの多くを叶えていない!

妥協している内容!自分ではどうしようもないことばかり!

彼女では!抗えることができなかった!!

しょうがないよねっと諦めてしまいそうになる状況ばっかり!!


それを!そんな状況で!

願いを叶えたなんて言わせない!!


その約定!綻びありき!嘘偽り!反故にしろ!!

魂に制約が設けられているのなら、魂がそれが間違っていると魂底から否定すれば!

その約定をやぶることだって…できる!!


後は、これを団長の心に届けるだけ!

問題があるとすれば…近づけないって事かな!


今もなお、目に見えるほどの力場の嵐が渦巻いてる、それも規則的に。

独自の周期を持っているのだと言わんばかりに胎動し続ける力場の膜!

これが分厚すぎて迂闊に近寄れない!!


人から妖精へと羽化するための繭!

新しく変体するための儀式!

まるで…母体の中…


力場に…守らているような状況。

どうやって、近づけば…


目の前にある、迂闊に触れれば無事では済まないであろう渦巻く力場に足がすくんでしまう。

近寄れば、こんな体、一瞬でひしゃげて潰れる。


考える!思考を巡らせろ!考えるの!

力の膜を破る方法は…ある。真っ先に思い浮かんだ最も適した最良の手段がね。

退魔の槍、始祖様の槍を生み出す術式、それによって生み出された槍が私の髪に簪としてつけてある。


これを使えば魔力で生み出された力場なんてあっさりと貫ける


でも…力場を留めている膜だけを破るっていう細かく繊細な制御を出来る自信がない。

ぶっつけ本番すぎる、力加減を間違えば…


想像するだけで背筋が凍り付きそうになり胃が捻じれて全てを口から吐き出してしまいそうになる。

私にはこの槍を愛する人に向けて使う勇気がない…もう、愛する人を刺す、そんな感触を二度も味わいたくない、だから…最初に思い浮かんだ策以外を考える!!


力場を強引にはがす?無理…魔力量が圧倒的に足りない。

レジストする?原理を特定できない、力を形成するものが不明瞭過ぎる

妖精が起因であれば妖精を封じるための術を用いる?そんなの知らない


嗚呼、だからか、こうなる前に…最後の最後、どうしようもなければ殺すしかない。

その決断と決意を、愛する旦那は既に決めていた。

彼は、こうなってしまうことを想定していた、そして、こうなってしまったら…

きっと、始祖様の槍を使って人を捨てる前に殺すつもりだったんだ。


そんなの!許されるわけがない!

彼女は何も悪くない!今だって、新しい産声を上げるために体を変体しようと

そう、繭が母体だとすれば、こんな、胎児のような存在に、ころす、だ、なんて・・・


子供を宿せれない体だからこそ…

私にとっては禁忌に近い、子供を、赤子を殺すなんて、精神が耐えられない。


この母体のような繭さえ、干渉できれば…

干渉?母体に?ううん違う、その中にいる人に、干渉、音は?

つまるところは、胎教?・・・胎児は母体の中で音を聞くんだっけ?

そして胎児は、ゆめ、そう、胎児は夢を見る!


夢に干渉するのは音だって出来る!!

力場は音を発生させていない!

なら、音は通る!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ