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最前線  作者: TF
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Cadenza ④

『いや!足りている、歌が…楽譜が無い!!これでは俺も指揮者としてタクトを振ることが出来ない!』

見たくない表情を浮かべたお母さんの腕が此方に向けて伸ばされる!?

『気をつけろ!腕の中から魔力の流れを感じる!魔力が流れている!何かしらの術式を行使してくるぞ!!』

っげ!?レジストしようにも系統がわからないと無理だよ!分析できる!?

『今の状況で俺にそんな高等な術式なんて構築できると思うか!?せめて楽譜を寄こせ!』

しゃぁない!敵の動きからどの系統の術式を行使しようとしているのか分析!思考加速は使わないよ!魔力が足りないから!!!

『ああ!頼む!俺は結界の維持に努める!!』

唇は…動いていない!だとすると詠唱式じゃない!古来より伝わりし術式じゃない!

なら、私が考案した術式!?だとしたら脳内での構築!

魔力の流れをよ…もうとした、でも、それよりも速く伸ばされた腕が勢いよく動き始める


パァンっと乾いた音が病室に木霊し、それと同時に怒号が耳を通り抜け反響する

「とっとと目を覚ませ愚図鈍間!何回も言わさないで!姪が怯えてるわよ!それでも母なの!?」

私に向けて伸ばそうとしていた腕、魔力を乗せた一撃は私ではなく自身に向けてだった。

その動きを見て自身の頬を叩いたのが叔母様であるとすぐに理解し様子を見守る

「っったいわね!!叩かなくても良いじゃない!!!」

そしてすぐに、自分の頬を叩いた右腕に激を飛ばすように文句を飛ばし始める!!

表情も先ほどと違って何時も通り片づけをしない時に怒ってくるときのお母さん!!

「お母さん!!」

直ぐに駆け寄ろうとするともう一人の守護者が体を捻り此方に飛び掛かって

「小娘!飼い主に手を出すのはメイドとしてアウトよ!仕事を失いことになるわよ!」

こようとしたのをお母さんが右腕で首根っこを掴みベッドに抑えつけてくれる!

「お母さん!魔力!」

手を伸ばすと左手が伸ばされるので、左腕を伸ばしその腕を掴むと大量の魔力が全身に流れ込んでくる!

即座に受け取った魔力によって多くの瞳達を叩き起こし破邪の歌を合唱会の如く盛大に歌ってもらい、多くの破邪の力を生み出し右腕に込める!

ベッドの上で抑えつけられているメイドちゃん目掛けて体を捻り裏拳を叩きこむ様に破邪の力が込められた拳をメイドちゃんの頭に触れると、ガツっと痛そうな音と同時に

「ふみゃ!?」

変な声がメイドちゃんの口から零れて聞こえてくる。

ってことは、もう、大丈夫かな!?確認は大事!

「メイドちゃん!」

「はい!?お仕事ですか!?すみません寝てました!」

ベッドで抑えつけられていても、動じることなく返事が返ってくる。背面打ちみたいな感じで接触したからメイドちゃんを真っすぐ見ることが出来ない、視界の端っこに見えるだけ、でも、たぶん大丈夫そう!

「…って、あれ?なんで私はNo2に首根っこを掴まれて抑え込まれているんですか?痛いんですけど?離していただけますか?」

起きてすぐの状況判断能力!気持ちズレている気がするけれど、妖精の魔眼から解放された、かな!!

「二人とも下がって!私を団長の前へ!」

その一言でメイドちゃんの首根っこを掴んでいたお母さんの手が離され抑えつけられていたメイドちゃんがベッドを蹴りその勢いのまま飛び込み前転を行い、ベッドから飛び降り、それを見送っていると私の腕が引っ張られてたのでその力に合わせる様にジャンプするとお母さんが私とメイドちゃんがすれ違う様にメイドちゃんが退いてくれたスペースに引き上げてくれる!

引き上げて直ぐに私を団長の正面へと向けてくれるように舞踏会のように回してくれる!

繋がれた左手は握られたままで、私の後ろに移動してくれる!おかげで金色の人が眼前に見える!


そんな芸当をしながらも!魔力を渡し続けてくれている!

全身に魔力が流れてくる!これならいけそう?


『ああ!彼女に触れてくれ!』「って!?どういう状況ですかぁ!?お兄さんはもういらっしゃらないのですよね!?」「団長はどうなっているの!?」

色んな声が同時に響き渡る、私じゃなかったら聞き取れなかったからね!


冷静になった二人からのごもっともな質問!そうなるよね!!説明してあげたいけどあとあと!!

■■■くんもありがとう!接触すればいいんだね!


「説明は後でするね!」「お兄さんって誰!?ぇ?どういうこと!?」

真剣な場面だってのに、お母さんの声に気が逸れちゃう!

メイドちゃんの言葉に即座に反応してるお母さんにも魂の同調で伝えるべきだったと後悔する。

叔母様がいなければ容赦なく流し込んだんだけどね。

混乱する声はひとまず置いといて!!


お行儀が悪いけれど!医療の父からお説教されたとしても!そんな気遣い出来る余裕も無し!

ベッドの上に立たせてもらうね!


魔力を右手に集中させて!団長へ伸ばす!!


金色の繭を形成する様に団長の周囲を漂う光の粒子に触れようが気にすることなく腕を伸ばし

右手が団長に触れた瞬間

愛する旦那が彼女の意識へと繋げてくれる


繋がった感覚に魔力を乗せる。

魔力の帯の中に自分の意識を伸ばし私という存在を彼女の深くへと流し込まれていく。

こんな芸当、他の誰かにできやしない、これができるのも…

浸透水式の影響、私と彼女は…たぶん…


小さな仮説、その答えに辿り着くことは無いのだと小さな予感を感じていると底が見えてくる。

金色の繭の中心、更により深く…奥底へ辿り着いた刹那

『ユキ!!』

もう聞こえることが無いと思っていた彼女の名前が魂底に響き渡る。

その声に反応する様に小さな声が怒りをあらわにする

「ちがうよ、この子はユキじゃない」

暗闇の中から複数の子供達が姿を見せてくれる。

ユキさんの中にはまだいっぱい友達が居てくれたんだね。


姿を見せてくれた子供達は敵意を向け大きく腕を広げ先へと進ませないようにしている。

敵意むき出しの子供達と目線を合わせるために膝を曲げ

「それじゃ、奥の子は誰なの?知っていたら教えて欲しいな」

優しく敵意が無いと伝える

「この子は…僕達も名前を知らない、僕達も名前を知りたいんだけど、彼女は名前が思い出せないんだ」

困り顔で顔を背けられてしまう、気恥ずかしそうな表情、彼らからは、悪意は感じない

彼らは彼らなりに必死にユキさんを守ろうとしているのだろう。


だとしたら彼らは彼らの中にある善意で動いていることになる。

そんな子供達に無理強いなんて出来るわけがない


守るために腕を広げ、自分が危険になろうとも勇気を振り絞る為に手を握りしめている。

だけど、大人が苦手なのか俯いてしまっている。

きっと此方と視線を合わせると言いくるめられてしまうのが怖いのかもしれない。


そんな勇気ある少年の広げられた腕にふれ、優しく諭すように此方に向けさせ握りこまれた拳を両手で包み込む

「思い出せないのなら一緒に探しに行こうよ」

優しく問いかけて見るが、目線を合わせてくれない。

意志が揺るがないのだと示す様に私の手のひらの中で拳が力強く握りしめられたまま。

「それは…駄目なんだ、僕たちが彼女に触れると…怖い奴が僕たちを喰べる…襲ってくるんだ」

たべる?おそって?まだ、敵とユキさんは繋がっているって考えるべきか

…敵がどんな邪法を用いているのかわからない以上、私も気をつけないといけない。

『サクラ!思っていた以上に時間がない!結界をこじ開けようと、パスをより強く繋げようとする何かがいる!ユキを起こせそうか?無理なら』

どうやって破邪の結界をこじ開けようとしているのか、敵が持っている術式は厄介だなぁ…本当に腹が立つ。

今は…そんなことよりも。


瞬時に内なる炎を諫め精神を凪へと導く

清浄なる穏やかな心を取り戻し意志をこめ少年の後ろに居るであろう人物を見据える


ユキさんを起こさないと!

「大丈夫!何とかする!もう少しだけ時間を頂戴!!」

『わかった!出来る限りやってみるが…この先の事を考えて魔力が一定量減ったら強引にでも…』

まったく、何時だって愛する旦那は妹に手厳しいね。

「…あの人は、ユキを守ろうとしなかった、だから僕たちが残ったんだ」

鋭い殺気と共に聞こえてきた言葉、耳に残したくない言葉…


まもろうとしなかった?ユウキくんが?そんなのありえないよ。


「ううん、守らなかったんだ!あいつは…ユキと復讐を天秤にかけた!あいつは!僕達と違う!仲間じゃない!!」

力強く否定するその言葉から彼らの心が伝わってくる。

激しい感情、彼らが何を想うのか伝わってくる、大切な友達の命を守ろうとしたんだね。


何となく、わかってしまった。彼らが怒る理由、その原因の一端は私にある。

たぶん、ユキさんは私を助けるために脳の奥深くに進まなければいけなかった。

その為には膨大な魔力が必要だった…


膨大な魔力がその瞬間に必要だとしても魔力を手に入れる方法はない。

魔力は、臓器から日々、生み出される、多少、体調や食事によって生産量は変化する。

それでも、日々、生きる為に生み出され全身を駆け巡っている。


それを強引にその瞬間に魔力を体内で生み出すことは不可能


不可能だけど、不可能を可能にする奇跡を私は知っている。


魔力を強引に生み出す術を知っている。

奇跡を起こすには代償が必要。


魔力が無いのなら…臓器を…魂を…自身を捧げればいい。

己という存在を魔力へと昇華すればいい


膨大な魔力、人の祈りという無限の魔力に繋がっていたあの頃の私と違って

普通の人では、生み出せない魔力の質量、それを叶えるためにはどうすればいいのか?


答えは一つ…古くから伝えられている奇跡の技、究極の一撃


死の一撃


戦士として肉体を鍛え上げ、人として心を鍛えぬいた、鍛錬を重ねた者だけが辿り着く極地

自分の全てを捧げても良い、それで守れるものが有るのなら…

その心境に辿り着いた者だけが扱うことが許される


始祖様が残した奇跡の術


それをもって…

ユキさんは、私を助けるために命を使おうとした、そして…

ユウキくんはそれを止めなかった。


それを子供達は間近で見ていた。

止めるべき大人が止めなかった、仲間が命を捨てるという選択肢を諫めなかった。

つまり…見捨てたと感じたのだろう。



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