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最前線  作者: TF
635/694

おまけ 姦しい奥様達 ⑦

それでも、筆まめな戦士が殆どいないのが問題なのよね~…

私が知る限りで聞いた話だと、騎士の部を取りまとめてくれている彼、ティーチャーがね、報告書を作成するために戦士達から話を聞いて代筆してくれていたりしてくれているのよね。

全員が全員ってわけじゃないけれど、多くの戦士達がティーチャーを頼っているって感じなのよね~。


そして、そのティーチャーの代わりを務める人が居ないから、彼が戦士の部へと移籍するのをずっと躊躇っている要因だっていうのを聞いたことがあるわね。

それなのに!戦士を取りまとめる代表である、あの馬鹿はその辺りを見ないふりしてたのよね~。

自身の後任はティーチャーが適任である、なんてほざいといてね!

あの馬鹿は自分勝手すぎるのよ。


今は…どうなのかしらね?ティーチャーはどの部署にいるのかしら?

確か戦士の部に移籍するってのは聞いたことがあるけれど、移籍したのかしら?

お給金の部分で騎士の部と戦士の部じゃそこそこ差があるのよね。

昔だと、周りの話を聞く限り彼は前へ出るのを躊躇っているって聞いていたのよね。

そんな彼がカジカの後を継ぐって決心したのかしら?


最近、っというか、昔から彼との接点がほぼないに等しいから現状をよく知らないのよね。

っとなれば、彼に聞くよりも、彼の愛する奥様の、お母さんに聞くのが早いかしら?

そうね、忙しくて時間を作っていなかったわね、今度、フラさんに焼き菓子を持ってスピカと一緒に話を聞きに行ってもいいかもしれないわね、時間があれば、ね。


戦士達のエロに貪欲な姿勢に呆れて沈黙してしまう。

僅か数秒、天井から水滴が1滴2滴、落ちる頃合いになると

「でも、いいですよね、こういう時間」

「そうね」

乙女ちゃんが場の雰囲気を戻す為に口を開いてくれる。

こういう気遣いが出来るようになったのは良い事ね、私が切り出さなくても良いのは楽でいいわ。

「全部がよ、終わったら、家族全員でよ、どっか遊びにいきたいねぇ」

「そうね…」「はい…」

三人全員が薄っすらと感じている…この戦いが、死の大地でおける最後の戦いになるのだと

永遠とも思われる永き戦いに終止符を打つのは、私達の代。


この場に愛する騎士様が居ないのが心の底から悔やまれる。


この大陸に根付く怨敵との因果を全て断ち切り滅ぼす。

今回は中途半端に終わることは無い、何方かが滅びるまで…


自然と手に力が入り拳を握りしめてしまう。


スピカに平穏な時代を、愛する息子が救世主という運命を定められないように、人類の全てを背負わせないように…母として、この街の幹部として、戦い抜く。


視界の前に大きな拳と小さくもマメだらけの拳が力強く決意が込められた波動を解き放っている。

両手を上げ、拳を当て、決意を繋げる。

「人類の未来なんて、大層なことは言わないわ」

「・・・」「ああ」

「私達は、何?戦士?医者?騎士?違うわ、母よ」

「・・・」「ああ」

「母として、愛する子供達を守る、愛する家族を守る!それ以上の事って必要かしら?」

「いえ!」「ああ!守るさぁね!!」

「ええ!守りましょう!母として!子供達に平穏を!」

「「応さ!!」」


懐かしい思い出話に花を咲かせた麗しき女人達の何気ない会話

最後は勇ましく戦う母としての閉め言葉で終わりとなった


各々が大切にする人たちは違えど

願う心はただ一つ

愛する家族の為

愛した人の為


私達とは違うより良き未来、平穏で豊かな未来を愛する我が子へと繋げる

愛する子供達に戦いの無い平穏な人生を歩んでもらう為に




母としての決意を滾るほどに漲らせる。




「っぷは」

冷蔵庫から取り出したキンキンに冷えた新鮮なミルク、口に含めば濃厚な風味に味、喉を通る重厚な重みが胃に流し込まれていき火照った体に染み渡っていく。


お風呂上がりに飲む、冷えたミルクほど美味しいモノは無いわね

はぁ~っと幸せを感じながら下着姿で仁王立ちしていると

「牛乳もいいけど、お酒が飲みたいねぇ」

冷蔵庫から取り出した真っ白な瓶がゴッゴッゴっと大きな音を出しながら透明になっていく、私だと何度も何度も口をつけないと飲み切れないのに女将だと一瞬ね、気が付けば二本目を開けて飲み干している。

「呑んだらいいじゃない、明日も非番でしょう?」

瓶を空っぽにしてから髪の毛を乾かす為に温風とただの風が出る魔道具や、鏡と櫛が用意されている椅子に座る

「だけどよぉ、呑むと寝ちまうじゃねぇか」

彼女専用の大きな椅子を引っ張り出して同じように髪の毛を乾かし始める

「泥のように寝てみたら?夢と言えどお酒の影響で忘れることが出来るかもしれないわよ?」

「試してみるのも一興ってわけかい?」

「愛する旦那が傍に居てもダメなの?」

櫛を流し続ける、髪の毛が長いと大変なのよね。

「うー、旦那かぁ…」

湿度が伴った音…頬を叩く音が聞こえる、あら?珍しく乳液を塗っているのかしら?

「恥もへったくれも無いでしょうに、弱みを見せるからこそ夫婦でしょう?愛してもらってきたら?」

「っば!、っか、やろぉ…」

熱いため息が風を発生させる魔道具を突き抜けて届く。

「…おめぇの助言にしたがってやらぁ、お医者様の言うことは、ぜってぇだから、な」

そういって立ち上がって自分専用の大きな椅子を何時もの場所に持って行く、その姿を見るわけにはいかないわね、きっと、うら若き乙女のように頬を染めているでしょうからね。


後ろで服を着こんでいく音を聞きながら温風ではなく普通の風で髪の毛を乾かし続けていると

「お隣失礼します」

乙女ちゃんもお風呂から出てきて髪の毛を乾かし始める

「そういえば、貴女も髪の毛、長いわよね」

「はい、その…幼き頃は聖女様に憧れていました。母としての間はもっと長かったんです」

あら?そうなのね…戦士として生きる為に昔みたいにある程度、短くしてきたってことかしら?


髪の毛がどの程度渇いているのか手で触って確かめる。

毛先だけじゃなく根元もしっかりと乾いているのを確認すると、しっかりと乾いている。

なら、先輩として行動しましょう。

「ほら、貸しなさい乾かしてあげるわよ」

椅子から立ちあがり風を生み出す魔道具を受け取り、温風から普通の風へと切り替え乙女ちゃんの髪に風を当てる

「温風じゃなくてもいいのですか?」

「あら?貴女の家にこの魔道具は無いのかしら?」

貴族の一族にしては質素な暮らしをしているのかしら?

このどらいやーって名前の魔道具は平民の方達にも普及しているはずよ、ね?

「あ、あります、旦那が姫様に頼んでくれていて、その、申し訳ない程に、我が家は最新の魔道具に溢れています」

職権乱用ってわけではないけれど、カジカのやつ、姫ちゃんに頼んでいたのね。

それとも、滅多に帰らないから、そうやって乙女ちゃんのご機嫌を取っていたって事かしら?

外で遊び過ぎなのよ、あの馬鹿は…

「そう、なら、良い機会ね、姫ちゃんが言うにはね、温風で乾かし過ぎると髪の毛の中にある水分も飛ばしてしまうから良くないらしいわ、適度に乾かした後は温風から普通の風にして髪の毛を乾かすのが適切みたいよ、私もそのやり方に変えてから髪質が良くなったのよ」

「へぇ!流石です!美の伝道師様!」

「そのフレーズ…本当に巷ではそういうの?」

美容に関係する本を書いては出版すると一部の貴族に飛ぶように売れている。

気が付けば一部の貴族達から私の事を美の伝道師っと呼ぶようになっている、らしいのよね。

「一部の人達は心酔する様に愛読者がいらっしゃいますよ」

「っふ、迂闊に名を名乗れないわね」

「ふふ、ですね」

貴族の美に関する営業もどちらかと言えば姫ちゃんのお仕事だったりするのにね?

…もしかしなくてもあの子が一枚噛んでそうね

…美の伝道師御用達の魔道具なんて触れ文句で…ありえそうねぇ。


流れる様に決め細やかな髪の毛を櫛で流しつつ乾かしていく。

日々、手入れを怠らなかったと伝わってくる、とても綺麗な髪。


「はい、これでお終いよ」

「ありがとうございます」

魔道具を置いて、先ほどまで髪を乾かしていた椅子に座る。

目の前にあるのは貴族御用達の美容液。

とても高価な美容液が誰でも使っても良いなんてね、豪華よね。

これをここに置き始めた事の発端は、姫ちゃんからではないんだけどね、貴族から出てきた娘達が姫ちゃんが販売している美容液の事を知ってはいたけれど、易々と手に入らない使ってみたいっていう熱い要望によってねテスターとして報告することを条件で用意してくれたのよね。

なのでこの場にある美容敵は、姫ちゃんが貴族の方達に卸している高級美容セット。

その一つを手に取り肌に叩く様に塗り込んでいく。


湿った叩く音が更衣室に響かせ続けていると

「あの…ご相談したいことが」

待ちに待った声、そんな予感はしていたわよ。

お風呂から出ようとしたら乙女ちゃんだけ、もう少しだけお湯に浸かりますといって大浴場に一人残った。

その意図が読めない私じゃなわ、女将とタイミングをずらそうとしたっということは、女将のやつに聞かれたくない相談が有るのではないかってね。

予感に近い予想は正解だったみたいね、さぁ、女将に続いて何が出てくるのか、なんてね、これまた予想は出来ている…


「悩みなんてわかってるわよ、愛する旦那のことでしょう?」

「!?」

体が跳ね毛先が一瞬だけ浮いたわね、お見通しよ。視線を向けると驚いた様子で眼を見開いている。

ふふ、驚くことなんてないわよ、だって、貴女が相談する内容なんて、あの馬鹿絡み以外で無かったでしょう?

そして…女将の相談、あの馬鹿も同じ状況ってことでしょう?

「内容も当ててごらんに入れましょうか?」

「そんな、先輩と言えど」「戦士長に殺される夢を見た」

言葉が詰まった影響なのか乙女ちゃんの方から喉の奥がキュっと閉まる音が聞こえてきた。

未だに驚いた影響で動くことが出来ず乳液片手に思考が停止し此方を見つめて止まっている。


思考が停止した乙女ちゃんは綺麗な人形のように見えてしまった。



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