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最前線  作者: TF
631/694

おまけ 姦しい奥様達 ③

こいつの目は節穴かよっと瞬時に冷静さを欠き

「違うわよ!!」

「違うのかい!?」

つい、声を荒げてしまい、荒げた声に女将が驚いてしまった

まったく、スピカの綺麗な髪の毛を見ていないのかしら?

「あの子の髪の色を見てわかるでしょう!」

「ぇ、あ、っと、色?…黒に近かったような?」

あの子の美しい髪色を覚えていないなんてね!もう抱かせてあげないわよ?

「宰相のやつは白に近い金色でしょう?黒じゃないわ、それにこの大陸で黒髪って珍しいじゃない」

「はい、黒髪は始祖様の血を濃く受け継いだものとして語り継がれています、それだけで人としての価値があり貴族から羨望の眼差しを受けます」

「そうなのかい!?あたいの村、黒髪ばっかりさぁね…あたいは茶色というか、赤みかかってるけど」

「瞳はグリーンのような青いような宝石のような瞳ですよね、王都でも粉砕さんと同じ瞳の人は見たことが無いです」

そう言われてみれば、そうよね、私は色がよく見えていなかったら特に気にも留めていなかったけれど、こうやってある程度、色を識別できるようになったからこそ、そういうのに気が付かないといけないのよね。まったくもって気にも留めていなかったわね。些細な変化に気が付けないようじゃダメね。

なら、その変化によって気が付くことがあるわね

「女将の故郷は、私達の国というよりも他の大陸の人達と近いのかもしれないわね」

私達が知らないだけで他の大陸には女将のように大きな体の肉体を持っている一族が居るのかもしれないわね、女将の村を開墾したのはこの大陸の人ではなく他の大陸の人って言われたら納得しちゃうわね。

「かもしれねぇなぁ、王都と交流するようになったのも爺ちゃんの爺ちゃんくらいだって言ってた気がするさぁね、あれ?爺ちゃんの爺ちゃんの爺ちゃんの爺ちゃんだっけか?忘れちまったねぇ」

思っていたよりも閉鎖的な村だったのかしら?それとも偏狭すぎる場所故に交流が行き届かなかったのかもしれないわね。

「先輩の子供…」

小さな呟きに反応しない私じゃないわよ?

「ぁ、今度、紹介するわね、抱っこしてくれるかしら?」

「もちろんです!」

嬉しそうな声、こんな私を真正面から祝福してくれるなんてね、ほんと、良い子ね。どこぞの小娘も見習ってほしいわね。

「ってことは、あれかい?紙の色が黒色の人が父ちゃんってことかい?…くろ、かみ?あたいの、きおくのなかで、黒髪っていえば、あんたまさか!」

あれ?私って、女将にスピカの父親が誰か教えてなかったかしら?

「まさか、おめぇ!戦士長の親父さんと!」

飛躍し過ぎた答えに飛び跳ねそうになったじゃないの!!やめてよ!!

「飛躍し過ぎよ!!違うわよ!!手籠めにされてないわよ!あの人って厭らしい目で何度も幾度も!注意しても!胸やお尻を見てくるけれど!手を出そうとしないわよ!」

「・・・」

あ、乙女ちゃんが絶句してそう、乙女ちゃんの方を見るのが怖いわね。

「っていうか、貴女に伝えなかったかしら?スピカの父親が誰なのか」

「…すまねぇ、最近、あたいの頭の中がおかしいんだよ、眠れてないってのもあるんだけどよぉ、その、ほら?相談しただろぉ?」

そうだった、相談されていたわね。

姫ちゃんの事でいっぱいいっぱいで忘れていたわ。

「相談?父親?」

情報が一斉に押し寄せて乙女ちゃんが困惑した声を出してるわね。

「驚かないで欲しいのだけど、その前にちょっとまってね」

上半身を起こして周囲を見回してみても誰も居ない。

更衣室にも人の気配を感じない。

「誰も居ないわね…」

ゆっくりと起こした上半身を元の位置に戻し天井を見つめ声を絞ることなく

ありのままを伝える

「スピカの父親は…敬愛する偉大なりし戦士長…私の愛する騎士様、シヨウさんよ」

「・・・!?」「なるほど、確かに戦士長の黒髪だったさぁね…ん?」

「どうやって、思うでしょう?実はね、」


掻い摘んで経緯を伝えると、二人からは驚いた声が聞こえてくる。


「軽蔑した?」

「いえ、その」「念願が叶って良かったじゃねぇかどんなことであれ、子供が産まれるってのはいいことじゃねぇか!」

乙女ちゃんが言い淀むのは当然、この国の教えをしっかりと学び教会の教えにも通じる貴族であれば当たり前の反応よ。

そして、この国とは遠い場所にある私達とは教えが違う人物は祝福を送ってくれる。


ってことは、もしかしなくても?

「貴女って、旦那から聞かされていないの?」

「聞かされていない?…あたいは、ある噂を聞いたことがあるさぁね」

隣から大きな殺気が膨れ上がっているのを感じるのはどうして?

夫婦間での隠し事ってここまでこじれるものなの?

貴女を巻き込まないように配慮したつもりなのよ?

「あたいの知らない場所で、一時は金髪で今は、白髪の美女と旦那が密会してるってなぁ…それも、あたいが結ばれる前から…それに気が付かないあたいじゃない、それとなく旦那にも聞いてみたけれど、はぐらされてきたさぁねぇ…事と次第によっちゃぁ」

「あら、その口ぶりだと、彼は律儀に約束を守り続けてくれたのね、安心しなさい、彼と会っていたのは彼と共同研究をしていたからよ色恋とかとは無縁よ」

「け!…んきゅう?」

けの後から一気に殺気がしぼんだわね。

「そーよ、この大陸じゃ禁忌とされている命に係わる研究よ」

「・・・」

乙女ちゃんの反応がない辺り、古い考えの人達からすれば禁忌でしょうね。

「畜産の王、という渾名がある彼がどうしてそう呼ばれるのか知ってる?」

「知ってるも何も、牛や豚、鶏を多く育ててるからさぁね?」

牛や豚、鶏なら王都の一部のエリアでも育てているわよ。それだけで畜産の王なんて大層な名前で呼ばれたりしないわ。

「本来ね、牛や豚って出生率って高くないのよ?そんな毎回安全に産まれるってことなんて無いの」

「・・・そうなのかい?」

「そうなのよ、私達の…この大陸では動物の数が少ないの、野生で生きている動物なんて稀も稀なのよね。それでも私達は彼らの命を頂かないといけないのよ、その為にもどうにかして増やしていかないといけなかった。お肉何てね、私の幼い頃にお腹いっぱい食べた記憶なんて無いわよ?」

「はい、私も、特別な日でしか、それも主に鳥の肉でした」

「でもよぉ、おかしかねぇか?この街で肉が出てくる時があったじゃねぇか、動物が多いんじゃないかって、それにあたいの村でも時折、猪とか鹿とか熊とかは見たことあんぞ?」

「貴女の村の事情は置いといて、女将が言う肉が出てくるときっていうのは、その頃は、たぶんだけど、技術が確立してきたときじゃないかしら?たぶんだけど、雄の精子を凍結保存できるようになってからじゃないかしら?」

「・・・」

かなり昔の記憶だから、私もどの辺りなのかもう覚えていないのよね。

乙女ちゃんも当時の食事事情を思い出そうとしているのかしら?静かね。

「ごめんなさい、私は食事に重きを置いていなかったので、この街での食事内容を覚えていないです」

思い出そうとしてくれていたのね、謝ることじゃないわ。

それはね、仕方が無い事よ。

当時の私達は生きるのが精いっぱいだったものね。

乙女ちゃんの周囲の取り巻く環境を考えるとね?想い人がすぐ傍にいて、食事内容なんて覚えている余裕なんて無いでしょうに。

「今こうやって豊かな食事が出来るのも、彼と私の研究結果の成果なのよ、凍結保存した精子と、凍結保存した卵子を組み合わせて健康な母体に子供を産ませる技術を確立したのよ、これが何を意味するのかわかるかしら?」

「子供が産まれるのならいいこと、じゃねぇか?」

貴女はそう思うでしょうね。でも、それは対象が動物だと判断しているからでしょう?でも、一部の人達からすれば。

「・・・命を人の手で操る行為は」

「そう、教会に属している、ある人物が唐突に教えとして語ったことがあるタブーの一つね、命とは自然から産まれるもの、それに干渉するような行為は神に仇なす行為、神とは聖女をこの大地に産み落とした、されど、聖女は示し過ぎた己の使命をはきちがえた、故に、命を弄んだ罪を罰するために獣の軍勢が押し寄せ我らに試練を与えたもうた。これ以上、人が命を弄ぶような事をしてはいけない、度を超えればもっと恐ろしい裁きが我々に下される…」

「・・・」「なんだいそりゃぁ…」

二人の反応は予想通りね、女将からすれば素っ頓狂な狂人のセリフにしか感じ取れないわよね。

内なるもう一人の私に問いかける、先ほどの演説は間違っていなかったかしらと?…特に反論が返ってこないあたり、概ね正解ってことね?学生の頃に習った内容なので正直ちょっとだけ、覚えている自信が無かったのよね。

「そういう教えを問うた者がいたのよ、獣軍勢が王都に攻めてきた滅ぼされそうになったのは聖女がやりすぎたのだと、でもね、教会と言えど一枚岩じゃないのよ、それを反論するかのように神が始祖様を使わせたと、反論した結果、教会では亀裂が走って様々な派閥が産まれたのよね。後に色々と教会でも問題が起きてしまった、だからね、この問題はねとってもデリケートな問題なのよ」

「あ~、ん?よくわかんねぇよ何がいいてぇんだ?」

「ここ迄ならそうなるわよね、真っすぐにわかりやすく教えてあげるわよ。教会の教えを自分達なりに教えを汲んだ貴族の一派が、出生すら人の手で決めるのは如何なものかと王族に矛先を向けたのよ」

「・・・」

「その結果は散々なモノだと伝えられているわ、わかりやすく言えば様々な場所で多くの死者が出たわね…故に私達の研究内容は過去に起きた問題のせいでね迂闊に公に出来なかったのよ」

「なんで、その貴族達は王様に喧嘩売ったんだい?教会じゃねぇじゃねぇか、そんなの王様からしたらお門違いじゃねぇか?」

こいつは!学がないのも!…そうね、そういう人だったわね。


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