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最前線  作者: TF
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好奇心と勘違い ②

でもね、見られても良いって彼女は思っていても、こんな細工が施されているのであれば、この先に何かが、あるのではないかって、期待するのが当然じゃない。


これ見よがしにクローゼットの奥から先へ通じるように壁が開き道へと変わっている。

先ほどの窪みはこの先へ通じる為の鍵ってところかしらね!


どうしても好奇心が湧き上がってしまい年甲斐も無くテンションが上がり続け、頬に、全身に熱が宿っていき昂っているのを抑えきれなくなってしまう。


あからさまに隠してある何か!あの姫ちゃんでしょ?何を隠しているのかしら?

家族として親として、娘が隠している物をむやみやたらと見てはいけない、私だってお母様に私が隠している騎士様のコレクションを見られたら憤慨する。


でも、好奇心が抑えられない!だって、ここには!ここにはずっと気になっていたヒントがあるのだと恋の伝道師としての直感が囁くのよ!


そう!もしかしたら、あの子がこっそりと想いを寄せている人物の肖像画とか!!

彼女が密かに想いを寄せている人物のヒントとか出てこないかしら!?


ほら?昔ね、あの子がある夜に取り乱したときがあったでしょう?

その時にある言葉を漏らしていたのよ、好きな人が死んだとね!

意味深な言葉を漏らしたことがあるのよ!

それが何を意味するのか?決まってるでしょう?


あの子は何処かで好きな人が出来たっと言う事よ!!

それも、錯乱する程に恋い焦がれ愛し合う程の熱量!


気になるでしょう?だって、あの子の口から聞かされる故意に関係しそうな話と言えば、色気のない政略財産狙いばっかりの話しなのよ、結末はいつも決まって、心砕いてやったっで終わりを迎える色気のない話ばかりなのよ!


今までずっと!離したがり屋のあの子が!話してこないのよ!周りからもそういった話が無いのよ!誰もあの子の浮いた話を知らない!その、誰かを好きになった気になったっという色気のある話を一度たりとも聞いてないのよ!


そんな、あの子が、何処かの未来で誰かを好きになった!

あの子が好きになった人を諦めるわけがない!

あの子の性格を考えてごらんなさい!!

あの子の影響で死ぬのであれば遠ざけるか手元に置く!なのに、そういった話や様子が無かった!!


つまるところ、私の直感として、既に手元に置いてあるのだとしたらっと考えたことはあるわよ?

そうなると、ね、相手は、彼女なのかなっと、一時はあの子は花が好きな好色家かと思ったときもあったのよね。


けれど!違ったのよね…


遠巻きで見守り続けていて、もしや、団長の事が好きなのではって疑ったこともあったわ!

真なのかどうか見極めるために、遠くから様子を見ていたけれど、あれはどうみても友愛だったわね、もしくは…姉妹愛に近いわね。


恋の字なんて一欠けらも無かったわね。


それにね、姫ちゃんとそういった話をすると、ちゃんと男性が好きって言うのはわかったのよ。

だけれど、あの子の好み…


美しい人限定っぽいのね、めちゃくちゃ、とんでもなく面食いなのよあの子…

あの子の眼鏡にかなう程の美貌の持ち主を私は知らないのよね…王族を除いて。


それを裏付けするかのように、あの子が大切にしているのは美術品の類!

そしてフリルが施された職人でも手のかかる服を好むのよ!!

あの子は昔っから!服に対する執着が強い!


その宝物が詰まっているこのクローゼットに隠し細工をするってことは!

自分にとって大切なモノを保管する場所!ってことでしょ!?


たかまるわぁ、期待が

たかぶるわぁ、相手がどれほど美しい人物なのか


あの子が肖像画や写真を残さないわけがないっという、淡い希望を込めて細工によって現れた奥へと通じる道へと一歩踏み込んでしまう。


たったの一歩目だというのに、自然とにやけてしまう頬をそのままに、開かれた道を通って奥へと進むと私に反応してなのか、道が開かれたら自動で灯りが灯るようになっていたのか、灯りが照らされる。


灯りによって開かれた空間、小さな小部屋が現れ、灯りに照らされた物達を見て

「…思っていたのと違うわね」

期待外れだとわかり、がっかりしてしまう。


昂る高揚感が沈静化されるのを感じ小さな溜息をもらしてしまう。


まず一番最初に目に留まったのが、中央にある二つの武器と、すぐ隣に見覚えのない何か。

中央にある武器、それはそれはとても常人では扱うことが出来ない、大きく黒い剣、女将用の武器かしら?

その隣には…何かしらこれ?見たことのないモノが置かれているわね?白い刃のような物がいっぱいあるわね、何かの、戦闘用の道具かしら?


中央に武器が置いてあるってことは、そうよね。

この部屋は闘う為に備えて用意した部屋なのかもしれない。

ってことは、あの子の武器庫ってことかしら?


だとしたら、私が望んでいるような浮いた物は無さそうね。

壁を見ても私が望んだものが吊るされていない。


肖像画を期待していた壁に掛けられているのが完全にあの子が開発していた戦闘服。


壁に二つほど、吊るされている黒い服、サイズ的にもあの子と、あと一つは誰を想定しているのか不明だけど、あの子のサイズと比べると大きめのサイズ…ぇ?少し青みがかかってるって?

近くによって目を凝らしてみるとじゃっかん色味が伝わってくる。


そう、ね、言われてみれば、青みがかってるような気がするわね、良いわね、貴女は色が見えて。

普段からある程度、色は見えているでしょ?認識できていないのは貴女だから?それに、ある日、姪が施した施術によって色がある程度見えるようになったでしょ?

私よりも私の事を知っている彼女の言う通り、忘れっぽい私とは違って彼女はよく覚えている。


そう、なのよね。彼女の言う様に、私の目はある程度の色を見ることが出来るようになったのよね、昔は、騎士様だけが私の世界に色をもたらしてくれた。

でも、今は、若干、騎士様の時と同程度ではないにしろ、色を見ようと思えば見える。

施された施術、あれって確か、団長の魔眼、えっと、人に好かれやすくなる魔眼っていったかしら?それに影響されないレジストする為、って、やつよね?

素材が入手しにくい素材だから、私にしか、施していない、のよね?

後で何を使ったのか確認してみたらフェアリーダストをベースにって言ってたわね。


別にね、そんな好かれやすくなる魔眼なんて無くても、みんな、彼女に心惹かれるわよ。

私だって例外じゃないわ、魔眼なんて無くても、団長を好きになったわよ。

あの子は純粋で優しくて…ところどころ天然で可愛らしくて…誰もが驚く美貌の持ち主で、私の愛する人のむす…め!だものね!


時折、ほんの僅かに、団長から愛する騎士様の面影がチラつくせいで、胸がときめく瞬間が無かったなんて言わないわよ?


一時、私の心を悩ませた愛する娘の事はひとまず置いといて、この部屋には、他に何かあるのかしら?

「後は、棚が多いわね…流石に引き出しの中を見るのは気が引けるわね、でも、写真の一つや二つ、出てきそうな気がするのよね~…ああ~開けたいわ~~、想い人の顔を見たいわねー!」

葛藤するかのように小さな部屋の中をウロウロと動いて、他に何が置かれているのか見回してみるけれど、色恋に関するものは何も見つけることが出来ない。


でも!引き出しの中にはきっと!!

でも!それはいけない!!

引き出しを開けるって言う行為は一線を越えてるのよ!

家族と言えど!そこは、まも、ろう…かしら!!


見ればいいのにっという呆れた声にそそのかれそうですけどぉ!その一線を超えるのは、私がされると嫌だから出来ないのよね!

はぁ、っと溜息の圧力によって湧き上がる好奇心を抑えつけてはいる、いるけれども溢れ出ようとしてくる、抑えきれない衝動を抑え込むために何かきっかけが欲しくつい視線を中央に向け縋る様に近づいていく、手に触れると大きな剣が冷静になるんだと語り掛けてくるような気がしてくる。

不思議と、冷静になっていく…

落ち着いて大きな剣を眺めていると思考が冷静へと到達し、冷静に分析を開始してしまう。

この武器が誰の為に用意されたのかと


「こんな大きな剣なんて、誰が扱えれるのかしら?」

試しに柄を握り持ち上げようとして見るが腰が”やめな!”っと言わんばかりに嫌な感覚として悲鳴を上げるので持ち上げるのを止める。

私では難しくても、卓越した技術、筋力があれば振るうことは出来る…

そうね、ベテランのやつでも振ることは出来るだろうけれど、実践向きではないわね、重すぎて扱いきれないわ。

なら、もっと力がある人物、っとなると、女将のやつね。

彼女であれば易々と扱えれるだろうけれど、あいつはこの武器を選ばないわね、あいつは頑固者なのよ、戦場に出るのなら一番信じれる愛用の武器以外、扱う気なんて無いでしょうしね。


街にいる他の戦士達をイメージしてみるが、ベテランのやつと同じで振ることは出来るが実用的ではない。


なら、どうして、この場所に?

姫ちゃんが無意味にこんな、あからさまな場所に保管したりしない。

意味はある、絶対に…


だったら、誰のかしら?誰を想定して用意したのかしら?

もう一度、知っている戦士達、街に限らず記憶にある強者たちを思い浮かべていくと、二人の人物が思い当たる。


一人は、この大陸最強の騎士と謳われている王家の剣

もう、引退して何年も経っているけれど、誰しもが彼こそが最強だと信じて疑わない。


…まさか、お義父様の為に?

馬鹿な考えに笑ってしまう。あの姫ちゃんがお義父様の為に武器を用意するなんてありえない。

用意するとしても、彼が愛用する武器は片手剣、もう少し軽くするわね。


なら、誰のかしら?


これ程までに重量がある武器、何処で何と闘う事を想定しているのかしら?そもそも?

「こんな重たいの、騎士様でも専用の訓練をしないと扱いきれないわね」

そう、思い当たる二人目の人物、一定の訓練さえすれば騎士様だったら、この大きな剣を扱いきれる。

断言できる、私の愛する騎士様は魔力によって身体を強化する術に長けているのを知っているし、それだけじゃない、過去に女将の為に武器をこしらえた際に武器の扱い方を女将にレクチャーしていたのよね。

あの斧と槌が一体化した超重量級の武器を女将同様、片手で扱って演武を披露していた、その姿を見ている私としては、騎士様であればあの武器を扱いきれる。

それに、彼はありとあらゆる武具に精通している、もしかしたら、彼だったら目の前にある大きな剣、長剣とは違い幅が広く、盾にも転用できてしまう程の大きな剣を、見た事も無い武器も扱いきれる。


まさか?そんなことがありえるの?

「まさか、騎士様のために?」

思い浮かんだ答えに対して首を振り否定する、死者は蘇らない。

それこそ、馬鹿な考え、騎士様はもう…月の裏側へいる。

だとしたら…だれ?


瞬時に思い浮かんでしまった、この武器を扱うことが出来そうな人達が親子であることを。

二人の共通点から導かれる新しい答えが思いうかんでくる。


この大きな剣を扱えれそうな人物が二人、その共通点、それは血筋、確か、あの家系もまた王家と同じく血脈を大事にしていたはず、つまりは…受け継がれてきた類まれなる天性の肉体を持った血筋、その血筋はもう一人いる。


まさか…


「だん、ちょう?団長なら、でも、彼女が体を鍛えて戦場にでるなんて、あの子が許すわけないじゃない」

思い浮かんだ対象は姫ちゃんが絶対に戦場に出させない人物。

だとしたら?だ、れ…


脳裏に想い浮かぶ、愛する騎士様の血筋

その血を受け継ぐ人物がもう一人いることを…その考えにもう一人の私が悲しそうに頷いている


「すぴ、か、の?」


辿り着いた答えが腑に落ちてしまう。

その可能性が高い、だって、あの子が未来を見据えてスピカを託したのであれば…

そう、スピカが大きくなるころには…受け入れがたいけれど、姫ちゃんは長生きが出来ない…

姫ちゃんが亡きあとに、誰が、スピカの武器を用意するのって話、よね?


あの子は、そんな先まで見据えていたの?


大きな剣に触れていると私の中で、私達の中で、揺ぎ無い願いが構築され固まっていく。

希望を託された、スピカが救世主となるべく。


なら、私は、私達は、母として、救世主を…

託された願いに相応しい人物へとスピカを育てて見せる


彼女が…亡くしてしまった最愛の娘、その一人が残してくれた願いを見ることが出来て良かった。

良かったと思うべきなんだけど、実のところ実感、何て…湧いてこないのよね~。

だって、今のあの子も時折見せる、不機嫌な時の姫ちゃんってさ、あんな感じなのよね。

今みたいに何処か達観してモノを言う時だってあるし、私からすれば、今の姫ちゃんも昔の姫ちゃんも大して変わらないのよね。


私からすれば、あの子もどの子も全部、私の大切な娘よ。

どんな世界を歩もうとも、どんな悲劇を重ねようとも、大切な娘。


過去に大人の雰囲気がある姫ちゃんと会話することがあった、後々、冷静に思い返してみても、特になにも、ねぇ?気にするっていうのも、無かったのよね。


自然と受け止めてしまっている、っという、不思議な感覚なのよね~…


彼女が起きてからのやり取りを思い返してみても

どっからどう見ても姫ちゃんなのよね~、気持ち不機嫌な時のね。


そう感じてしまっている手前、ね?姫ちゃんが言うように今の私は死んでしまったっていうけれど、今目の前にいる貴女が生きている、これだけで、私は、嬉しいのよ。

そりゃぁ、最初は少し警戒したわよ?何処か雰囲気が張り詰めているから、何かあるんじゃないかってね。

あの子からすれば、告白しずらい内容だとしても、私としては些細も何も、何も変わらないわね。


大きな剣から幾ばくかの決意と勇気を分けてもらい。

最後にぐるっと小部屋を見回して見ても、もう、得られるものはなさそうね。

惜しむらくは、目的のものを見つけることが出来ずってところかしら?

そこに関しては少々落胆した気持ちで部屋を出ると、自動で壁が動き窪みを残して道が閉ざされる…よくできてるわね。


クローゼットから出て、ふと視界に入った本棚、そこにある書物。

あの子が好きな英雄譚が綴られている本のタイトルを見て、昔あの子が言っていた言葉をふと思い出す

「そう、いえば、あの子が好きな童話?御伽噺?英雄譚?だったから、大きな剣を振り回す人が好みって言っていたわね?」

小部屋の中央にある大きな剣、あれが扱えれる人が?すき、って、こと、かしら?

ってことは!?まさか、あのこ…スピカが好みだっていうこと!?


自分の中に湧き上がった意味不明な結論に

「馬鹿か、私は」

ははっと笑いながらあの子が好きな服を片手に部屋を出る

誰が言ったか恋の伝道師も、耄碌して来たわね…



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