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最前線  作者: TF
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今代の私は… ⑩

この辺りはぶっちゃけると賭けに近いかな?

愛する旦那を起こして詳細を根掘り葉掘り聞いてみたいけれど、魔力使っちゃったから起こせそうも無いんだなぁ。


「本人が望まなければ、連れてはいかないのですね?」

「もちろん、彼女は医療班だから戦場に出ても、駒としては左程重要じゃない」

何ていうのは嘘、彼女ほど強力な駒は無い。

魔力保持力、魔力精製能力、身体能力、全てに置いてこの大地では類を見ない程に高い。

使い道なんて、山ほどある。今代の私では絶対に前へ出さないだろうけれど


私は違う…

司令官としての側面が告げている、彼女の使い道が山ほどあると…


「言質はお取りさせていただきました。では、私の本音です。受け取ってください。私は彼女に生きて欲しい彼女を愛しています。」

真っすぐな声、震えることが無く堂々としている。

その言葉が言える時点で貴女は立派なレディだよ、強くなったね。

「それは私も同じだよ、団長だけじゃない、誰も死んでほしくない」

本当はね、私は死んでも良いの?って聞き返したいけれど、この質問はダメ、メイドちゃんの決意が揺らぐ、さすがにこの言葉言えない。

「その誰もは、貴女も含まれていますよね?」

っとと、敢えて言わなかったのに、この子は、勘が鋭くて困る。

正直に答えると決めたのであれば応えよう。


「含まれていない、私は…死ぬ」


擦れるような音が聞こえたので本から視線を外すと鼻を真っ赤に染めて大粒の涙を流している

「あなたは、わたしのしる、ひめさまじゃない、姫様ならどんな、状況でも」

「任せて、誰も死なせない私もねって答えるでしょ?」

小さく頷きそのまま大粒の涙を流しながらスカートを掴んで声を殺している。

「ひめさまは、私達が敬愛する姫様は何処にいらっしゃるのですか?」

「月の裏側」

その一言で崩れ落ちる様に膝をつき両手で顔を覆いつくし声を殺しながら泣き崩れる

足が動くのであれば傍に近寄り抱きしめてあげるんだけど、ごめんね、足が動かないんだ。


視線を本へと戻し、ページを一枚いちまいと、捲っていく。

紙が擦れる音だけが部屋を包んでいく…


本に影が出来る、視線を変えるつもりは無い

「貴女が殺したんですか?」

「違う、私は既に死んでるの、今代の私が死んだから私が出てきたの」

「…多重人格者、です、か?それとも、悪魔、憑き、です、か?貴女は」

あら?メイドちゃん医学の知識書でも読んだの?それに、悪魔憑き…ははぁん?さては私が保管している本も陰ながら読んでいたなぁ?っま、悪い事じゃないから咎めるつもりは無いよ?

でもなぁ、この辺りを口頭で説明するのもなぁ~…めんどくせぇ!っとなると、ここまで覚悟を決めているメイドちゃんなら受け止めれる、よね?

目を閉じて席を見つめて見るが彼の姿はない、ちぇ、意見を聞きたかったのになぁ、なんてね、彼が本当にダメだと判断したら席に座り首を振るでしょ?


なら、答えはYESってことになるよね!


「しっかたがないなぁ…メイドちゃん、魔力ある?」

パタンっと本を閉じメイドちゃんに視線を向けると…あ、こりゃ駄目かも?完全に畏怖を見てる。

ゆっくりと手を前に出し

「全てを受け止める覚悟があれば手を出して、魔力はある程度コントロールできる?」

「密かに、練習はしています、ですが、私は、私の中に流れる血は薄く、微量の魔力しかありません」

手を前に出し続ける、その手を掴む勇気がメイドちゃんには無いのか手を出せずにいる


私としてはメイドちゃんが知っている方が動きやすいんだけど、どうしようかな?口頭で説明するとなると長くなりすぎるし信じてくれない気がする。


だとしたら、後押ししてあげるべきかな?


瞳達に相談しようと泥の中に意識を向けると皆、目を瞑っている。

むぅ、判断は私がしないといけないってことね。


今代の記憶を覗き、判断材料を探す。

彼女達と過ごした日々、お互い気を許しあい、支えあって共に過ごした日々。

その日々が語り掛けてくる、仲間外れはダメだと。


…そうだね、そう、だよね。今更、隠す事も無いし、知っておいてもらいたい、かな?

なら、後押ししよう、この一言で彼女が手を握らないわけがない。


「ちなみに、団長もNo2も知ってるよ?」


その一言で手が勢いよく掴まれる

「待ってください!それって私だけ仲間外れってことじゃないですか!?」

大粒の涙を流しながら睨まれましてもー?

「隠すつもりは無かったよ?あの二人は、必然的に近づいて気が付いた、運命が彼女に教えた。ってだけ、メイドちゃんは、その運命に近づいただけだよ、自らの気づきによってね」

実際問題、メイドちゃんが詰めてこなかったら教えるつもり無かったんだよなぁ、だって、説明がめんどくさすぎてさ?何から語れっての?私は吟遊詩人じゃないから御伽噺を語る才能は持ち合わせてないってーの、ただでさえ、誰かにわかりやすく順序だてて説明するのが苦手だっつーのにね?


「手を掴みました!覚悟を決めました!教えてください!」

「うん、今から魂の同調っていう術式を発動します、貴女も知っている浸透水式、それの発展形?っとは、違うか?その技術の大元、に近いのかな?」

思っていた内容じゃなかったみたいで、涙が止まり首を傾げている。

「同調現象でしょうか?」

今代のメイドちゃんは医療の方にも見解が深そうでなにより。

「そう、それに近いことが起きる、私の記憶を魔力に混ぜ、私とメイドちゃんの間で循環させ私が持っている記憶を伝えるっていう術式」

「…それをすると、私は私でいられますか?」

察しが速い、偉いね、ちゃんと勉強している、魂の同調、浸透水式、その術式にある共通のリスクを瞬時に見抜いてる。

「保証はないよ?でも、信じてる、メイドちゃんなら耐えられるって…引き返すのなら今だよ?めちゃくちゃ辛いからね?」

手を握りながら何度も何度も深呼吸を繰り返してる、脅しの影響か手も汗ばんできてるし、小さく震えてる、そっか、今代のメイドちゃんは心が強いって思っていたけれど、本質は変わってないのかも…


今はただ、愛する人の為に前へ進もうと、愛の力で前へ動こうとしてるんだね。

わかるよ、その気持ち、私もさ愛によって動き続けたんだもんね、にへへ。


「構いません、今ここに居るのは愛する人達を支えるために生きると決めました」

「祖国の呪縛から解放されたんだね」

コクリと頷き手が力強く握られる、当然、震えも止まっている。

「それじゃ、私の魔力量だとね、多くは渡せないから細かい部分は端折るからね?大雑把だけど私の世界を追体験してきてね、ちゃんと自我を保つんだよ?」

魂の同調を発動させるために、彼女の手から溢れる魔力を自身へと繋げるようにし、私の手から魔力を彼女の中へと押し込む、魔力の中に私に記憶を溶け込まして…


魂の同調によってか、メイドちゃんが小さく震え始める。


瞳は何処を見ているのかわからない、焦点があっていない、膝が震えている、このまま立ち続けれることが出来るのか少々不安だけど、幸いにして目の前はベッド、崩れ落ちてきたら支えてあげればいい。


心弱い、私の時代のメイドちゃんであれば帰ってこない可能性もある。

あの地獄を見てもなお、彼女が彼女であることを祈る…こうなると、それしかできない。


魔力を循環し続けていると思っていたよりも早く反応が返ってくる。

「私は!ここまで!弱い女じゃない!!ですぅ!!」

突如、大きな声を出し手が離される

「誰ですかあれ!?私って、わたし、ぅぅ、私は弱くないですぅぅ、それに、あんな、あん、ふぐぅぅぅ」

うぴーっと天を見上げるように顔を上げて涙を流し大きな泣き声をさらけ出している。


私のメイドちゃんと今代のメイドちゃんは違うもんなぁ、さて、泣き叫ぶ情けない妹をあやしてあげないとね

手を伸ばそうとすると扉が開く音が聞こえる、あー、これはもう、私怒られるやつじゃん?


「なんで、メイドちゃん泣いてるの!?」


思っていた以上にお早いお帰りでー

団長が泣いているメイドちゃんを抱きしめ頭を撫でてあやしながらも、原因であろう此方を睨みつけてくる…


違うんだ!って言いたいけれど、何も違わない!弁明できない!!


どうやって切り抜けようかと視線を腕の中にあるメイドちゃんへ向けると

「ふぇぇんだんちょー…ぁぁいい匂い」

ぁ、もう泣き止んで違う欲が漏れ出てるよ?

そいつもう立ち直ってるぜ?っと視線を送っても眉間に皺を寄せて此方を見てる。

「何があったの?」

「メイドちゃんが知りたいって言うから、私の過去を教えてあげただけだよ」

その一言で団長が気が付かないわけがなく、驚いた表情で

「まさかの?あれ、つかったの?」

「そう、あれ、使ったよ?」

あちゃ~、そりゃこうなるよねっと小さく呟きながらメイドちゃんを強く抱きしめ背中を摩ってあげてる、でもね、団長、メイドちゃんの表情はもう恍惚とした表情だからね?息遣いもちょ~っち荒いからね?さり気無く胸揉んでるからね?


お母さんがメイドちゃんがエロ猫だって言っていたのがわかったかも…

こいつ、隙あらばタイプだ…


「そっか、それじゃ、メイドちゃんも知ったんだね」

「うん、団長は…気が付いてるよね?」

もしかしたら、気が付いていない可能性もある、この妹は察しが悪いからしっかりと口に出して確認しないとダメなんだよにゃぁ!手のかかる妹だもんね。

「何となくだけど、それって何が違うの?私にとってどの姫様も姫様、私の大好きなお姉ちゃんだよ」

眩しい笑顔に心が浄化されそうになる。

夜空に輝く神聖なる月を彷彿とさせるこの笑顔、彼女の笑顔に私達は何度も心が救われてきた。

って、私の心は曇ってないやい!

「貴女の愛する団長はこう言っているけどー?もう、堪能したんじゃないの?」

そろそろ離れないと、気が付かれるよ?っと目で伝えると

「はい、もう少し味わいたいですけど、反応が無いというのは楽しくないので、満足ですぅ」

抱きしめられている状況から抜け出し出てきた表情が輝いている。この子って…ああ、うん、そうだってね、お母さんと一緒で欲に弱いタイプだった。


似た者同士だからこそ反発する、っだね…


たぶん、もう少ししたら団長も落ち着いて揉まれているの気が付いて脳天チョップ飛んで来てたからね?感謝してね?…いや、メイドちゃんは既に引き際を見極めていたからどの道、かな?

「私から受け取った感想は後程でもいいし、別に言わなくてもいい、かな?」

はいっと、思い出したのか涙を流し始める、その姿を見て打ち明けて良かったと感じてしまう。

「っで、団長がここに来たってことは魔力集めてきてくれたんでしょ?ちょ~だい♪」

手を伸ばすと予想外の動き、上半身を脱ぎ始める、それが何を意味するのか知らない私じゃない、私も慌てて上半身を脱いで

「うん、はち切れそうなほど貰ったから無駄にしたくない」

にひっと笑みを浮かべている、その笑顔を見て、心なしか笑い方も私に似てる気がする。

「こっちもメイドちゃんに魔力渡しちゃったからカッスカス!遠慮しないで全部ちょうだい!」

下着は付けているけれど、肌の面積を増やすことによって急速的に魔力を渡すことが出来る、のが魔力譲渡法の神髄…らしい。

この経験則はNo2からなんだよね、彼女が起こしたその奇跡に倣って、緊急時はこの方法を用いるのが伝統になりつつある。

私としては、左程変わらない気がするし、変わるような気もする、何度も経験しているわけじゃないからわかんないんだよね。

まぁ、人の目が無いのなら、いいんじゃね?って感じかな?


視線を団長の後ろ側へと向けると、メイドちゃんが慌ててカーテンを閉めてくれている。


視線を団長へ向けると羽交い絞めのように抱き着いてくるので私も同じように彼女の背中に腕を回して抱き着くと、勢いよく魔力が流れ込んでくる…


魔力は祈りで在り心。団長の体を通して色んな人の祈りが流れ込んでくる。

医療班の皆から託された願いによって私の体はまだ動き続ける事が出来る。


全身の隅々まで染み込んでいくように魔力が流れ込んでくる。

団長が生み出す純粋な魔力じゃないから、あの独特な高揚感がない。

かといって、魔石から魔力を貰った時のような夢に陥るような感覚も無し。

流石は医療班の心、慈愛に溢れている。


愛に満たされていくのを感じていると、ふと、流れが止まり、多くの愛に満たされた私の体には急速に睡魔が襲い始めてくる。泥の中に引きずり込まれそうな程に…


「はい、取り合えず、これくらいで」

「はふぅ~…ありがとう…」

人形であれば受け取った祈りによって願いを叶えるためにも、今すぐに動いて頑張らないといけないんだけど、めちゃくちゃ眠くなってきちゃった。いしきをたもつのがしんどい。

半分だけの視界になり、前を向くことが出来ない。

「眠そうだし、少し寝た方がいいよ」

「うん…」

この体は何故か直ぐに眠たくなる。

純粋に…そう考えるのが妥当なのかも、ダメだ思考が


靄が、集中できない


「安心してお眠りください、私は隣の部屋で待機しておりますので」

「そうだね、隣の部屋空いてるから、定期的にお願いしてもいいかな?」

「はい♪お任せください!」

仲の良い姉妹たちの声に安らぎを感じ思考が泥の中へと沈み込んでいく…



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