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最前線  作者: TF
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今代の私は… ①

車椅子に乗せられ外に出ると、日が暮れてくる、夕暮れ時に吹く風が肌寒く感じてしまう。

私の記憶、私が生きた時代だと、この大地は暖かかった、吹く風がこんなに冷たい事なんて無かった。


たった数年で気候ってこんなにも、変化するものなのだろうか?


頬を撫でる風が私の生きた時代と違って優しくない、まるで、今の私が、ううん、私達が置かれている状況みたいに、優しさを感じない、鋭く突き刺さるように厳しく感じてしまう。


肌寒く突き刺さるような風をうけ

…誰を恨むわけでもなく、空を睨みつけてしまう。


つい、小さく風に対して寒いっと、声が漏れてしまう。

「肌寒いわね、大丈夫?」

「だいじょぶ、体を動かしていないから寒いだけだよきっと…だって、この辺りは何時だって暖かい、今日だけ、だよね、肌寒く感じるのって」

後ろから聞こえてくる声が遠き日々を思い出しているのか切なそうに声が震えている…

耳を澄ませると、はぁ、さむぃっと聞こえてくる…純粋に寒かっただけかも?

「今日だけ、ではないわね、ここ最近は…いいえ違うわね、何時からかわからないけれど、日に日に風が冷たくなってき…いいえ、違うわね、風だけじゃないわ、気温そのものが昼夜問わず全体的に涼しくなってきている気が、するわね…どうしてかしら?」

だとしたら、ここら一体が変化しているってことだよね。

気候の変動には何かしらの理由があると思う、そんな知識を寵愛の加護で見た記憶があるから。

それに、古くからの伝承によると元々、この大地って寒い土地みたいだから、もしかしたら、単純に数十年規模で寒くなったり暖かくなったりと、そういった周期とかが?あるのかも?


だとしたら…伝承に伝わっているように、この大地にまた、寒い時期が到来し、伝承の中に描かれている白い氷の粒…雪が降るのかもしれない。


だとしたら、どうなる?

もしそうなってしまったら?


想像するだけで人類が戦う上で不利な条件が山ほど思い浮かんでしまう。


…雪かぁ、厄介極まれりだなぁ。

長年、ここの大地ってさ、暖かくて気温が穏やかでさ、寧ろ暑いって感じるくらい。

ちょっと運動するだけで汗が湧き出るくらいの気候


当然、私達は、長年この環境で過ごした来たんだから、それに慣れてしまっている。


だから、暑いのに関しては耐えられる、鎧っと言う熱が籠りやすく暑い服装でも長時間の運動が出来るほどに、暖かい、暑い気候に慣れている。

でも…寒いってのは慣れていない、寒すぎると動きが鈍くなる。

この大地が寒くなる何て予想していなかった、そうなると、防寒装備何て一切用意してないんじゃないかな?

予想していないのは獣共も同じ?はは、っなわけ!

獣共も同じ条件って甘い考えなんて無い。


一応ね、他の大陸では寒い場所があるし、そこでしか採取できない植物とか素材があるから、知識として、寒い気候がどういった場所でどういう感じなのかは知っている。


寵愛の加護に残された始祖様の知識にも冬っていう単語で色々と書かれていた。

だから、このまま寒くなれば、日本でいうところの冬ってのと、同じとして見ていいんじゃないかな?


なら、どう対策をとれば?

今更、どう足掻けと?

寒さに適応できる時間も余裕なんて無いだろうから…

私達としては、寒冷期が来る前に、全てを終わらせないといけないってことになる…

今この瞬間突き刺すような寒さを孕んだ風が事を起こすのなら急げと教えてくれているのかもしれない。


その答えを肯定するかのように詰め至風が頬を叩き、耳が痛くなる。


車椅子に乗っているからこそ強く感じてしまう。

この頬を撫でるどころか突き刺さりそうな冷たい風を…


お母さんは気にすることなく車椅子を押し進め、まるで風を割って裂く様に進んでいき、この街では昔から時折、強い風が吹く、そこは変わらない!!


あー風がつめたーいさむーい!髪の毛が乱れるぅ!!

おでこが顕わになるくらいの風!

今がミニスカートじゃなくてよかったと心から感じるほどに風が強い!

私の肌は愛する旦那以外に見せるもんか!アレが触れて見ていいモノじゃないって~っの!


まぁ、髪の毛が乱れたところで後でお風呂に入るから別にいい!…んだけど…

お風呂、大浴場で思い出し、ふと周囲を見渡してみる。


私が生きた時代に比べて人の数が少ない。


そもそも?強い風が吹いたところで?人の目なんて気にしなくてもいいんじゃないかな?ってくらい…人が居ない。

人気のなさに不安を感じたのか自然と声が出る

「後さ、私、結構ひっ迫した状況なのかなって思ったんだけど」

もう一度、周囲を見回してみても、落ち着いているのか人が居ないっという状況。

私の時は敵が攻めてくるような緊迫した状況であれば、常に誰かしら走り回っているのに、不思議と穏やかな空気が漂っている。


そもそも前提が違う、私の時は人類が明日を勝ち取る為の聖戦に向けて他の大陸の人達も集まっていたから人が大勢いた。

だけど、今代は、数年過ぎたとしてもこの街に人が増えるということは無かったってこと、かな?


「そうね。敵が攻めてきているのは間違いないわよ、貴女がかんがえ…」

言葉を止める?考えてるのと違うってこと?言い淀む必要ある?

「そうよ、ね。でもね、報告によると、あの時に比べたらかなり戦況はマシらしいわね、詳しくはベテランのやつでも捕まえて報告してもらいなさい、敵の規模、どの種類が主に多いのか、人型はどの程度出てきているのか、あいつなら連携とって情報を集めているわよ…あいつは、頼りになるわよ。もう坊やじゃないわ」

私の時だって、頼りになったよ。っていっても、何処か不安が漂っていたりしたのは否定できないけどね。


でもなぁ、ちょっと違和感を感じてんだよなぁ。

起きてからさ、戦況を把握しておきたいなって考えたりもしたんだよ?

でもね?私の感覚であればベテランさんだったら切羽詰まった状況になると、自分で判断できずに指示を求めるために、病室立ち入り禁止とかしていても、なりふり構わず!病室にやってくる!!って、さ、思っていたんだけど…くる気配がないんだよね。

つまるところ、ベテランさんが飛んでこないってことはさ、此方に来れない程に厳しい状況じゃないのかなって、ベテランさん基準で考えていたんだけど…

それはそれで、なんか、違うなぁって薄々感じていたりもしてた。


推測が正しいのか間違っているのか、手っ取り早いのが彼を捕まえる事だからね、だから、ベテランさんを捕まえて話を聞きたいんだよなぁって、思ったりもしたんだけど…彼が病室に近づかないから捕まえれてないんだよね。


団長と一緒に外に出た時に見つけれたら捕まえようって周囲にいる人物を見たりもしていたんだけど、街の様子を見て一瞬で状況が理解できるほどに、落ち着いている雰囲気だったんだよなぁ。

だから、大急ぎで捕まえなくてもいいかなってね。


それでも、何処かで見かけたら声を掛けようと思っていたんだけど?

今もなお見当たんないんだよな~、何処にいるんだろう?今も、良そうな場所に視線を向けてみるけれど見つかんないんだよね?


例えばさ、広場の奥!


王都騎士団が頼りになるとしても彼がよそ者…屈強な男たちが自分たちの領分を好き勝手にするのを良しとせず、監視するために近くにいるだろうって思っていたんだけどなぁ?


広場の奥にも彼らしき姿が見当たんない。っていうかティーチャーくんもいない…

まぁ、彼からしたらアレがいる時点で身を隠しそうな気もするけどね。


緊急性が高い状況に変化したと判断したら、私には優秀な右腕がいる。

そう、メイドちゃんだったら、何時如何なる時でも全員の場所を把握してるだろうから、彼女にお願いして連れてきてもらったらいい、かな?


そして、彼と言えば彼女、二人は一組、偉大なる戦士長の弟子たち…

大いなる天性の肉体を持つ彼女は今、どこにいるんだろう?

王都騎士団と関りがある彼女もまた、見当たらないんだよなぁ?

広場に居そうなのに…

「そういえば、女将は?前線に出てるの?」

「女将?珍しいわね、貴女がそういった判断をするなんて。あいつが前線に出ているって思うのは珍しいじゃない。貴女からすればあの巨躯の肉体を持つ人物ですら保護対象じゃなかったの?」

お母さんの口ぶりから判断を間違えたのだろうかと不安を感じた刹那、記憶が少し湧き上がってくる。

…っむ、ぁ、そう、そう、そうだった。

今代の私は女将の事を守るべき一人の女性、非戦闘員としてカウントしている、彼女からすれば彼女もまた一人のお母さんとして守るべき対象、ゆえに、戦いから遠ざけていたんだった。

まぁ、私も、彼女には大変お世話になってるから、保護対象としてカウントしたくなる気持ちは多に理解できる。


つっても、思い返してみると私ってやつはさ、彼女をただの駒として扱っていたよね。

大切な人を駒の一つとしか認識していなかったの?って歴代の私に、そう詰められてしまうと…

うん、何も間違っていない、冷静に冷淡にそうだよって答えてしまうのが私の罪。

今代の私みたいに多くの人を保護対象として見ていなかった、歴代の私に怒られてもおかしくない…


罪だってわかっていてる、私だって、お世話になった人達を無暗に危険に晒したいわけじゃない、私だって、助けてほしかった…一人ではどうすることもできない程に敵が強大すぎた。

だからこそ、自分一人では無理だと判断したから、手を借りて駒として扱った。


きっと、今代の私は、大切な人達を宝石箱にしまっていたんだろうなぁ。


だとしたら、今代の私が答えるなら、こう、だよね。

「こういう状況だと、誰が止めても彼女なら前に出ようとするじゃん?私じゃないと彼女を止められないでしょ?」

「それはそうね、彼女を止めれるのは愛する旦那か姫ちゃんくらいよね~。うんうん、そうよね。戦闘に出るって我儘に関しては、残念なことに旦那だと受け入れて喜んで送り出そうとするでしょうしね」

なんとか、誤魔化せれた、かな?

…誤魔化す、必要、って、あるの、かな?

湧き上がる些細な疑問、私と彼女の信頼関係であれば包み隠さずに言ったとしても受け止めてくれる、この程度で揺らぐほど、私達は弱くない。

「流石、お見通しよね。怒らないで上げてね?あいつの馬鹿真っすぐな性格を、正直に言えば出てるわよ、探し出して連れ戻す?」

そっか、やっぱり出てるんだ、っということは…

今代の女将はどうにかしてトラウマを克服してると見ても良いって事かな?


っであればっと、司令官として彼女を駒として認識していく冷酷な部分が起き上がってくる。

…今代の私には悪いけれど、戦力として、盤上の駒としてカウントさせてもらうよ。


そういう冷静で冷酷な判断が出来るのが私。


その私が今のところ席に座らされる、っと言うことは、他の私では感情が冷酷で冷静な判断ができない、選べない。


そういうことでしょう?非情な判断を下せれる人が今は必要ってこと…

獣共と闘うのであれば敗戦の将であれど、私が最も適任だもの。

人を、命を…それよりも、復讐する炎が強く優先する殲滅狂だものね、私って…


過去の出来事を冷静に思い返し、過去の私達と私を冷静に比べると、本当に、最も私が冷酷で非情だもんね。


…愛する旦那を突き殺すことができるくらい、ね…



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