表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
613/694

各々の恋愛事情 交わらない平行線 ①

鍵穴に指を入れ、魔力を流すとカコンっとドアの奥から音が聞こえる。これでよし!

ドアを開けてメイドちゃんがドアを潜るまでドアを支えていると、嬉しそうな顔で横を通り抜けていき地下へと通じる階段を軽快な足取りで下りていく。

リズムよく下りていく足音を聞きながらドアをゆっくりと閉めると風が凄い勢いで通り抜けていき髪の毛が乱されてしまう。

「後でお風呂入ればそれでいい」


多少乱れたとしても…

今はもう、見せたい相手も…

振り向いてくれないから別にいい!


って、思えるようになったのは、前に進めているってことでいい、のかな?

私の事を真っすぐに見てくれて、私の事をちゃんと覚えていてくれて、私の事を考えてくれる好きだった人。

この世界は一夫多妻だから、彼の愛を私に向けてくれるかもしれないっていう淡い願いを抱いていたりもしたんだけど。


はぁ、諦めないといけないのだと、二人の姿を見たら心が圧し折れていく。

だってさぁ、今日もさ~、姫様は気が付いていなかったけれど、私は見ちゃったんだもん。

彼と長が、一緒にベンチに座っているの見たんだよなぁ…っていうか、長の所も子供産まれていたんだよね、三人で公園にいる姿を見て…私が間に入る隙間なんて無いんだって心の底から感じちゃった…


心の中でどう向き合っていけばいいのかわからない感情に支配されながら階段を下りると、私の心と違って地下は明るかった。

明るく感じるのは灯りだけじゃない、姫様の記憶の影響によってここが特別な場所だと感じてしまっているからだと思う。


私としてはそこまで深い思い入れがある場所でもないんだけど、記憶が中に混ざり込んでいるから、かな?私って影響されやすいから尚更だろう。


さて、感慨にふけっていないで、姫様がご所望の品を見繕って運ぶとしますか~…


地下室に置いてある空っぽの木箱を持ってデスクに近づき、頼まれた本を木箱の中に入れようと掴むんだけど…


デスクの周りを見渡してみても彼女がいない。


あれ?メイドちゃんは何処にいったのだろうか?

周囲を見回してみても、彼女の姿が無い?どこ行ったんだろう?


地下室にある研究物に特殊な薬剤、特殊な素材がある。

彼女であれば何も心配はいらないだろうけれど、そんな心配なんて杞憂だと思うけれど、何かあってからでは遅い。

この地下には色んな薬品があるから何かある前に彼女を見つけた方がいい

探そうと、後ろに振り返ると普通にメイドちゃんがいた。

何だ、後ろに居たんだ。


後ろに居たメイドちゃんは俯いて両手を重ねて祈るような姿勢で動かない。

何か、思い当たることでもあるのかな?だとしたら、そっとしておこう。


メイドちゃんに頼りっきりにならないで自分で出来ることは自分でする。

彼女には彼女の仕事がある。


もう一度、デスクの方へ体を向けデスクの上に置かれている本を手に取ると背中に小さな重みが伝わってくる?

何だろう?どうしたんだろう?っという考えを抱くことは無い。

馬鹿な私が人の考えを考えるなんて、意味がない、どーせ、私は人の事がわかりませんよーだ


…姫様の過去によって知ってしまった、姫様の素直な意見が棘となって抜けない。


はぁ、私って空気が読めない人の考えがわからないって評価が永遠と抜けないって言うのが、こう、落ち着いてからじわじわと押し寄せてきちゃってる。はぁ~…


後ろからの重みが何を意味するのか、考えることもなく作業を続けていく。

言われた本を手に取り、本の中身を捲って何の本なのか軽く見てから、木箱に入れる。


2冊目を木箱に入れた辺りから、背中から伝わってくる吐息が熱を帯びていくせいで、背中の一点が熱い。


かといって、振り払うわけにもいかない、メイドちゃんとは親しい間柄だから、これくらい我慢する、別に、嫌だというわけじゃないし。

そのまま、彼女が満足するまで放置しようと受け止めていると、お腹の前に腕が回ってきて抱きしめられてしまう。


何だろう?構って欲しい、っとか?遊びたいのかな?

甘えたい、とか?何か不安、に、なることは、あるかもしれない。


遊ぶことに関しては平常時であれば問題ない。

だけど、今もなお、緊急事態、ではあるのかもしれないけれど、正直に言えば街の人達の様子を見てわかった、まだまだ、私達の街には余裕が見て取れた。

これもまた、始祖様の壁のおかげであり、姫様が…寵愛の加護を犠牲に、したのかな?それを持って多くの敵を滅ぼしてくれたから、まだ、この街は耐えれている。


なら、焦っても仕方がない、少しの時間くらい、遊び相手をするのも、良いのかな?


うん、姫様の病室には他にも大量の本が置かれていたことだし、この本を急いで届けても今すぐ必要ってわけじゃないだろうから

望まれているのなら遊んであげよう、メイドちゃんと遊ぶことが出来る人ってたぶん、私と姫様だけだもんね。

っと、彼女が求めてくる理由が思い浮かび、遊んでも許される時間があるのだと言い訳を並べてから、頷き、手を止めるとシャツの中に手が入ってくる。

メイドちゃんの手のひらが指先がお腹に触れながら登ってくる、その刹那、よく姫様に擽られている感触が蘇り体が反応し「ちょ、やだ、くすぐったい!」つい体をくねらせてメイドちゃんを振りほどいて後ろに振り返ると、背中から抱き着いていた瞳が潤んでいる彼女に

「くすぐったい!」

訴えかけてから、気が付いてしまう。

何時もと雰囲気が違う?どうしたんだろう?


私としては、擽ってくる姫様と同じように脳天チョップをメイドちゃんに叩きこまなかっただけでも成長したって自慢したいのに、彼女の視線や雰囲気からそういうのとは違う、気がする。どうしたんだろう?


今も、瞳を潤わせながら口元に人差し指を当てて、こっちを眺めてるけど?


体調が優れないのかな?メイドちゃんって体調を崩しやすいのかも?

前とおんなじで頬も赤い、うん、耳も少しほんのり赤い気がする。

地下室の照明でそう見えるだけかもしれないけれど、熱っぽい感じがする。

熱っぽい患者を診察しないといけない、熱を測るために手を伸ばそうとすると

「ぉ、覚えていますかぁ?ぁ、」

おでこに触れると彼女が何か言おうとしたのを止めてしまった。


何を言おうとしたのか、真っすぐ私の目を見て問われる内容に、身に覚えがない。

何か、彼女と約束したっ、かなぁ?

色んな約束をした覚えがあるだけに、どれを守り、どれを守らなかったのか、友人としてダメなのだとわかっていても、正直に言えば覚えきれていない。

おでこに触れた手も少々、微熱っぽい感じがするなぁっと感じていると

「ぁ、の、ボーナスが、欲しいっと、おぼぇて…」

消え入りそうな声でボーナスが欲しいっと聞こえてくる、ただ、それを言っても

、どうしようもないよね?だって、そこは、私じゃなくて姫様に言うべきことじゃないのかな?

「お金?それなら」「違います、お給金よりも、私が欲しいのは」

即座に否定され此方を真っすぐに見つめてくる、おでこに触れている手を離そうかと思っても真っすぐに見つめてくる彼女から動くことが出来ない。

でも、不思議な雰囲気なせいなのか、お互い動かない、動けない。

でも、私達の長い付き合いなら欲しいものが有るのなら気楽に気軽に行って欲しいかな、そんなところで言い淀まないで欲しいモノが何か言って欲しい、私馬鹿だから正直に真っすぐに言ってくれないとわからない、メイドちゃんにはお世話になってるしプレゼントの一つや二つねだってくれてほしいくらい。

何が欲しいのか、彼女の真剣な瞳を見つめているとおでこに触れていた腕を優しく掴まれメイドちゃんの胸の前に両手で包み込まれ


「あなたがほしい、、、です」


真剣な瞳に熱が込められた言葉、空気が読めない私でも流石に、これは、わかる、そういった人達がいるという事も、医療班の人達が話しているのを聞いた事がある。


「ごめんね、私、女性が好きな人じゃない、だから、メイドちゃんを愛せない」

真っすぐに彼女を見据え嘘偽りなく本気の返事を返すと

「はい、存じ上げております、それでも、私は…それを聞いたうえでも、貴女の傍に居ることは、許してもらえませんか?貴女の愛を頂けないとしても、貴女の傍に…居させて欲しいです、もし、この先があるのでしたら、何れ、貴女がお産みになられるお子を…抱かせてほしいです、メイドとして良き隣人として…御傍に置いてくれませんか?」

彼女が願う未来は…馬鹿な私でもわかる現実的ではないと、それでも、私達がそんなありえない夢を見てしまうのは、彼女の存在があるからこそ、そして…私はその術を見た、レシピも知っている、出来るか出来ないかで言われると…出来る。恐らく、魔力さえされば出来る。


でも、肝心の相手がいない。

はぁ、彼以降、恋を探してみたけれど、まだ、私の心に彼がいるんだもん、まだ、次に向けて歩けないよ…


それでも、未来はどうなるのかわからない、もしかしたら、好きな人が出来る未来もある。だったら、彼女が傍に…ずっと友達でいてくれるのなら、私は嬉しいけど、メイドちゃんは、苦しくないのかな?

「うん、もし、私が誰かを愛し誰かに愛されて、未来を紡ぐ時があれば傍にいて、ほしい、ううん、いてください。親愛なる友人として、で」「はい!!絶対に!何があろうと!!」

言葉を途中で遮られてしまった、メイドちゃんとしても断られると思っていたのかな?

飛びつく様に抱き着いてきた彼女を受け止めると、メイドちゃん頭を私の胸に埋めてくる。

甘えん坊な彼女の背中を優しく叩き慰めるっというのもおかしいか、溢れ出てくる感情が落ち着くまで傍に居てあげようと、思っているんだけど、何で前へ前へと押し込もうとするんだろう?感情が溢れて制御できないのかな?

しかも、ちょっとだけ、左側を引っ張らているような?左側へ誘導したいのかな?彼女の左側になにがあるんだろう?

押されながらも左側に何があるのか目を動かしてみると


視線を向けるとソファーがある?

…あ、座りたいのかな?


彼女が望む様に力を込める流れに逆らうことなく流されていくと、ソファーに誘導されソファーに座らされると、そのまま上に圧し掛かってくる?

座った私の太ももの上に座る様に圧し掛かり両肩を掴まれソファーの背もたれに背中を押し付けられる、抵抗する理由も無いからされるがままにしてるんだけど、どうしたいんだろう?

彼女の意図を掴むために顔を見ると、頬が赤いし、耳も赤い、それに

「あなたがわるいんですよ?」

力を込め続けていたからなのかメイドちゃんの息遣いが荒く、よくわからない事を呟いている。

興奮しているのかわからないけれど、医者としてわかる、彼女は正常ではない。

なら、医者として錯乱状態の患者に対する対応としては落ち着くまで待つこと!つまり、今できる事ってなると、これしかないか、力いっぱい抱きしめる!!


「ふ、ぐ…うご、けな、ぃ…ッ!!」

何かもぞもぞとしてるけど、どうして、興奮?錯乱?しているのかわからない限り、解放する気はない!もしかしたら、何か地下にあるもので精神に作用する薬品でも触れてしまった可能性があるからね!薬品の効果が切れる迄!落ち着くまで!私は彼女を離さない!!良き隣人、良き友達としてね!


彼女の背中を優しく叩いて溢れ出る感情が落ち着くまであやし続ける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ