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最前線  作者: TF
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各々の恋愛事情 ①

デスクに到着するまでの道中に関しては、私の時と大きな違いが無かった。

研究所の中は塔と違って、大掛かりな設備は置かれていない、何かを大きな物を吊るすような解剖するような場所はない。


術式研究所、それは、術式の未来を、過去を、今を、研究している。

過去の術式を現代に蘇らせる

今の術式を未来へと繋げる

ここで開発された術式は、技術となって未来を豊かにする


ここで新しく改良された術式が魔道具へと刻まれ新しい魔道具が誕生する。

…そう、ここには人々の過去も今も未来もある。


それが術式研究所を作り出した決めセリフ


そんな術式研究所では私の時は、始祖様の術を私達でも扱えれるようにすることを主に研究していた。

ある程度、私の代で始祖様の術で再現が可能なのは何か、目星は付けていたけれど、今代の私は何を研究していたのだろうか?…気になる。

期待するべきはここ、ここ以外に私が未来を見据えて何かを残している可能性なんて無い。


…だって、他の二つでは大して目当てのものが無かったんだもん

そうなるとさ?必然的にここの期待が高まるってもんだよね?


ここのデスクは、他のデスクと違って非常に片付いていて、私の机とは思えれない。

きっと、誰かが定期的に片づけてくれているのだろう、机の隅ですら埃一つないし、本棚も綺麗に掃除されている。


行き届いた掃除の素晴らしさに感動しつつ、全体を見渡していく。

そして、机の隣や上に置かれている本の表題を見て察する


…外れだ


心の中でため息を零し、肩を落としながら

「ここと、その一帯の本を後で運んでもらってもいいかな?」

欲しい本を指さして指示を出し

「ありがとう…もう、大丈夫、部屋…に戻れないだろうし病室へ連れて行ってくれる?リハビリが待ってるんだよね?」

「うん…」

返事が暗い、団長に何か言うべきなのだろうか?

「ふぅ、ごめんなさい、ちょっと、うん、姫様の状況をわかっているのに」

何だろう?何をあやまって…ぁーそっか、まだ先ほどの件に対して団長としても大人げなかったって言いたいのかな?

「こっちこそ、ごめんね。余裕が無さ過ぎた、アレは良くないって反省はしてるけど、その、出来れば、私だって元気な姿になってから皆と顔を合わせたかったんだけど、今はそれどころじゃない、だから、その…」

「はい…」

返事が暗い、ん~、彼女が納得してくれると嬉しいんだけど、どういえば、いいのかな?今の状況を念押ししておくべき?

「…私だって、余裕がないって言うと情けないって思われるかもしれないけれど、実際問題、そうなの…その、はっきり言うけど、ちょっと記憶が混濁していて他人に気を配れるほど…正直に言えば、余裕が無いの、ごめんね、弱い姿を見せて」

元よりかっこつけるような間柄でも無し!弱い所はしっかりと見せる!…それが姉妹ってもんでしょ?…だよね?■■■くん。

「ぅぐ、そう、だよね。うん、わかってる、でも」

「期待、したいんでしょ?どんな時でも私は絶対的な余裕を持って人を導いてくれるって」


言われたくない一言だったみたいで黙ってしまった。

これは、余計な一言だったかも?こんな状況を打破するのに今代の私はどうしていたのか?心ではなく体が染みついた動きを!


「ほら、帰るよー!連れてって~」

自身で歩けないので踏ん反り返る様に背もたれにもたれ掛かると後ろから抱きしめられ直ぐ横に顔があり、彼女の息遣いが伝わってくる

「…甘えたいのなら、人目のない所が嬉しいかな」

そっと彼女の頭を撫でると「ごめん、そう、だよね、ごめんなさい」囁くように謝られてしまう。


お姉ちゃんとしてちょっと…

大人げなかったのだとわかる、わかっちゃうけど…

違う、欲していた物が何一つなかったから、苛立っていた、それをぶつけてしまった私が悪い。


「情けないお姉ちゃんでごめんね、ちょっと余裕が無さ過ぎた」

彼女の頭に頭をくっつけ彼女の体温を感じながら反省する。


どうしてか、わからないけれど、些細な感情をコントロールしきれない、どうしてだろう?腹芸の一つや二つ、得意だったのに…


団長が落ち着くまでじっとしている間、視線の先にある机の上に置かれている卓上の鏡から映し出される数多くの視線が私達にずっと刺さり続けている…


いつの間にかメイドちゃん以外にも複数の人がこっちを見ている…


一名、神妙な顔つきで頷いているけれどさ、その頷きってそういう意味?

私はノーマルだからね?女性が好きな人じゃないからね?メイドちゃんもジト目で眉間に皺をよせ続けてるけど、違うからね?…ん?メイドちゃんが?ぁ、えっと、ぁ、あー、そうだったそうだった。おもいだした。


後方からの視線を感じ続けていると、団長は落ち着いたのかゆっくりと離れ無言でそっと静かに車椅子が動き出すと鏡に映っていた人達が慌ててのぞき見していた場所から離れていく、まるで蜘蛛の子を散らすように。

デスクがある小さな部屋から出ると残っていたのはメイドちゃんのみだった。

少し離れた場所に気配を感じるので、少しだけ意識を鼓膜へ向け集中力をやや高め耳を澄ませると、やっぱりっとか、良いモノ見れたっとかが聞こえてくる辺り…今代は色ボケが許されるほどに平和だったのだと感じてしまう。

今の状況、理解しているのかなぁ?っという不安は口に出してはいけないっというか、苛烈な状況でも恋愛していた私が言えた義理じゃないよね。


色恋かぁ…

これだから恋愛脳の人達はって、昔の私は言うんだろうね

でも、恋も愛も知ってしまった、経験を得た私ならこう言うんだろうね

他人の恋模様も、また良し!当事者じゃないからこそ…色々と想像できて色々とほくそ笑みながら新着を楽しみにできるってね!


この街では、死が近いからこそ、明日を夢見るような事を考えてはいけない。

っという、言葉が残されていた、この街ではね…

でも、そんなのは違う、明日を夢見るからこそ、今日を生きることが出来る、だよね?■■■くん…


恋愛脳ばかりの恋愛研究所から離れ、病室のドアを開けると

「あら?お帰りなさい、思っていたよりも早いじゃない」

ベッドの横にある椅子に我が物顔で座りながら私の日記を読んでいる胸がでけぇ人が居る!しかも!何時ものコートタイプの白衣ではなく団長が良く来ている体を動かしやすい白衣、戻って直ぐにリハビリってことだよね~…少しくらい一服したかったなぁ!こういう時に便利な言葉がある!

「お昼ご飯食べてない」

お腹空いたっという生理現象を伝えると椅子から立ち上がり

「あらそう、はいどうぞ」

ぽんっと膝の上に置かれる黒く丸い物質…丸薬かじって栄養満たせってことね!

「いいよ!食べるよ!頑張ればいいんでしょ!!」

膝の上に置かれた丸薬を手に取り齧りながら睨みつけていると

「はい、喉渇くでしょ」

更に膝の上に置かれる、この見覚えがある出来る事なら開けたくない瓶!!

ぇ?これで喉を潤せって?逆効果じゃね?

中身なんて見なくても!蓋を開けなくてもわかるっての!

でも、逆らえねぇ!この手の状況で逆らっても無意味ってのを嫌という程、身に沁みてんだよなぁ!


口の中にある丸薬を飲み込み、開けたくない蓋を開けて一気に飲み干す、当然、嗅覚と味覚は遮断済み!


「喉を潤す液体じゃないんだけどぉ?お母さん!喉渇いた!」

「小娘がじきに入れるわよ、ほら、食べちゃいなさい」

更に膝の上に丸薬が置かれる!!

更に飲みたくない液体が入っている瓶も置かれる!!

更になんかよくわかんない粉も渡されるんだけど!?

「粉薬は苦いから、その包紙と一緒に飲みなさい、ちゃんと胃で溶けるから安心安全よ」

なら包んだ状態で渡してよね!零れるじゃん!


声に出すことなく睨みながら渡された丸薬を歯で砕き、喉を潤すっと言うことに置いてはまったくもって向いていない魔力促進回復剤を含み飲み込む。

口の中で残り続ける独特の味が味覚を遮断しているのにもかかわらず染み込んでくるのを感じつつ、粉薬を袋で包んで喉の奥に放り投げると、メイドちゃんが並々と水が入ったコップを渡してくれるので口内にある全てを流すように勢いよく水を飲む!!

勢いよく飲んだ後は、少量の水をお行儀が良くないのはわかっているけれど!適量含んで、口の中を漱ぐように口内を圧縮した水で押し流す様にしてから喉の奥へと歯の隙間に隠れていた臭い液体と共に流し込む。


一連の流れの後は、酸素を求めて勢いよく深呼吸を繰り返し

つい、心の底からの願いが口から溢れ出てしまう

「だはぁ…甘いのが飲みたい…」

何でもいいから果実のジュースが飲みたいよぉ…


「お腹に痛みはある?」

ぇ?なんで?

質問の意図がわからない

「ないよ!元からないよ!」

「消化不良っといっても直ぐにはこないわよね、ずっと点滴だったもの、胃が痛いとか無い?」

質問の意図が分かると同時に粉薬が何を意味するのかわかってしまう。

…まって、私何日も食べていなかったりする?そんな状況でお粥とかスープでもなく行きなり丸薬渡したの?

お前本気か?っと医療従事者を睨みつけると、その意図を察したのか視線を外される!!こいつ…!!

「ねぇ!団長どうおもう!?」

医療班を預かる団長に文句を言ってやろうと思ったら…

上半身を捻って後ろに振り返ってみると誰も居ない…


「助けを求める相手はとっくにいないわよ?小娘が水を用意して貴女に渡してから直ぐに二人で外に出て行ったわよ?何か用事でも頼んでいたんじゃないの?」

頼んでいたけれど、そんな直ぐに移動しなくても良くない!?

「ほら、ベッドに移動するわよ」

有無を言わさず両脇に手を入れられ持ち上げられ、そのまま胴体が伸びたように見える猫のように運ばれていき…軽々とベッドの上に座らされ

「ほら、ベッドの柵を掴んで」

言われるとおりに柵を握り体を支えていると目の前にお母さんが屈み

「靴を脱がすわよ…病衣とはいえ、スカートをはかないでスパッツだけってのも貴女の信条を知っている私としては、不思議ね…どんな時でもスカート命の貴女が」「着替えさせてくれないだけじゃん」

その言葉に間髪入れず文句を言う。

わかってくれてるなら、用意しといてよね!っと。


「ぁ…そうね、不服だったのね、偉いじゃない我慢して」

子供かっての!私だって時と場合くらい弁えますぅ!

返ってきた言葉に更なる文句を言いたくなるが、踏みとどまることが出来た、その事に少々、驚きを感じてしまう、ちゃんと止まることもできるのだと。

そのおかげで少しだけ冷静になることが出来、目の前にいる人物の心情を察することが出来る。


…きっと、お母さんの中で私は永遠に世話の焼ける子供何だろうなぁ

…まぁ、実際問題?子供みたいなもんだけどね。

私達の関係は永遠に変わらないんだろうなぁっと嬉しいような、恥ずかしいような何とも言えない気分になってしまう。



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