過去を知る、今代の記憶を知る、次の一手を探す為に⑱
状況を確実に把握するために質問は忘れない。
「手持ち無沙汰な彼らは、王から命令があるまでの間、王からの指示により街の為、人類の未来の為に献身的に励めと命令され、色々としてくれている、ってわけでしょ?」
予想が当たっているみたいで、神妙な顔つきで頷いている。
「でも!姫様の御傍付は私以外にさせませんから!絶対に死守します!!」
力強く拳を握り、鼻の穴を大きく広げ目が血走っている。
この様子を見る限り、私の知らない所で、既に、ひと悶着どころか正面切って衝突している可能性が高そう、んー…宰相を見つけ次第、それとなく伝えておいてあげよっかな。私の傍にはメイドちゃんだけでいいよって。
「んじゃ、暇なら、付いてくる?」
「はい!っと、言いたのですが、どちらに行かれるのですか?」
場所を聞いておくのは正しい判断、でもね、相手が私程の狡猾な人だとしたらその一言で見破られちゃうよ?僅かな…一言でメイドちゃんでも立ち入れない場所があるって悟られちゃうよ?
それが何処なのか、ひとまず、置いといて~…
行くべき場所っとなると、時間が許せば…一瞬だけ視線を天に向ける。
太陽はまだまだ天にあるか。
なら、取り合えず、術式研究所と、研究塔を見ておきたいかな?
絶対にその場所には、私のデスクがあるはずだから、そこから得られる情報もある。今代の私がその特質的な場所でいったい何を研究していたのか…知りたいからね、兵装があればよし、殲滅兵器があれば良し、私が解読しきれていない術が解読されていれば良し、それに…その何方かに、転送術に関する書物があるはずだろうし、これは絶対にチェックしておきたい。
っとなれば、その場所を知っているでしょうねメイドちゃんなら!
「私のデスク周りかな~現時点での予定としては、だけどね、メイドちゃんなら私のデスクが何処にあるのか勿論、知ってるでしょ?」
「はい、任せて頂きたいですけど、姫様のデスクの場所です、よね?…えっと…」
てっきり、そんな場所が分からないわけないですよね?っていう言葉が出ると思っていたけれど、違うなぁ、なんで、上目遣いで団長の方を見ているのかな?
ん~…考えられる部分とすればこれかな?メイドちゃんって意外と恋愛脳な部分があるから…二人のお邪魔にならないかって事を考えているのかな?
でも、そうなるとさ?ちょっとこま…らないのか?どうなんだ?
そういう気遣いをしてくるってことはさ、今代のメイドちゃんは、私の趣向として女性が好きな人だと勘違いしている可能性が浮上してくるんだけど?
…まぁ、客観的に見れば、そうなるよね。否定できる要素が皆無だもんなぁ…
かといって私の好きな人はって言っても、見たことも聞いたことのない人の事をメイドちゃんが信用するとは思えれないし、団長が説明したとしても口裏を合わせたとしか思わないだろうね!
客観的に見ても、ほんっと否定できないんだよなぁ~…
この年齢で浮いた話が無さそうな感じだし?
尚且つ、私と違ってさ、今代の私って結構、日常を謳歌してるでしょ?
色恋どころじゃない!切羽詰まった状況!ってなわけでも無ければ?
普通に考えればさ、貴族共が私に寄ってこないわけがないわけで、その中に私が気に入った人物が一人も居ないってのも、おかしいって思うよね?
ううむ、考えれば考えるほど、先の出来事が脳裏をよぎってしまう。
…アレが私をそういった目で見るのも、世間一般ではそういう風に思われている可能性が、高いってことになるよね?
なーほーね?
確かにさ~、日誌で見てみた限り、今代の私の周囲にいる人物ってさ、常にお母さんや、メイドちゃんに、女性だけで構成された戦乙女が傍に居る事が多くて男っ気がゼロ!男性を寄せ付けない鉄壁の何かがある様にしか見えないよね?
想像してみる、美しい人に囲まれるお金持ち…
あー、あ~~、ぁぁ~~~…そうなるよなぁ~…
完全にそういう人じゃん今代の私って…
女性が好きな女傑じゃん!!
…一瞬、どうやってその評価を覆してやろうかと、私はノーマルだって認めさせてやろうかと悩んでしまったけれど、賢い私が告げる、この私が、彼以外の男になびくとは思えれないってね!
なら、現状でいいじゃん、めんどくせぇのが寄ってこないから。
なら、いいか!彼以外の人を好きになるわけないし!変なのが寄ってこないだろうから、そういうのに時間を割かれる事も無くって済むって、ことだよね?
いいね~いいじゃん!ってことはさ、今代の私は蟠りへの対処対応に時間を盗まれることが無かったってことになるじゃん?…最高じゃん。
なら、華の頂には永遠に勘違いしていてもらおうかな?
「何を気にしてるの?行くのいかないの?行かないのなら仕事たんまり渡すけど?」
「いえ!行きます!」
踵を揃え背筋を伸ばし、顎を上げて声高らかに宣言されてしまう。
気を付けしなくてもいいよ?軍隊じゃないからね?
「なら決まり、二人いてくれる方がね、ぶっちゃけ、移動もしやすいから、ぶっちゃけると、助かるんだよね~研究塔って階段多いでしょ?私のデスクは階段上らないといけない場所にあるから」
団長が私を背負って、メイドちゃんが車椅子を運んでくれたらね、階段を登る上で楽に移動が出来る、効率大事!時間は有限!
「っというわけで!まずはー、研究塔が近い、かな?そちらへ連れてって!」
「はぁ~い…先のペースだったら全部いけそう、かな?」
動き出す車椅子、後ろに団長が居るからわからないけれど、きっと天に輝く太陽の位置を見て凡その時刻を確認したんだろうね。
死の大地で働くうえで太陽の位置から凡その時刻を知るのは必須技能!ってね!
三人並んで、っというのもちょっと違うかな?
綺麗な華達が方々を駆け回り続けていく道中記
こういう日々って凄く良いよね。
私の中でも、こういう日々って言うのが理想であると心の底から…ううん、私だけじゃない、歓喜の声が泥の中からも湧き上がってくる。
移動してすぐに、目的の場所に到着する。その風貌は変わることがな…いと思っていたんだけど、結構外観変わってる。年月の力って凄いね。
それでも…研究塔の前に立つ大きな門は変わらず!
門を開いて中に入っていく…
何処か変化があるのかどうか、中を探る様にぐるっと視線を彷徨わせてみるけれど、中は変わった感じがしない、あの頃のまま、下手すると幼い私が来た時から変わってないんじゃないのかって思ってしまう。
研究塔に入って直ぐ、開けた場所があって、中央には大きな大きな鋼鉄のフックがある。
それが何を意味するのか、人を持ち上げるためじゃないよ?当然!解体する為!
そこに解体するための敵を吊るして、解体して、敵のパーツを並べたりしたりもした。
当然、解体前もきっちりと研究はするよ?吊るした状態で観察したりしていたのを思い出すよ…特に人型を吊るして解体する迄の、あのワクワク感は忘れることが出来なかったなぁ~…
長年お世話になったフックを眺めてから、周囲を見回してみる。
今代も、そこは変わりが無く、塔としての構造的な違いは無さそうかな?
さて、塔の構造に大きな変化が無さそうなのはいいとして~、働いている人達の状況を把握しておきたいよね?
研究塔の中では、何か指示が予め出されているのか、今代の私が先を見据えて何か策を巡らせ出しているのか?それを物語るように各々が忙しそうにしている。
かといって、私を見ても慌てて駆け寄ってくる様子も無く、黙々と作業を続けている。
っとなると、今代の私が何か先を見越して何かを用意させているのかもしれない。進行状況に遅れがでるといけないので邪魔をしないで奥へと進むと、螺旋階段が目の前にある、何も言わずに団長がしゃがみメイドちゃんが私の体を支える様に横から補助して団長に私を背負わせると、団長がすぐに立ち上がり階段を一段一段登ってくれる、その後ろを車椅子を持ったメイドちゃんが付いてくる。
完璧な連携の元、螺旋階段を登っていくと、団長も当然、私のデスクがある階を把握しているみたいで何も言うことなく、私のデスクがある場所へと連れて行ってくれる。なんて、なんて楽なんだろう!!ずっと背負われていたい!!
堕落してしまいそうな怠惰な心を戒めようとする前に車椅子に座らされデスクの近くへと到着すると、私以外から怠惰だと攻めてくる言葉が飛んでくる。
「姫様の作業する場所は何処も変わりはないね」
団長が漏らした言葉が何を意味するのか…理解できない私じゃない、だって、お母さんに何度も何度も注意されてるもん。
デスクの惨状を見たらね、誰だってわかる。
今代の私も本質は変わらない、机の上が物で散乱している。
デスクの上だけじゃない、当然、それが当たり前の如く、周囲も片付けるという概念が無いの?っとお母さんに怒られてしまうくらいとっちらかっている。
ただ、これは怠惰ではない!ちゃんと理由があるもん!
「私としては、ちゃんと片付けているつもりだよ?」
そう、私の手の届く範囲にモノが置かれているし、何処に何があるのかしっかりと区分分けしてるもん!適当に邪魔だからどけているってわけじゃないもん!
後で必要だからそこに置いてるだけだもん!ただ!置いた物の上に物が置かれていて重なってるだけだもん!!普通の考えだと物を重ねたら下にあるモノは取れないでしょ!って思うじゃん?そんなの!私からすれば念動力を使えば直ぐに取り出せるんだもん!!
…だから、私は念動力の扱いが上手いんだよなぁ…日常で使いまくってるから…
そう!なので、散らかってるように見えるけど!
私が分かればそれでいい、私の効率が上がればそれでいいの!
なんて効率的な配置!素晴らしい!びゅーて・・・ではないかな。
でも!無意味に散らかってるわけじゃないもん!
私からすればちゃんと片付いてるもん!
皆それがわかってくれないだけだもん!!
開かれる記憶の中で片付けるから外へ出てくださいと、放り出される経験が山のように蘇っていく…
嗚呼、そうだった、今代の私は研究塔でも、術式研究所でも、定期的に私のデスク周りを掃除するからっという理由で遠ざけられてしまったことがあった…
その都度、腑に落ちなくて、団長に八つ当たりしていたのでした…
…ぁ!それで脇腹を擽りたくなったのか!思い出した!反応が可愛いんだよね!…なんでだろう、頭のてっぺんがうずく様に痛いや…




