表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最前線  作者: TF
607/700

過去を知る、今代の記憶を知る、次の一手を探す為に⑰

っていうか、今代の私だろうが、過去の私だろうが、それくらいで怒るほど度量が狭いわけじゃないでしょうに、何を心配しているのやら?

「失敗は誰でもするもの、失敗するからこそ一歩前に進めているんだから、怒る必要はないんじゃないの?」

貴重な素材をダメにしたくらいなら、私なんて数えきれないほど失敗してるよ?過去の私を含めると…たぶん、王都が傾くレベルで損失だしてるけど?

「それ、前も言われた…でも、まったく同じ失敗が三度目になるとちょっと怒られたよ?」

それは、怒ったって言うよりも注意したんじゃないのかな?

「たぶん、怒ってないと思うよ、メモを取るなり、失敗状況を分析しきれてないんじゃないのって言われてない?」

「っぐ、はい、言われましたぁ…」

当時の状況を思い出したのか、苦虫を嚙み潰したような顔で俯いてしまう

「それくらいなら、怒ってないよ、研究に関して怒ることってたぶん、無いんじゃないかな?そりゃぁ、危険な実験を行うことに対して無防備に何も対策装備をしないで実験していたら怒るだろうけれど」

「危ない実験するときは手袋などの防具は必須!それは皆わかってるから、しない」

直ぐには注意すべき部分を口に出すってことは、普段から真面目にそういった部分を守っているって事、なら、何も目くじらを立てるような事ってないよ。


常識的なことはちゃんと守られているのは今代であろうと何時だろうと同じでちょっと一安心。

なんだけどさぁ、まだ何かある感じ?

何で、まだ申し訳なさそうな表情してるの?

また何かやらかしてるって思ってる?


「後…その…ここって、誰の視線も誰の耳も無いから…実験そっちのけで…恋の相談とか、恋バナとかばっかりしていた時がある、から…もしかしたら、姫様の邪魔しちゃってたかも?その、実験している奴で何もしない時間のときがあるから…そういう時は、殆ど、恋バナで終わってる日あったから、もしかして、そういうので不機嫌にさせちゃったかも?」

あ、成程ねぇ、団長の中ではここって、研究室というのは名ばかりで遊んでることが多かったって思い出の方が多い場所って事?


少し想像してみるけれど、言葉の通りなら実験の傍らで、そう言う実験以外のこともしていたってことでしょ?

そりゃぁ、それが仕事だったらやることしなさい?ってなるけど、お互いの趣味的な研究でしょ?別に良くね?っていう結論に辿り着く。


私も経験あるし、培養関連の研究って精製されるまで何日も何週間も何か月も必要なことが多いからさ、暇な瞬間ってどうしても出来ちゃうんだよなぁ。

だって、培養液の中を常に見張っておくことなんて無いもん。

「そんな事で怒ったりしないよ?思い出してよ、その話題をしている私もノリノリだったんじゃないの?」

「その…うん、そうだった気がする」

返ってくる反応が鈍いってことは、自分の話に夢中になりすぎていて会話相手を見てなかったっとか?この子は嘘が苦手だねぇ…こんな人物が王様なんて成れやしない、腹芸の一つや二つ出来ないとね…いや、寧ろ逆か?誰も嘘を言えない様な関係を築いちゃうかも?魔眼の力も重なって…ん?そう考えるともっとも、人類に対して王として最強なのでは?…考えなかったことにしよう。

さて、ここでの欲しい情報は得たし、私を何度もおんぶして運んでくれた団長も多少は休めたかな?…今代の団長も体力が物凄いかどうかわからないからね。

「そっか…うん、ありがとう。出よっか」

「え?もういいの?」

来て直ぐに移動することに驚いているみたいだけれど、たぶん、ここにある机とか漁っても得られるものは少なそう、っとなると、本棚にある本をメイドちゃんに見繕って貰えれば…ここに対しては、十分かな?

入念にってわけじゃないけれど、周囲を観察してみた限り、隠し通路とかの気配も感じない、ってことはさ、ここを遊び場とするって考えていたんじゃない?

今代の私はしっかりと地下を警戒していたってこと、きっと、ここはストレスを溜めこんでいくであろう彼女を助けるために用意したんじゃないの?


それが分かればさ、それでいいんじゃないの?

この地下室の目的がわかったし、十分十分。


「…姫様は…」

立ち上がることなくじっとこっちを見てくるけど、どうしたの?まだ何かあるの?

「ここって。ここってさ。思い出、いっぱいあるから、それを…私、壊してない?」

その表情を見て、この地下室に来てからの彼女の言動に納得がいく、申し訳ない顔を随所でするのかわかってしまった。


過去の私にとってこの場所は特別な場所、長い時間を過ごしてきた場所。


そこを気にしていたのか、私の大切で思い出深い場所を壊していないのかって改めて感じちゃったんだね、まったく、成長しない子だなぁって思っていたけれど、人は成長するんだね、きっかけが必要なだけ…ぁ、いや、違うか、昔から団長は優しくて気遣いの出来る妹だよね。

常にお姉ちゃんの事を考えてくれる優しい妹の頭をそっと撫で

「壊すどころか、新しい思い出が出来ていいんじゃないの?」

「そっか、なら良かった」

てへへっと照れた笑いを溢している。口癖を真似てくるなんてまったく、この子は…

その照れた顔を見ていると、彼女が触れてほしくないであろう脇腹を擽り壊したくなってしまう衝動が湧き上がってくるのは…どうしてだろうか?頭を撫でている右腕がうずく…右腕を必死に左手で止め、心を入れ替える様に

「車椅子持ってきてもらって申し訳ないけれど、また、上に運んでもらってもいいかな?」

可愛い妹にお願いすると

「うん、勿論!ちょっとまっててね!」

えへへっと笑いながら車椅子を持ち上げて階段へと向かって駆けだしていく。

駆けだした彼女の後姿を見送ってから、もう一度、周囲を見渡すと…

彼女と過ごした日々の断片が薄っすらと再生されていく。


そっか、私はここを完全に巣立ったんだね…

ここでの主な役割は私じゃなくて団長の為ってことか。


後…考えられる事としたら、そう言う話ばっかりするために地下室を作って、敢えて、会話の内容が完全に女子会にすることによって…


盗み聞きしている可能性が高い敵を油断させるのが目的だったり?


だとしたら、今代の私はそうとう…長い時間をかけて策を巡らせ、相手を油断させていたってことになる。

強かじゃん…


先ほどまで愛する妹が座っていた箇所に視線が吸い込まれていく。

愛する妹を見守ってくれてありがとうね…

つい、哀愁を漂わせるような年季が入ったソファーを撫でていると足音が近づいてきて目の前に大きな背中が見える。

遠慮することなんて無く腕を伸ばし背中と胸をくっつける様に抱きしめると易々と持ち上げられる。


密着していてふと、邪な考えが過ってしまう。


…自然と甘えることが出来るこの環境ってさ、もしかしなくても最強なのでは?などという病気や怪我を理由に己が欲を満たすような邪な考えを戒める!人のやさしさにつけ込むのは良くない!


自分自身を戒めるんだけど、何でだろう?この状況が楽しいと感じてしまい過ぎている。


うーん、己を律することが出来ないや、何でだろう?今代の私の影響かな?


邪な考えと楽しいという感情が入り混じり、どうやって己をコントロールすればよいのか悩んでいると少し強い風が頬を撫でていく


階段を登り外の風と光に包まれると、昔の瞳が物憂げな視線を向けてくる、大丈夫、地上はまだ崩壊してないよ…

団長に甘えるように力を込めると、そんな事に気が付くことなく、さらっと抱きしめている腕を外され車椅子に座らされる…力じゃ彼女に勝てねぇ…

今代の私はどうやって彼女と接していたのか知りたくなってくる…全部言葉で伝えていたのかな?察しが悪すぎる妹に対してどうやって甘えていたのだろうか?


そんなどうでもいい事に対して悩んでしまっていると

「あ!姫様ー!」

可愛らしい華の声が耳を通り抜け私の心に突き刺さったので、視線を向けると足音無く彼女が隣にくるので、つい、何時もの流れで

「次のお仕事だけど、地下に在る本棚から今の私が読むのに適している本を見繕ってくれる?」

状況説明を大きく端折って仕事を渡してしまう。

当然、無理難題に近いその一言によって、彼女の美しい顔に皺が出来てしまう、見事なマウントFUJIが眉間に出来ている。

「ぇぇ~…」

嫌そうな顔をしているなぁ、うん、今代のメイドちゃんは表情が正直者で好感が持てる。

「私も手伝おうか?」

嫌そうにしているメイドちゃんに助け舟を出す辺り、二人の関係はとても良好とてみ良いんだろうね。美しいモノが仲睦まじくしてくれるのは眼福だよね~。

うんうんっと腕を組んで頷いていると、二人の視線が此方に向けてくるので

「お願いしても良い?後、今すぐじゃなくてもいいから~…メイドちゃんって他に仕事ある?」

二人にお願いしつつ、メイドちゃんの仕事状況を把握しておきたい。

今代のメイドちゃんも、他の人達に何かしら仕事を頼まれていたりするのかもしれない

広場を見たからこそ、伝令班として彼女が機能していないといけないのではないかと「実のところ何もありません」その考えは杞憂だったみたい。

キリっと表情を引き締め暇だと宣言してくる?本気で?伝令班として仕事が無いの?…もしかしなくてもメイドちゃんは伝令班という枠組みに属していない?もしかして、伝令班っという役割が無い?…どうやって連絡を取り合っているの?

…純粋に人手が豊富っとか?王都騎士団も来てるし、部隊を展開させているわけでもないから、余裕がある、のかも?


もしかしたら、メイドちゃん的に余裕を見せたくて虚勢を張っている可能性も考慮して再確認!

「何かやること、ないの?頼まれごと、とか?」

「はい!何も頼まれていません!えっと、姫様はまだ、報告受け取っていませんか?その、王都から多くの人達が流れてきていまして、その多くが侍女や従者の方達でして、それも…」

視線を逸らして憂いた表情をするってことは、本職の人達、それも、その中でも上位に与する選ばれし者しか働くことが出来ない、王家で働くことが許された上澄みがきてるってことね!


そりゃ~…そうだよね。失念してた!

アレが来てる時点でいないわけがない!

退任まで残すはあと数秒みたいな状況らしいけれど現王なんだもの、侍女達も絶対一緒にくるのが普通だよね、王命だもん。

っとなると、メイドちゃんが暇なのも納得だよね。伝令班なんて、専属侍女達が居れば余裕でまわるし、そもそも!王が剣達が勢揃いしているんだったら、全員上流貴族!彼らを補佐するために家から従者を連れてくるよね?

…もしかしなくても今って歴史上類を見ない程に戦力揃ってる?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ