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最前線  作者: TF
605/694

過去を知る、今代の記憶を知る、次の一手を探す為に⑮

「っで、これが姫様が仕留めた人型」

「…これ」


敵の死骸を見て唾を音を出して飲み込んでしまう。

どんな術式を使ったのだろうか?その衝撃が凄まじいのだと物語っている、敵の体が半壊している。それも、あの厄介な獣。

そう…この顔…この馬面!ちょっと記憶と違うけれど、四肢のパーツも似たような感じ、異形な人型!


「っで、そこに飾ってあるのがその時に使われた槍」

「や、り?」

その言葉と同時に振り向き槍を見た刹那、後頭部に手を触れてみるが…ない。

「ま、って、その槍って」

槍の形状に見覚えがある…

「…髪の毛、結ってある、よね?」

会話の流れが飛ぼうがきにしない…お願いだから結ってるって

察してはいるけれども淡い希望を込めて団長の声に集中すると

「え?結って無いよ?あの時から多少は伸びたかもしれないけれど、バッサリ自分で切って槍にしたよ?」

アイデンティティーが砕かれる…


っふ、はは、あ、は、ぇ?ええ、ぇ?

両手で頭蓋骨を満遍なく触りまくる、頭頂部、団子のような物はない、後頭部、同じくない、側頭部、あるわけがない…


本気で無いじゃん!!お母様を目指してずっと伸ばしてきた私の髪の毛!!

嘘でしょ!?あそこまで、伸ばすのに、あれを維持し続けてくるのにどれだけ苦労した、のは、メイドちゃんとお母さんだけど…まじかぁ…な、ないのかぁ…うそでしょぉ…


「また、伸びてくるよ」

「…そ、だね」

放心する様に背もたれに体重を預けると慰めてくれるかのように頭を撫でられてしまう。ぅぅ、彼にも褒められた自慢の髪ー!!

「ぇっと、その…次、は、ん~…ど、何処が良いのかな?」

優しく撫でられながら困惑されても、私も困るってのー…

そっかぁ、私の髪の毛、はぁ、そっかぁ…そっかぁ…

まぁ、あの槍で、どうにかこうにかして倒したのなら、悔いはない!

この手で恨みを晴らしたかったけれど、あーでも、私自身の手で倒してることには変わりないってこと?…なーんか、釈然としねぇなぁ!!


「え、っと、ん~…どうしよっかな…」

失ったモノが大きすぎて思考が動こうとしない。

私にとって、可愛いが思考、美しいが全て、っという信条があるうえに、お母様や…お母さんみたいに長い髪の毛って憧れても、いたから…


っぐ、心が張り裂けようだよ!慰めてよ!!


空席に語り掛けるが彼が出てくる様子が無い…それでも私の旦那!?

はぁ…貴重な魔力を使うわけもってことだよね。

…ってことは、彼も先を見据えている証拠、この程度の犠牲で皆が守れたのであれば良しとするべき、ってことかな?


アイデンティティーを使うのだと決めた。

…今代の私は皆を守るために四の五の言ってられなかったんだろうな。

自分の命を犠牲にしてでも助ける、動き続けたって事なんだろうね。


視線を槍に向けると繋がる…

「…おいで」

呼ぶように手を伸ばすと槍が小さくなり私の腕に吸い寄せられて行き、槍が手のひらに収まる程に小さくなると、槍を使用した状況が蓋を開く様に蘇り、納得する。

「わ!?やっぱりそれって大きさ」

「うん、変えれるよ、大きさは込めた魔力のサイズまで、小さくするのは爪楊枝のサイズくらいまで出来る」

手のひらに収まっている槍を髪の毛を纏める櫛のかわりにするようにして結ぶ

「へ~…でも、それがあればさ、どんな敵でも」

うん、使いこなせれたらどんな敵でも貫くことが出来る始祖様の槍。


問題があるとすれば、使いこなせるのかってことだよなぁ…

たぶん、今代の私の方が全てに置いて上だと思う、私が扱いきれるのかな?


扱いきれるでふと思い出したんだけどさ、ちょっと気になってたんだけど

「ねぇ、転送の陣あるでしょ」

「うん?あるよ」

アレに小さな違和感を感じていた、私が知っている奴とは違う気がする

「あれって、改良してある?」

「かい、りょう?…あ、え?あれは、えっと、ごめん、間違ってるかもしれないけれど、確か三代目だよ、ね?」

…ん?どゆこと?三代目?…三台目?どっち?意味合いはあんまし変わんないか?

「うん、姫様が作ったやつだよね?アレ」

…ほぉん?ってことは何?今代の私って、もしかしなくても転送の陣、複製どころか、改良までしちゃってるってこと!?

「確か…初代がボロボロになってきて、新しいのをつくった、だった、かな?ごめんね、そこら辺は詳しくない、それから転送術が色々と、じゃなかったっけ?」

はぁ…まって、今代の私ってもしかしなくても、めちゃくちゃ研究する時間があった?…そりゃ、そう、だよね…取引で色んな国に行ったとしても、車があればそんなに移動に時間かか、らないだろうし、取引の場所も、そ、ぅだ、その為の施設を王都に、つく、ってる。うん、うん、時間、あるなぁ…


ちょっとしたきっかけで、色んな事が思い出すように知識として湧いてくるこの感覚にも慣れてきた、湧き上がってきた情報を私の時代と比べてみると、小さな違いが積み重なって大きな違いへと至っているのがよくわかる。


むぅ…今代の私と、私じゃ、ちょっと、違いが多い気がする!

え~…でも、転送の陣を交換したなんて重要な情報、日誌に書いてたかなぁ?流し読みだから気が付かなかったのかも?

それとも、転送の陣に関する記述は貴重だから、かか、なかった?とか?

…その可能性は、あるなぁ。


あと、考えられるとしたら、もしくはそれらを記述している本を保管している場所が違うとか?例えば…地下?


私の研究と言えば地下!

地下室!そっちに資料が集められているかも!!


「地下!」

脳裏に沸いた勢いのまま声に出してしまい

「って、ある?」

淑女らしからぬ大声を恥ながら、語尾を落ち着かせる。


でもなぁ、地下がなぁ…敵のテリトリー、だよね?迂闊につくって

「え?あるけど?でも、どれだろう?食糧庫の事?何でも倉庫のこと?通称、玩具置き場?武器庫?それとも…研究室のこと?」

返ってきた返事に困惑してしまう。


わぁ…めっちゃあるぅ…地下が危険だって私、伝えそこなってたぁ?

まさか、何も警戒していないわけじゃないっと信じて

「研究室、だけど、何処にある?」

「えっとね、研究塔の近くにあるのと、術式研究所にあるのと、後は、寮の近くっでいいのかな?そこも姫様がたまに出入りしてて、私も何度かお邪魔して一緒に研究してたりしたよ?どれに行きたいの?」

…今代の私は、地下を気にしたりしていなかった?そんな多くの場所に地下室つくってたの?

「研究塔の地下は?どんなことを研究していたの?」

「ぇ?…知らない」

返ってきた返答に呆れてしまうが、それはお門違いだと自分を嗜める。

団長が知らないのは当然だっての、そりゃ、そうだよね…

うーん、全部を回るのはちょっと時間が惜しいかなぁ?隈なく調べるとしたら凄く時間かかるよね?


「団長がたまに出入りしていた地下室では何を研究していたの?」

「え?わす…んん、何でもない。あそこでは、培養の効率化とか、浸透水式に用いる特殊な液体の精製とか、そういうのが多かったかな?」

最初の言い淀んだ言葉で察する、そこに何かある。

きっと、特殊な研究をしていた場所はそこだろう。


寮の近くって考えると、地下の大型魔石がある場所!そこの横に併設してある私達が籠りに籠り続けた研究室!今代の私も、そこをベースとして研究していたはず!なら、そこに資料があるかも!


「そこの地下室に連れて行ってくれる?」

「うん、良いけど、念のためにルールを説明するね、そこで得た研究に関することに関して得た知識は他言無用なのと、地下室では、研究に関する内容は口に出さない、筆談で行う事、あと、雑談はOK、これで、いい、かな?」

成程、一応対策は講じてある。

「うん、わかった、お願いしてもいい?」

「もちろん」

返事と共に車椅子が動き出す。


今代の私、その記憶全てがあれば、何も問題ないのになぁって感じながらも、二人で一緒に何かをするっと言う行為に胸がときめいてしまっている。


最後は、碌に会話も出来なかったから。

終わってしまった私の時代、彼女は…考えてもどうしようもない、でも、憂いてしまう、今までの私とは違って残してきたものが多すぎたから…


最愛の妹にして、親友である彼女と、こうやって過ごせることに、涙が溢れ出てしまいそうになる。


車椅子で移動している間も他愛の無い会話を続けた。

彼女もそれを望んでいたのか、時折、声が震えているような気がした。


楽しい時間は何時だってすぐに過ぎ去っていく。

地下へと通じる扉は、重苦しい風貌ではなく、有り触れた普通のドア。

そんな日常的に在るドアが、目の前にある…


普通の何処にでもあるドアっであれば、鍵すらついてない…


手を伸ばしてドアノブを捻り引っ張る、だけど鍵穴が無いのに、ガンっと音が鳴りドアが開かない。

ってことは、鍵かかってるってことだけど…鍵穴どこ?見当たらないんだけど?

ドアノブが捻れていないのかと思い、もう一度ちゃんと捻り切って手前に引く。

先ほどと変わることなくガンっと音を出すだけでドアが開かない。


開かない…ぇ?有り触れたドアなのに、有り触れた鍵ではないの?

何だろうこれ?内鍵?とか?ならどうやって開けるの?


「えっと、鍵の開け方って覚えてる?」

「…?」

後ろから馬鹿にされているような気がしない事も無い言葉に首を傾げ乍ら上半身を捻って後ろに視線を向けると。

「ドアノブの横、枠あるでしょ?そこに指先を触れて魔力を流してみて、姫様ならそれだけで、たぶん、開け方わかるから」

言われたとおりにドアノブの近くに視線を向けると、外枠の一か所に窪みがある。

そこに言われたとおりに指先を差し込む、ほどでもないか?乗せる程度かな?

っで、魔力を…ぁ、なるほどね。


魔力を流そうと意識を集中するだけで理解することが出来た。

これは人じゃないと開けれない仕組みだ。


魔力を流すとカコっと音が鳴る

構造としてはとても簡単、恐らく念動力、かな?ドアが開かないように鉄の棒か何かが仕込まれていて、念動力によってそれを動かしてロックを外すっていう単純なロック方法、この窪みに指を入れて魔力を通す、そんな考え、人しか思い浮かばない、なるほどなぁ、ちゃんと警戒してんじゃん


「それじゃ、ドア開けるから少し下がるよ~」

車椅子がドアから離れる様に後ろに引かれ、引きドアが引かれるように開かれると風が地下へと吸い込まれるように流れていく。

ちゃんと換気用の魔道具も常時稼働しているって感じかな?

やっぱり時の流れでって偉大かも、今代の私は私とは明らかに違う。


車椅子の前で屈んでくれるので、そのまま両腕、上腕三頭筋を彼女の肩の上に乗せると前腕を掴んで体を自身の背中に引き寄せてくれるので、その力の流れに任せる様に体を委ねると軽やかに持ち上げられ、地下へと誘われていく…


ドアを潜った瞬間に感じたっていうか思い出した。

このドア、強引に力づくでこじ開けると、ある細工が作動して地下室が燃えるんだった…思い出すのならもっと早くに思い出してもよくない?


あっぶなぁ…


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