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最前線  作者: TF
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過去を知る、今代の記憶を知る、次の一手を探す為に⑫

病棟階段近く ────


建物の外に出る為には、階段を下りないといけないのは当然の流れ。

内心、少しだけ期待を抱きながら連れられて行き、普通の何処にでもある階段の近くで止まるので少々落胆してしまうので、甘えたくなるのは仕方がないよね?

「希望は、お姫様抱っこ」

「無理、階段下りるのに前が見えない」

希望を出してみたけれど却下されてしまう。

まぁ、わかっていたけれどね、足元が見えないのは危ないからね。


前で団長が背中を向けて屈んでくれる。

彼女の肩に手を置くと、両手を掴まれ遠慮することなく引き寄せられ、団長の背中が胸に押し付けられ、ちょっとだけ、ほんの、ちょ~~っとだけ、笑みが零れそうになる、大きくなったもんだ、にへへ。

あの頃の私が当ててんのよが出来ていたら、違っていたのかなぁ?っま、どの道?彼のアレがあーいう状況じゃどうにもならないか…


背中と胸が隙間なく密着したと思ったら、太ももに手が回ってくるので、腕の力を使って彼女に巻き付く様にして体重を預ける為に自身の腕を握ると、軽々とおんぶされた状態で立ち上がる。


やっぱり、目の前にある肉体は身体能力がずば抜けて高いって、なんて思っちゃったけどさ、そもそも、私くらいに軽かったら、戦士どころか、多くの医療班が軽々と持ち上げてしまうよね。ほら?私って羽のように軽いじゃん?


下りた先に車椅子があるのだろうか?視線を車椅子に向けると、まぁ、後方から付いてくるアレが持つわけも無く、その場に放置して、階段を下りていく。

私の時代と変わりがなければ、各階ごとに車椅子を用意してあるから、階段を下りる時は医療班がおんぶしたり抱えたりして運ぶことが多い。

もしくは階段に専用のスロープを置いてタッカーで運んだり、車椅子で運んだりする、でも、私みたいに軽かったらスロープはいらないだろうね、おんぶの方が早い。


この様子から見て、この辺りのシステムも私の時と変わらないみたい。

あーあ、ちょっと?期待してたんだけどなぁ、もしかしたらさ、エレベーター的なモノが作られているのではないかって期待していたりしたけれど、さすがの私も、エレベーターは作れなかったか。


階段を下りていく最中もアレは何も言わずに後ろを付いてくる。

てっきり、アレの近くに近衛騎士が待機しているんだろうって思っていたんだけど、廊下を歩いていても遭遇しない、アレが独りでさ動き回るなんて、どういう考えだろう?そりゃぁ、この街でアレに何かをするような考えを持っている様な人はいないだろうし、恨みを抱いている人はいないわけじゃないんだよね?

…叔母様が見たら即座に殺しにかかりそうだけど、その辺りは大丈夫だと思う、スピカという外れる事のない鎖があるから。


アイツが独りで私の近くに居ると言うこの状況、何を意味するのか察するところがある。


はぁ、憂鬱だなぁ…

近衛騎士を用意しないってことは誰にも聞かれたくない様なことでしょ?

罪状に対して温情があるから?そんなのに興味がある奴じゃないでしょ。


だとすれば~考えられる事ってなるとさ、秘密裏に何かしようと企んでるんでしょ?


誰が、思惑通り事を進ませてあげますかっての!

私の傍に誰も居ない様な、危険な状況にするかっての、女の敵め!時代は違えどお前の悪行を許したりして無いからね?っと言わんばかりに一つの瞳が泥の中から睨んでいる。


1階まで階段で下りてくると車椅子がある場所までそのまま背負われていると、その姿を見た他の職員が駆け寄ってきてくれて車椅子を持ってきてくれる。

こういう時に無線とかさ、あれば、連携取ってさ、一階の階段に車椅子を予め置いて置くっていう連携が取れたりして便利なんだろうけれど、今代の私でも再現は出来なかったかぁ~…機械工学ってやつは難しいなぁ…


車椅子に乗せられている間も、アレは大人しく待っている、何も言うことなく動き出す私達の後ろを付いてくる。

そのまま、病棟の外に出て広場に向かってもらう。

アレをどうにか出来る可能性がる人が居るかもしれないっという淡い期待を込めながらも、道中で街の状態を観察してみる。


だけれど、お爺ちゃんや宰相の姿を見つけることは出来なかった、それに…長い月日の差があるのに、大きな変化はない…なんてことは無かった!

日誌に書いてあった、塔、完成してんじゃん…


外に出て空を見上げたらすぐに高い建物が見えて驚いた!

完成してるって!やるじゃん私!塔のような王宮よりも高い建造物を良く後ろを付いてくるアレが許したもんだよね?どうやったのか、不思議。


車椅子で進んでいく街の変化、大きな変化もあるし、小さな変化もある。

病棟の一室でさえ僅かな変化があるのだから、外はもっと大きな変化に満ちていた。

細かいところを上げればキリがない。

戦士達が扱う装備が私の時代よりも丁寧な作りになっている、だって、細かい所に意匠が凝っている!盾とか鎧とかも簡素な作りじゃなくて丁寧に作られている。

量産目的じゃなく長く愛用するっていう考え。

ってことは、一つ一つが制作費が高い可能性が高いよね、ベテランさんが家宝にしている鎧みたいに。


それ以外にも気になるのが建物の形が細かいところで違う。

補修と改善を続けてきたから、かな?


初めて行く場所じゃないのに初めてくる場所のような不思議な感覚を楽しいと感じてしまう部分がある、目で見える範囲でも伝わってくる、似たような街を知っているけれど、随所で記憶と違う不思議な感覚。

その様な感覚を楽しむのは、きっと、不謹慎なのだとわかっていても、楽しんでしまう。


不謹慎だと思ってしまう理由がある、通り過ぎる騎士や戦士達が私達を見て一礼をしてくれる、だけれど、彼らの佇まいから伝わってくる、かなり緊張している様子なのだと…

アレを見て緊張しているのではなく、今の街の状況的に油断できない状況だという事。


もう一度、空を見上げる、幸いにして上空から敵が来る様子はない、本日も晴天なり、なんだけど、私の記憶と違うのが少し肌寒いような気がする。良い天気なんだけどね?なんでだろう?


小さな違和感を一人で探している間に、気が付けば広場がもうすぐそこ。


広場に近づくっということは、すなわち、壁の近くとなる。

広場から見ることが出来る壁、きっとそこも色々な変化があるのだと少しばかり期待を胸に抱き視線を前へ向ける。


視界に入る始祖様が築いてくださった大いなる壁。

そちらの方に視線を向けると、今代の私が残してくれた日誌の通り、防衛・籠城を胆とした策がしっかりと施されている。

見張り台の数も私が居た時代よりも豊富だし、階段も随所に増設されているし荷物を運ぶための昇降機らしき何かがある。エレベーターは作れなくても、物を運ぶための昇降機は作れている!未来は進んでいるのだと実感がわいてくる。


それだけじゃない、管のような物が地面から見張り台まで、伸びている、雨水を排水するための排水溝、そんなものではないだろう。

きっと、あの管には何かが通っていると見ていいだろうね!

何かしらの魔道具なのか、それとも、魔力を伝えるケーブルなのか、詳しい仕様などは、メイドちゃんに聞けば知っているだろうから、後で聞くべき!だね!


遠くからでも違いが分かる壁の現状に満足し、顎を下げ視界を広場に向ける。


広場に置かれている、槍にしては簡素なものが大量に並べられている。

恐らく、バリスタ用の矢だろう、それも…遠目で見てもわかる、魔石をセットする場所がある、ってことは、着弾と同時に何かしらの術式が発動するとみていいんじゃないかな?いいね、ちゃんと防衛するための装備がしっかりと用意してある。


日誌だけではわからないような色々な変化、実際に目の当たりにする方が早かったのかもしれない、足が動けば直ぐにでも街中を練り歩くのになぁ…席は空席のまま、魔力の無駄遣いはさせてくれないんだろうね。


車椅子はそのまま動き続け、広場の中心で止まる。

広場の中心、すなわち、転送の陣が設置されている場所。


目の前にある転送の陣を眺めてみる、年数が経過しているのだから、これもそうとう年季が入ってみすぼらしくなっているのかもしれない、それでも、今もなお設置されていると言う個とは、年数が経過していても稼働することが出来るっという素晴らしい耐久力がある魔道具…なんだけど?目が疲れているのかな?


ん?んー?

気のせいだろうか?私が知っている転送の陣とは、違うような?何だろう、小さな違和感、それに、何だろう?思っているよりもみすぼらしくなっていない気がするんだけど?


「到着、した…けど」

不安そうな声が後ろから聞こえてくる、その声に返事を返そうとする前にカツカツと踵を鳴らしながら私の隣に胸を張ってえらっそうにアレが立ち止まる。

「久しいな、息災か?」

上から聞こえてくる声、私の中にある記憶と大違い、偉そう。

初手嫌味っか、相も変わらず腐った性根ですことっと感じるのは今代の私がアレと過ごしてきた経験なのだろう。少しずつ、記憶が蘇ってくるのを感じる、今代の私がアレに抱いている感情とか、かな?

「ええ、王様。この姿を見てそう感じるのであればそうでございましょうね」

喉が勝手に動き口が開かれ出てくる言葉が

正気かお前?っという嫌味を込められた音だった

今代の私とアレとの関係性が僅かな邂逅で知る。


「っは、それだけ言えれば何も問題はない。息災だ」

鼻で笑って跳ねのけるあたり、私が知っている情けない男とは大きく違うね。

かといって視線をアレに向ける気にはなれない。アレと目を合わせるのも嫌なので彼の顔を見ることなく広場の奥へと視線を向け続ける、始祖様の壁でも見ながら相手するくらいでちょうどいい。


「それで、こんな庶民のわたくしめに何用でございますでしょうか?」

「っは、自惚れか?この俺が、お前のような下民に用があるとでも?」

返しの言葉が常に挑発的なのがアレの特徴でもある、この程度で腹を立てていたらアレとは会話にならない、なら、隣にくんなよ、馬鹿か?っと反論するなんて

「なら、隣にくんなよ、馬鹿か?」

っと、いけない、思ったことが勝手に口から滑り落ちちゃった~いけな~い、てへぺろ☆彡



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