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最前線  作者: TF
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違和感 ①

目を開き見える景色、よく知ってる天井…

えっと、頭が重たい、思考が加速しようとしない…

気怠く考えるという行為そのものを拒絶するような倦怠感によって思考が動こうとしない中、目を開きぼんやりと視界に映りだされる天井を眺めていると違和感を感じてしまう、自身が何度も何度も見てきた天井なのは間違いないのだけれど、何か、違和感を感じてしまう。


ん?ちょっと違う?何だろう?何が違うのかわからないけれど、何だろう、違うと感じる。

記憶力には自信があるんだけど、全ての病室を覚えているのかって言われると自信がない、自身が無いんだけど、病棟の天井なんて変わらない、はずなんだけど、不思議と違和感が消えない。

天井だけでは何もわからない、違和感の正体を探る為に上半身を起こして部屋を見回してみようと、体を起こそうとする、しかし、些細な違和感を体からも感じてしまう。


重たい。

上半身を起こしてみたのだけれど、普段とは違い重たく感じてしまう。


なんだろう?なんか上半身が重たく感じる。

気怠いとは違う、感覚…

筋肉痛でもない、病気の時、特有の気怠さでもない…死の間際にある重たさでもない。


何で重たいんだろう?

少しずつ少しずつ、頭の歯車が回りだし、時計の砂が落ちていくように思考が動き出し始めていく。


瞼を何度もパチパチと上下に動かし、深呼吸を繰り返し目を覚まさせ思考を加速させようと試みるが加速しないので加速するという行為を止めて周囲を見回していく。


病棟の一室っていうのはわかる。点滴も繋がれている。

そもそも、何で私は病室にいるのだろうか?怪我をしているわけでもないし、何か無茶をして運ばれたのだろうか?一連の流れがわからない、どうして、こういう状況になったのだろうか?


そもそも、私は…今代の私じゃない。

時折、表に出て雑務などやお母さんや叔母様に協力を仰いだことがあるけれど、今代の私は私じゃない、私は…ただの敗北者。今代を生きる私じゃない。


状況を判断するために意識を内側へ向けて今代の私を叩き起こす、敗北者が体を自由に動かすのはよくない、今が何時かもわからないし前後の状況も不明瞭すぎる下手なことはできない…


意識を内なる世界に移動させる。

泥のような世界…色んな時代の私達が眠る棺の中に自分を戻らせるためにも今代の私が本来いる位置に意識を向け、てみる、が…その席が空席となっている。


今代の私は?

今代の私が居る限り絶対に空席にならない席が空いていて、誰も座ろうともしない、全ての瞳が…棺が閉じて誰も開こうとしない…今代の席が空いていたら、私の代では、隙あらば表に出ようとしていた瞳達が、誰も動こうとしない?


泥の中にいる…はずもなく、気配がない

今代の私だという意識を感じることが出来ない、瞳達に質問をしようにも瞳達は隠れているかのように棺が開く気配がない。強引にでも棺をこじ開け声を掛けようにも…この体には魔力が流れていないのか…魔力を感じることが出来ない。


いま、どういう状況なんだろう?魔力を感じることが出来ないから、思考を加速させれないし、何よりも…


脳の一部が動いていない様な、そんな不可思議な気分というか感覚が邪魔をしてくる。


うーん、頭がスッキリしない、思考が遅い、きっと、この体に魔力が満たされていないから、魔力が無いのだから仕方がない、よね。


少しでも情報を求め病室の隅々にまで視線を彷徨わせていく、メイドちゃんが私の部屋をチェックするかのように…

得られる情報が、何度も何度でもここが病室だよっとしか得られる情報が無いのと僅かな違和感だけが伝わってくる。

うーん、ここが病室だとは解るんだけどさぁ、なんだろう?なんでなんだろう?

なんかこう、言いようのない違和感を感じるのは、何でだろう?


虚空に向けて手を伸ばしてみる、視界に映る手には何も違和感を感じ、ない、のが普通の筈なんだけど、自身の手なのに、腕なのに、何だろうなんか違和感がある。

視線を下に向けてみる…うん、患者衣だ、形状も着心地も違和感はか…んじな、い?は、ずなんだけどなぁ、なんか違和感ある。

少しだけ前のめりになりアレが装着されているのか確認するために手を背中に伸ばしてみる。

背中に手を、手を、、、うーん、器具はない、ついでに言えば、髪の毛、括ってるのかな?髪の毛が手の甲どころか手の先にすら触れなかった。

まぁ、病室に運ばれて何かしらの処置されている時は大概、髪の毛を纏める様に括られているだろうから、そこは違和感とは違う。


魔石と私を繋ぐケーブルを用いていないってなると、あれかな?彼と出会ってから少し経過したあとの時代、だったりする?…ん~、時折、起きては事務作業とか研究に不備が無いかの確認をしたような気はするんだけど、困ったことに、そういう時の記憶って私にもはっきりと残らないんだよなぁ…


今が何年で私は何歳何だろう?経験則的に私の時計は20歳ころが限界だと思うんだよね、だから、残された時間を把握するためにも情報が欲しい、なぁ…

耳を澄まして周囲を探ってみるが、誰かが病室に入ってくる気配も無い、その上、すっごく静か!多くの人が歩き回るような慌ただしい状況ではない。

これだけでわかるのは今が夜なのかもしれないのと、今は、平時だということ、かな?緊急事態であれば、病棟は大忙しになっているはずだもん。


部屋に誰かが来るのを待っていても仕方がない、ちょっと歩けば、えっと、あれ、えっと、うん、医療の父が、診察室にいる、よね?


名前が思い出せないほどに、まだまだ、思考が目覚めていないのは、ちょっと歩けば起きるでしょう。

取り合えず、着替えて、病室の外に出て歩けば、だれか、うん、誰かってよりも、えっと、うん、彼女の方が適切かな?メイドちゃんでも捕まえてみるか


ずっと靄がかかっている思考が気持ち悪く感じてしまうが、それよりも情報が欲しい。

ベッドから立ち上がる為に、足を動かそうといつものように体を動かそうとすると…足が動かない。


むぅ、困ったな、力が入らない。

麻酔の影響かな?痛み止め系統の薬、の影響、かな?

動かないのであれば動かせれる部位を動かせればいい、腕の力で這ってでも外に出れば、誰か見つけてくれるでしょ。

もしくは、何か物を投げて音を出せば、気が付いてくれる。

そうと決まれば、手の届く場所に何か無いか探してみる。


…何もない、手の届く場所にあったのは私の下着だけ!ってことは、あれか?この下は素肌ってこと!?

確かめる為に患者衣をぺろっとめくってみると


…ん?


患者衣の隙間から見える景色に見覚えが無い。

…んん?

一度、天井を見て思い出す、よく知る景色を思い出してから

もう一度、患者衣をぺろっと捲って、よく知る景色を思い出しながら患者衣から覗かせる景色を見比べる。


やっぱり、おかしい。私の知っている景色と違う。

違和感の正体を手で掴んでみる…うん、違う。


「大きくない?」

揉み心地に違和感はない、変な感触しな、ぃ…本物だ…何かの幻術ではないっと断定できる。私なら見栄を張る為にしていてもおかしくない、常時認識をずらして大きく見せているわけじゃない。


見た目を誤魔化すための術式であれば触れてみると真実が顕わになる、なのに、手から伝わってくる感触が幻覚ではなく真であると伝わってくる。

思考がクエスチョンで埋め尽くされ、状況が呑み込めず、揉み揉みとどうして違うのか理由を考えていると

「…何してるの?」

病室に居たの?ドアが開く音しなかったんだけど?この病室は幹部用の特別室だから給湯室とかトイレとか用意してあるんだよね。

お母さんの声がした方へと視線を向けると、ハンカチで手を拭きながらだから、トイレに行ってたのかな?…ん?

「…老けた?」

率直な感想が言葉となって喉から零れてしまい、脳天が揺れる衝撃で失敗したと痛感する。彼女に対して絶対に言ってはいけない失言じゃん…どうしたの私?

「そりゃ老けるわよ!あんな、あんな!心配かけて!!何日も碌に寝てないわよ!こちらすっぴんよ!!ったく!起きた第一声がそれってどうなのよ!?」

言葉と、声の雰囲気から悟ってしまう、今の状況が少し見えた気がする。

今代の私は何かあって気を失っていたのだろう。その衝撃が凄すぎて、今代の私の意識を感じ取れないの、かな?

叩かれた衝撃で彼女から視線が外れてしまったので、怒っているであろう彼女の表情が見えた瞬間

「心配かけてごめん」

素直に叩かれた頭を上げて直ぐに下げて謝る、それ以外の行動が許されないのだと彼女の表情が物語っている、今代の私は何をしでかしたのか、想像がついてしまう。命を賭けたのだろう。

「いいのよ…もう、二度と会えないとおもった」

頭に柔らかい感触に包まれていき、背中にも暖かい想いが巻き付いてくる

甘えるようにお母さんの胸に顔を埋め

「…うん」

何も言えず、頷くしか出来なかった。


…ただ、ここでも違和感がある、これを言えば次は頬を抓られると分かっていても何故か喉が開き言葉が漏れる

「お母さん、太った?」

「貴女ねぇ!なに?このボディがふと、ふと…ぐ、ふと…っぐ…」

背中に回された手が震えている、何かと葛藤しているのが伝わってくる

「私の気のせいじゃなかったら、太ったって言うよりも、あれ?胸大きくなった?」

記憶の中にある幾度となく抱きしめられた経験が違和感を伝えてくれる、だって、押し付けられている圧が違うんだよなぁ。記憶の中にある圧迫感よりも強いわりに抱き寄せられている力は左程、強くないんだもん。

「そりゃ、大きくなるわよ、貴女も知識として知っているでしょ?子供を産んだばかりよ、当然じゃない。」

・・・こども?

その言葉を聞いた刹那、記憶の蓋が少しだけ開く。

そう、だ、そうだったよね、今代の私はお母さんにスピカを産んでもらったんだった、私が、希望として救世主を…

「ねぇ・・・お母さん」

「何よ?次は何?お母さんは、まって、お母さん?久しぶりに貴女からお母さんって呼ばれる様な気がするわね、何時もはNo2って呼ぶのに」

そ、ぅ、そう。お母さんって友達の前で呼ぶのがちょっと気恥ずかしくなってっていう理由でお母さん呼びからNo2呼びへと徐々に変えて、きた。

会話を続けて行けば行くほど、今代の私の記憶が掘り起こされていき


起きてからずっと感じていた違和感に辿り着こうとしている。




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