生きるべき、未来を導くのは…彼女の方だ
彼女たちの歩んできた道が…全てが流れてきた…
その全てを抱きしめ奥へ進む、託されたから、何も知らない私を…見守ってくれた人に託されたから!!
それだけじゃない、私の意思が魂が…崩れないように祈りを届けてくれている人達、彼女たちの純粋な願いを叶えるために私は…脳の奥へと進む
長く永い、終わりのない悪夢のような世界を体験した、多くを自身に起きた出来事だと錯覚しそうな程に。
それでも、私は私、彼女は彼女、しっかりとお互いの事を判別することが出来ている。何も問題なんて無い。医療班の団長としての直感?違う。私は…覚悟を決めている、願いを叶えるために…
何処か、わからない、どうしてそんな記憶があるのかもわからない、そんな、薄っすらと覚えている憧れの少女たちのように私も奇跡を起こす
彼女の眠りを…永遠に目覚めさせないようにしている悪しき場所に辿り着く
脳の一部が他と違って小さくなっている、たぶん、壊死しているとみていいと思う。
壊死しているのならなら助けることが出来る!魔力を得る為に部位を魔力に変換してないんだったらいける!
壊死した部位を切除して、魔力によって再生すればいい!その部位に残してしまったものは消えるかもしれないけれど、脳として動けば問題ない!はず!
姫様は帰ってくる!
…ただ、魔力で生み出したとしても培養したモノではないからかなりの量の魔力が必要になる。
…私に残された魔力では、この部位を再生させたとしても。
後ろを振り返って道のりを見る迄も無い、わかってる、わかってしまう。
帰ることは出来ない。
No2に引き上げてもらおうにも距離が離れすぎている。
彼女の手は届かない、魔力を使って脳を再生するには…届けられている皆から伝わってくる祈りだけじゃ足りない。
足りないのなら、どうすればいいのか。
いっぱいいっぱい、教えてもらった、彼女の歩んできた道が教えてくれる。
無いのなら、変換すればいい、全ての物質は魔力を宿す。
そう、魂も魔力を宿している、だよね?姫様…
なら、私の魂を魔力に変え、姫様のひとつになる。
起きたらきっと、怒るだろうね。
でもね、さようなら、さようなら、さようなら、なんだよ、お姉ちゃん。
覚悟を決めた瞬間
色んな記憶が私に呼びかけてくる、今も、必死に私達を救おうと身を削っている人達の記憶が私が死なない様に呼びかけてくる。
No2、色んな事を教えてもらった。
先駆者で先輩であり、医療班の後輩って立場以上に色んな事を教えてくれた、医療の事だけじゃなく女性としての先生でもあり、団長の座をかけたライバルでもあったんだけど、今にして思えば私に挑戦するという試練を与え成長させたかったんだろうな…そんな手厳しく、導いてくれた、もう一人のお母さん。
お父さんが好きになったのもわかっちゃうなぁ、綺麗で凄く、心も…
女将、何時も力強くて、色んな人に愛されていた。
彼女の生きて歩んだ歴史が私に夢を魅せてくれた、肉体が男性だとしても、私を愛してくれる人がいるんじゃないかって彼女に出会う為に希望を感じた
ベテランさん、最初は厳しい人だと思った。
でも、それも今ならわかる、どうして厳しかったのか、残ってしまったから、あの戦いで死ぬべき人は自分だと彼は思い続けている。それでも、未来が自分に託されたのだと受け止め、その恩によって厳しく私を戦士へと導こうという想いからだったから、怒るに怒れない。
この街に来た当初、何か困った時があればいつも、影ながら手を貸してくれた、時折、渡されるエッチな本にはどう反応すればいいのか、わからなかった。
長、私の好きな人と結ばれちゃった人!…特に何かあったわけじゃないけれど、貴女の、女性としての幸せを、羨ましいと何度も感じていた。幸せになってね。
ティーチャー、同時期にこの街にきて、運が良かったのかな?それともそういう運命なのかな?って舞い上がる日々、出会ってから徐々に心惹かれていく人と同じ部屋で過ごした…好きになった人。
訓練が終わって何度も何度も、私の体が女性だったらって、強く願ってしまった。
諦めたのかと言われると、正直に言えば、今も、好き、ティーチャーが。
だって、諦めきれないよ、だって、私が女性に近づいた時、意識してくれたのか目を合わせてくれなかった時があった、嬉しかった。
でも、貴方の愛は、一つだけ、幸せになってね。
お兄ちゃん、ずっと、私を見守ってくれていたんだね。
男の部分だと思っていたのは、お兄ちゃんの意識が流れ込んできてたのかな?
…荒っぽくて手が早いのはきっと、そうだよね?ありがとう。貴方の愛した人は私が救います。
まだ、私の中にいたのなら、次は…次こそは、幸せになってね。
姫様、私のお姉ちゃん、私、いっぱいいっぱい、お姉ちゃんと遊んだよ。
いっぱいいっぱい、お姉ちゃんと過ごしてきたんだね。
ごめんね、知らなくて、ごめんね、気が付かなくて、ごめんね、私が馬鹿で鈍感で…
貴女の愛する人を独占してごめんね。
いま、いくね・・・
魂を燃やし、魔力へと昇華する、覚悟は決めてきている、躊躇うことは無い、色んな感情が祈りが肩を腰を全身を掴んでいる、それを一つ一つ解いた、意識を向ければスイッチが何時でも押せる位置にある。
指を伸ばしそのスイッチをお「ここから先は僕の、俺の、俺達の出番だよ、ユキ」とんっと突き放される?スイッチが遠い場所に
「ここまで、良く進んだ、さすがは俺達の妹だ、お陰で俺達は万全な状態でここまで来ることが出来た」
突き放され離れていく…手を伸ばせば届く場所が遠のいていく…
ふたつの、ううん、かずおおくのひかりが奥へと進んでいく
「起きるんだサクラ」
小さな光の粒が集まっていき、聞きたかった声が聞こえてくる
「・・・ゆう、き、くん?」
「そうだ、お寝坊さんだな、君は」
「勇気くん!?」
光りが姫様の形へと変わり懐かしい声が響いていく
「サクラ、待たせてしまったかな」
「勇気くん!!また、会えた、会いたかった、あいたかった」
私から抜け出て行った数多くの光りが、姫様に重なっていく
「約束を守ってくれてありがとう、ユキを導いてくれてありがとう」
「ううん、いいの、私がしたかったことだもん、そんなの、お礼何ていいよ」
小さな光りがつよく、強く、強く、輝いていく
「僕は、俺は、俺達は、君と共に生きる、約束したじゃないか、最後の最後まで俺達は君の傍に居る」
「うん、うん…待ってた、ずっと、待ってたよ」
光りが一つの大きな光へと
「君のシステムとなる、さぁ、起きて、僕たちで世界を救おう」
「…うん、愛してる勇気くん」
「ああ、俺もだサクラ、愛してる」
光りが強く輝き、見せる全てが…全てが真っ白に染まる…
白い世界から遠のいていくと
視界が弾け、目を開き息を吸う
「っは!?ぁ、み、皆?」
全身が暖かい何かに包まれているのが分かる、視線を水槽の中に向けると水面が揺れ、水中から手が伸び人差し指が天を指す…それを見た多くの人が歓喜の声を上げる
「「「姫様!!!!!!」」」
お祭り会場の様に多くの人が涙を流し大きな声で叫んでる
彼女を救えたのだと報告するために自然と胸に手を当てると…完全に私の体から居ないのだとわかってしまう。
何処か、何処となく、ずっとあった感覚が無い、自然と感じていた、感じることができていた何かが空虚となっているのがわかる、完全になくなっている。
今までの事、これまでの事、明日の事、全ての事に感謝を捧げ、視線を前に向ける。
姫様が入っている水槽を見ると、医療班が水槽の水を抜き、姫様を抱きかかえている、呼吸器を外され嗚咽を出しながらも目が開かれていて…
此方に向けて手を振ってくれた
その姿を最後に私の視界が真っ暗に染まっていく…




