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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (146)

うん、確認したけれど、特に変化はなし。

皆はまだまだ戦えると信じて踏ん張ってくれている。


・・・絶対に言えない、私の死期がもう・・・


そんな事を考えているなんてメイドちゃんには一切見えさせない様に、世間話をしながらいつの間にか集まってきていた各部署の人達に今後の指示を細かくだしていると

「すまん!待たせた!何処で着替えるんだ?」

愛用の鎧を装着し、片手にヘルメットを持った勇気くんが戻ってきたので

「バイクの倉庫で着替える」

返事を返す前にメイドちゃんが戦闘服を受け取ってくれている

「勇気くんも戦闘服、着てる?」

「ああ、勿論だとも、君が用意してくれたんだろう、これは」

口元に指を当てて合図を送ると、その意味を察してくれたのか、一瞬だけ口ごもり

「触ってみた限り、新品っぽいから新調してくれたのだろう?前のは少し窮屈だったからな助かるよ」

理解してくれたみたいで言葉の流れ的に違和感ない、それが、私のデスクから持ってきた特別製だっていうのを知られたくない。

「っそ、少しずつ綻んでて来てたから慌てて持って来たんだからね」

「ああ、感謝する」

片目を瞑ってウィンクをし合図に気が付いてくれたことに感謝を伝える様に見つめ合っていると、スカートを引っ張られる

「姫様、お着換えは?」

少し不満そうな顔で急かされる?

なんだろう、やっぱりメイドちゃんも勇気くんの事が好きなのかな?二人だけの世界に入られるのが嫌だったり?


だとしたら…私が居なくなった後、彼を支えてくれると期待してもいいかな?

メイドちゃんだったら、許してあげる。他の人や、嫌だなぁ…

「うん、移動しよっか!」「はい!」


メイドちゃんと一緒に倉庫に入ると直ぐに倉庫の扉を閉めてくれる。

何時もの様に着替えさせてもらうんだけど、何時もと違うのが特に何も会話をすることなくお互い無言だった。

素早く着替えさせてもらい倉庫に用意しておいた隊服を着せてもらうと

「…珍しいですね」

着替え終わった私の姿を見て何度も瞼をぱちぱちと閉じたり開いたりして小さく驚いている。

私が隊服を着ることに違和感というよりも物珍しさが勝っている感じかな?

「うん、汚して良いスカートも、もうないし、致し方なし」

可愛くないよね~っと嫌そうな顔をすると、苦笑してから、成程っと、小さな返事と共に納得してくれている、納得してくれたはずなのに彼女の視線が私から離れない。じっと、見つめられてしまう、僅かな違和感でも感じてそれが何か考えてるんだろうね。

「どうしたの?何かおかしい?」

「い、いえ、その、隊服もそうなのですが、戦闘服も何か以前のと違うような」

むむ、鋭いなぁ…戦闘服の方だけ違和感を感じるだろうねって思っていたけれど、両方の違和感に気が付くとは!

今まで使用してきた戦闘服も隊服も、今回のは特別仕様だから、内部構造が、別物だからね。

開発者なら気が付くけれども、見た目だけみれば、本当に些細な違いしかないんだけどなぁ。メイドちゃんのこういうところが油断できない。

「そりゃ、当然でしょ?私専用だもの、常に!最新式が完成したらすぐに切り替えるっての」

当たり前じゃん、何言ってるの?っと、至極当たり前な理由を添えると

「なるほど!以前のと違うような気がしていたんです!新しい隊服なんですね!」

納得してくれたのなら、いい、かな?

出来る事ならさ、嘘はつきたくないんだよね、メイドちゃんには…

嘘をつかれたってバレちゃうと一気に信用が落ちちゃうし、何よりも、ここまで尽くしてくれた彼女を裏切りたくない。

「じゃ、私達は少し早いけれどラアキさんと合流して、この戦況をひっくり返してくるよ!」

「はい!」

疑う事を知らないのだと感じてしまう程に屈託のない眩い笑顔…

その笑顔を見てついつい、比べてしまう。

最初に出会った時と比べて彼女もまた大きく変化したよね。心の底から信頼して付いて来てくれてありがとう。


貴女もまた、私の大切な人…家族だよ。


倉庫から出ると多くの人達が見送りに来てくれている。

その多くが瞳を輝かせ、まだ、希望に溢れている。


この光景も見治め、集まってくれた皆の顔を眺めていく

…惜しむらくはここにお母さんが居ないってことかな、ううん、これでいい、お母さんにはちゃんとお別れは済ませているから、いい、ここにいたら、お互い、感情が昂っちゃってさ…不穏な空気が一瞬でも漂っちゃう。


「繋ぐぞ」「うん」

がちゃりと金属がロックされる音を出しながら背中にケーブルが刺さり体内に魔力が廻ってくる。

「…どうだ?」「うん、問題ないよ、いける」

ケーブルを繋げてくれた人の表情が良くない、一瞬だけ口元を歪め目元に涙が薄っすらと浮かんでしまっている。

それはダメだよっと目線で訴えると、一呼吸だけ吸い込み、気持ちを切り替え終わったのか

「では、俺達がこの戦況を打破するために一手を講じてくる!皆…任せたぞ」

戦士長として、ううん、この街を守り導く偉大な王のような威厳のある雰囲気。この一言、たった一言で、皆が大きな声で任せてっと叫び喝采が湧き上がる


…この光景を見るとさ、情けない男なんかよりも、やっぱり、君が王として君臨するべきだったんじゃないのかな?うん、そうだよ。戦場で私が死んで、彼がこの世界を導く。


大きな歓声が沸き上がっている最中、少し離れた場所で姿勢を正し皆と違って険しい表情?苦悶しているような、顔つきで全体を眺めている人物に声を掛ける

「メイドちゃん」

「は、はい!」

慌てて此方に近づこうとするのを手で制止させ

「笑って」

「ぇ?・・・」

何かを察したのか、大きく見開いた目の淵から涙が溢れ出てくる

「わらって」

口角を上げて笑ってみせると

「・・・」

彼女の頭の中から離れようとしない絶望の言葉に彼女の精神が思考へと至らせれていない

「わらって、ほしいな」

出来る限り此方も笑顔を維持する、私だって涙が溢れ出てきそうだけど、涙を流すわけにはいかない、震える口を震わせない様に力を込め懸命に口角を上げながら笑みを維持し続けていると

「・・・はい」



大粒の涙を流しながらとびっきりの…綺麗な華が見えた



「繋がりました!」

合図と共にサイドカーに乗り込み、必要なモノ全てを念動力で浮かし先に転送の陣へと投げ込み終わるとバイクも転送の陣へと飛び込んでいく…大きな歓声が途絶え開けた世界に来ると同時にバイクに備え付けてある認識阻害の術式を最大出力で作動させると「わしを置いて行くな」肩を掴まれる…

どうやらラアキさんも認識阻害の術が施されたマントで身を隠していたみたい。

きっと、メイドちゃんから借り受けたんだろうね。


っはぁ、お爺ちゃんに見つかる前に認識阻害の術で隠れ移動しようとしたんだけどな、ダメだったか。


「ダメだよ、ついてこないで」

振り返ることなく突き放す、捕まれた肩に力が込められる

「ダメだよ、ここから先は…二人で行く」

振り返ることなく何度でも突き放す、肩に込められた力が弱まる気配がない

「ダメだよ、はっきり言うね、ここから先はラアキさんは足手まといだから」

振り返ることなくきつく突き放す、込められた力が震え始める

「ダメだよ…知ってるよね?…私の時間がもう、無いの…白き乙女の運命、貴方が知らないわけ、無いよね?ラアキさん」

振り返ると、睨みつける様な鋭い視線を保ちながら大粒の涙を流している

「それでも、わしは!…命を助けてくれたものを…」

「違う、ラアキさんは死に場所を探しているだけ、貴方は…私と違って生きる力がまだある、死にゆく運命じゃない…」

掴まれた肩、力が緩む気配がない、こればっかりは何を言われようが譲れないのだと伝わってくる…私だって、わたしだって、貴方が傍に居てくれるだけで心強いって感じないわけじゃない…でも…

「もう一度言うね、私を貴方の運命にしないで、私を理由にしないで」

掴まれた腕に触れると指先が震え力なく膝が折れ地面に膝をつく

「司令官として命令します、貴方は街に帰還し籠城戦の指揮を担当してください」

「聞けぬ、わしが去れば、お前たちに何かあったときに街に帰還する時間が延びる、いざという時に退路としてわしを連れていけ戦闘には参加せん、頼む…」

祈りを捧げる様に懇願されたとしても、私は何度でも突き放す

「ダメ、転送の陣が敵に奪われるリスクがある以上、これ以上奥へと進んで欲しくない、それが敵の手に渡れば人類は滅ぶ」

転送の陣がどれ程、危険な品物か、わからない人じゃない。

「燃やせばよい…お前たちを見送った後、奪われる前に燃やす」

「ダメ!それがあるのとないのじゃ、先の未来、大きく後悔する!戦犯にさせないから!」

掴まれた肩から手が外れ、私の腕を握りしめられる…震える手から彼の感情が伝わってくる

「たのむ、頼む!わしはもう、おれはもう、みらいを、あすをうしなわせないでくれ」

あの時、彼からすれば満足する死に方だったのだろう。

それを強引に生かしたのだと言ってきたら問答無用で突き放してやろうと思っていたのになぁ…しょうがない…

「…ごめんね、失うのはもう…どうしようもないの、私の為に涙を流してくれてありがとう、幼い私に付き合ってくれてありがとう、大好きだよお爺ちゃん、私の為に人類を導いて」

掴まれた腕から力が抜け離れていく…ごめんね、お爺ちゃん。大好きだよ…

「いこう」「ああ」

バイクで少し離れるとラアキさんの姿を見ることが出来なくなる

風が…彼の悲痛な叫びを届けてくれたような気がした…


「辛い役目を押し付けてしまった、すまない」

「ううん、私じゃないと彼は一歩も引かないと思う」

多くの涙と、多くの希望の声を置き去りにし、バイクは進んでいく…

周囲を見渡しても何処にも敵がいない、私達が奥へと進んでいるのは知っているはずだろうに


…何も駒を置いていない…


来るのを待っている、これ見よがしに待っている。

っであれば、罠があるんだろうね。間違いなく、私達を迎え討つための罠がある。



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