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最前線  作者: TF
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Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (141)

彼から魔力を貰った後は、情報を集めたり、関係各所に指示を出すのに必要な時間から逆算し指定の時間になったら合流すると決め、関係各所に指示を出す為に行動を開始する。


休憩室を離れ、私としては一番情報を集めているであろう人物を探す。

情報を得る為にメイドちゃんの所在を医療班に尋ねてみると場所を教えてもらった、部屋に入ると疲れ果てたメイドちゃんが病棟の一室で寝ていた。

ベッドの近くに行くまでもない、彼女の寝ている表情が見えてしまった。

苦悶の表情で寝ている彼女を起こす気にはなれないのでそっとしておいた、一つのメモを残して

病棟の外に出ると、運よく伝令班を見つけることが出来たので、伝令班から戦況を教えてもらった。

戦況は芳しくはないが、今すぐ街が落とされる心配はない、幾ばくかの余裕がありそうと判断し、籠城戦として敵が門をくぐらない様に徹底的に守りを固める様に関係各所に伝える様に指示を出す。

幸いにして、転送の陣は街に帰還しているので奪われることは無い。

見たことのない獣達も戦士マリン達からすれば無傷とはいかないが対処できない相手ではなく、何とか、対処は出来ている。


籠城戦だといつまで続くのか不安が募り士気が落ちる、希望を残す。

あと三日もすればカジカさんが戦線に復帰するからそれまで踏ん張って欲しいと伝える。


伝令班が駆け出すのを見送ってから、最後の戦いに必要なモノを確認するために移動する。

地下室へ向かい、大型魔石に残された魔力を確認しにく、どの程度、残されているのか、ある程度予想はしている、その予想を裏切ってくれると嬉しい

けれど、賢い頭が計算した予想通りだった…


あれ程の培養、急速的に魔力を消費したのだから、こうなっているだろうと予想はしていた。


残された魔力は、大型魔石が一つと、僅かに輝きを放っているのが一つ。

クィーンに残された魔力も半分は消費しているとみておいたほうがいい。


空っぽの中型魔石を繋ぎ、大型魔石から魔力を移させる。

地下室から出てクィーンの状態を確認し、クィーンに残された魔力は…そのままにしておこう、これがあれば固定砲台として機能しやすいだろうから。

ただ、搭載してある秘密道具で必要なモノだけ集めてある場所に運んでおく


切り札を入れた箱、これそのものが特殊合金で出来ていて非常に頑丈

いざって時に盾としての役割もある。


研究塔に向かい、私のデスクに保管してある…戦闘服二つを手に取り部屋に戻る

部屋に入り戦闘服をソファーの上に置いてから、長い事、座っていなかった椅子に座り背を預け天井を見上げてしまう。


五分にも満たない時間、何も考えずに天を見上げてから、机の引き出しから代々受け継いできた聖女たちの日誌を取り出し机の上に並べて置く。

管理する人はもういないっという意志を込めて…


私の代で聖女は終わりを告げる


引き出しから鍵を取り出し、机の引き出し、研究ノートをまとめた金庫、部屋にある全ての鍵を解錠していく。

私が居なくなった後、誰でも閲覧できるようにしておく。

鍵が無いからって強引に開けられると中に保存してあるモノが壊れちゃうからね。


クローゼットを開き、集めたコレクションを眺める。

平和な時代が来た時に備え

愛する人と一緒に遊びに行く時に備え

友達と一緒に遊びに行く時に備え

親孝行をする時に備え


出番が来ると信じていた、可愛らしい私好みにオーダーメイドして用意したお洋服たち…

完成した時に一度だけ袖を通しただけのお洋服を抱きしめ、別れを告げる。


時計を見ると、まだ時間がある。

最後の最後くらい…お風呂に入ろう、汚れるのは判っているけれど、最後の最後、彼の傍に居るときくらい綺麗でいたい。


部屋にある個室にも思い出がある。

普段は滅多にこの部屋でお風呂に入らないけれど、メイドちゃんにお風呂を入れて貰ったり、お母さんが私の部屋で遅くまでお酒を飲んだ日は、一緒に入ったりもした。


体を洗っていると思い出す幼き頃に怒られた言葉…

姫ちゃんは洗い方が拙い、もっと隅から隅まで丁寧に洗いなさいと何度も怒られた、それに対して、幼い私は、なら、洗ってよ!っと逆切れしたことを思い出してしまう。

それからは、お母さんが私の体を洗ってくれることになった。

お陰様で私は何時だって綺麗、お陰様で体を洗う方法を良く学ばせてもらった。


言われたとおりに隅々まで綺麗に洗う

脱衣所に用意されているタオルで体をふき取ってから小さいガウンを取り出して着る、もう一つの大きなサイズはお母さんの


頭にタオルを巻き部屋に戻り冷蔵庫から冷たい果実のジュースを取り出して飲む。

長い事、この部屋に戻ってきていないのに果実のジュースは新鮮だった。

きっと、メイドちゃんだけじゃなく、街を清掃したり皆の隊服を洗濯してくれる人達が気を聞かせて補充してくれていたのだろう。


飲み物を飲み干し、机から一枚の紙にありがとうっと書き、空き瓶の下に紙をおく。

ソファーに座り火照った体を休ませていると、何かに呼ばれたような気がして本棚へと近づいていく。


本棚から一つの本を取り出す。


はじめてのじゅつしき


何度も何度も読み返した大事な本、私に術式の可能性を魅せてくれた

抱きしめ感謝を伝え表紙を撫でてから本棚にしまい、その隣にある…

幼き頃にお母様が読んでくれた御伽噺、それが綴られている絵本

この話を聞くたびに、お母様の事を想いだすことが出来る。


今ではもう、顔も声も思い出せない

色褪せてしまった思い出…


本棚に絵本をしまい、その隣にある様々な研究書物を眺めてしまう。

幼き頃にお母様を救う方法がないか探す為に術式に触れた、その可能性に触れれば触れるほど、術式に心惹かれていった。


その集大成が…これってね。

ふふ、短い命のはずなのに…誰よりも長生きしてる様な不思議な命…

心残り、悔い、願い…不完全燃焼なのは認める。

幼き頃の夢は叶わず

復讐を果たすことは叶わず

研究の為に犠牲になった願いも届かず

新たな夢も叶わず


身を焦がすほどの炎も…もう、燃え上がらない。


私を構成し私を突き動かしてくれた全てに感謝という名の祈りを捧げる。


祈りを捧げ終わったら、ガウンをソファーの上に置き、下着を着てから、クローゼットから…好きな人が出来たら着ようと思っていたお上品な…淑女として間違いがない落ち着いた雰囲気で紺色のロングスカートにフリルが袖の部分と襟元だけにワンポイントとしてあしらって貰った、藍色の服に腕を通す。

靴はロングブーツ、これは譲れない。

下手なアクセサリーは身につけない、だって、そんなものが無くても私が宝石だから。

化粧台に座って、軽くお化粧をする。

鏡に映った人物がいる、とてもとても酷い顔、青白く、クマも出来てるし、唇が真っ青を通り越して紫色、人に見せれる顔じゃない。


でもね、私はね、御伽噺みたいに魔法が使えるの。


青白く生気が宿っていない肌をチークによって血の通った肌へと生まれ変わっていく。

紫色に染まった唇を…あの日、つけていくと決めていたお気に入りのルージュで染めていく。

お化粧が終わるころにはとびっきりの宝石が誕生していた。


戦闘服を手に持ち、お誘いに行く。



コンコンっとノックすると

「どうぞ、入ってくれ」

声がする、でも、ドアを開けない、もう一度、丁寧にドアをノックする。

落ち着き、優雅に、気品あふれる様に…

すると、足音がドアに近づき、ガチャっと音を出しながらドアノブが動き


ドアが開く


「どうし…」

「御機嫌よう、愛しの騎士様…」

スカートの裾を摘み、少しもち上げてから丁寧にお辞儀をする

ゆっくりと優雅に頭を上げ、両の手をお腹の前で重ね

「勇気くん、デートのお誘いに参りました」

微笑を浮かべ、彼を見つめると、察してくれたみたいで、微笑みを浮かべてくれる

「これはこれは、何て綺麗なお嬢様だろうか、かようなレディをドアの前に立たせるなぞ、無礼にもほどがある、直ぐにでも部屋にお通ししたいのだが、むさ苦しい部屋で尚且つ、散らかっていて申し訳ない、こんな綺麗なレディが訪れるのであればもっと部屋を綺麗にしておくべきだったと、時計の針を戻して説教しておくべきだったかな…」

胸を張って腕を広げ仰々しいリアクションを取ってくれる。

まるで、御伽噺に出てくる王族の様に。

手を前にだし

「どうぞ、この様な場所で申し訳ありませんがお手を失礼」

優雅にお辞儀をしてくれるので彼の手を握ると部屋の中に案内される


特にちらかっている様子も無く、掃除も行き届いている部屋の中央にあるソファーに案内されゆっくりと座らせてもらう

「さて、姫様、少々、お時間をいただいても?」

「…うん、ごめ」

行き成り前振りも無く彼の部屋に来たことを謝ろうとしたら唇の前に人差し指の先が触れ

「いいんだ、まだ時間はある。思っていた以上に、皆が良くしてくれている、俺も…君に…サクラに会いたかった」

着替えるから少し待ってくれっと言い残し、慌てて洗面台に向かっていった、水の流れる音が聞こえ、歯を磨く音が聞こえてくる。


彼の仕度が終わるまで、彼が過ごしてきた部屋を眺める。

相も変わらず殺風景、必要なモノ以外、何も置こうとしない。

それも仕方がないよね…騎士や戦士の多くが同じだもん。


戦うこと以外、何もしない…滾る部分は知らない!

私みたいに、綺麗なモノを飾りたい、可愛いモノに囲まれたいなんていう趣味に時間を割くゆとりがない、無かった…


「待たせてすまない」

後ろを振り返ると、黒のロングシャツに、ズボンは何処にでもある紺色の長ズボン、彼の普段着、だけど、何時もと違う部分がある。彼の指先が普段と違って白い手袋を身に着けている?珍しい、そういうの持っていたんだ。

「こういう日が来るのだと知っていれば、一つや二つ、用意しておくべきだったかな」

笑顔で手を前に差し出してくれるので手を握ると、ゆっくりと立たせてくれる

「では、何処に行きましょうか?姫様」

「えっとね、時間もあるし、アレの試運転も兼ねてさ、デートに行きたいな」

アレ?どれだろう?っと不思議そうにしているので、空いた手を前に突き出し、何かを握るような手の形にした後、手の甲を上にするように手関節を曲げると

「ああ!アレか!バイクか」

うんうんっと頷くと

「良いな、っとなると、少し遠出するのも」

にこやかに笑ってくれると、腕を組むとゆっくりと彼から魔力が流れ込んでくる。その意図がわからない私ではない。

「では、参りましょうか、姫様」

彼にエスコートされるように彼の部屋をでて、バイクを保管している場所へ向かっていく。

当然、誰かに邪魔されない様に認識阻害の術を起動させながら。






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