Dead End ユUキ・サクラ 妖闘桜散 (130)
臨戦態勢となり緊張感を高めていく…!!
何時でも!どんな人型が出てきたとしても!強襲する!!お前らに二度とこの街に足を踏み入れさせやしない!!それに…運んでいた人達を殺した罪、その身に、いや、魂に刻み込んでやる!
必殺の姿勢を取り溢れ出る殺意を周囲が感じ取ったのか慌てふためき陣の近くにいた非戦闘員の人達が足がもつれる様に慌て離れていく。
此方が言わないでも避難してくれるのは助かる…
周りを気にすることなく全力で殺せる!!
周囲に視線を向けていると転送陣から肌色が見え溢れ出る殺気を抑えると、雪崩れ込む様に「医療班、彼らをびょうとうへ…!!はぁはぁ、お願い、仲間を、ぅ…」傷つき血を流した人達が陣の向こうから現れる
多くの人が雪崩れ込んでくる…?それも怪我をした人が!?
困惑した状況、誰に声を掛けるべきか悩んでいると古くから馴染みがあるひとのかおがみえ「はぁ、何とか、逃げ…姫様!?嗚呼、月は、始祖様は私達を見捨てていません!!嗚呼、ここに姫様がいらっしゃるなんて、感謝を!!」
真っ赤に染まった包帯、その上に止血バンド、痛々しい姿に思考が止まろうとし、肩を抑えながら駆け寄ってきた人の右側を見て血液が沸騰しそうになる
このひとは…おさないわたしに…おさなかったころのわたしに!!!
お母さんと同じように古くからこの街で医療班の看護師として働き続けてくれた人!!戦場で腕を無くしていい人じゃない!!
今にも倒れそうな彼女に急いで近づき支える様に腕を伸ばし何が起きたのか思考が止まる前に知ろうと声を絞り出す
「何が!?あっぁ…」
彼女の右肩に触れた瞬間、湿り気があり暖かく赤い色が手に付着する。
その感触が…
一気に現実味がましていき抑えきれなくなる…
忘れていた感情が爆発する
「あり、がとう、ひめ、ちゃん…ううん、司令官、私達は、転送の陣を運んでいる、はぁ、っく…」
必死に抑えようとしても
「とちゅ、ぅ、戦士長からの伝令で…右部隊」
溢れ出ようとしてくる怒りの…どす黒い火の柱が
「に、むか、ぅ途中…襲撃にあいまし」
全身を預ける様に彼女の意識が飛び、私に抱き着く様にもたれ掛かってくるのを無意識に受け止めると同時に
思考が止まる…
「門は開いたまま!維持して!ここにいる人達全員で彼らを病棟に運んで!急いで!」
音が聞こえない
「行くよ!メイドちゃん!」
最後まで勤めようとした気丈な彼女をそっと地面に寝かせ
「ぶちころしてやる」
荷台に飛び乗り転送の陣へとクィーンを突っ込ませ
転送の陣から抜け出た世界には
「…」
敵の死体が転がっているだけだった
だけど、少し先で動く物体が見える
「ギリギリまで近寄って」
音が聞こえない耳鳴りだけが聞こえる
後ろを振り返ると困惑した人達が見えた
「危なくなったら撤退、全力で守って」
鎧を着た人が頷いてくれる、小さくなって顔は苦悶の表情をしていた
前を向くと、数名の鎧を着た人たちが此方に向かって歩いてくる
「ここらが限界かな、止めて」
クィーンを止め、ボックスと共に蠢く何かがたくさんいる場所へ向かい
戦士達とすれ違いざまに指示を出して奥へと足に力を込める
「転送の陣は起動してる!何とかそこまで走って!」
兜の下で唇が動いたように見えた
視線を前に向ける、遠い
無意識に箱の一つを念動力で射出すると箱と共に加速する様に私の体も飛んでいく
強風の中、目が乾こうがお構いなく敵を見据え眼前に着地と同時に箱から矛を出し敵の眼球に穿ち口を開けた瞬間に粘性の液体を搔き集め圧縮してから流し込み気道を塞ぐ、吐き出そうと藻掻くので喉に石を一つ詰め込む
藻掻き苦しみ地面に倒れたところをその辺に落ちてた槌を念動力で拾い幾度となく脳天に叩きつける
動かなくなった物質を拾い上げ近くにいたやつにぶつける様に放ち、歌う・・・
直後、物質が弾け、連続する様に光を生み出し弾け強風が全身を打つ
強風が全身を殴りつけた直後、後方に向けて祈りを捧げる、光は熱、光は粒子、光は質量、光の柱が後方へと刹那の如き瞬きが生まれる
念のために視線を一瞬だけ、コンマ数秒向けると、脳無しが肩を地面に擦り付けている
直後、光が世界を照らし大きな風が私を吹き飛ばそうとし、更には反対方向からも大きな風がうねる様に私にぶつかってくる
視線を上に向けると風に巻き上げられた影が見えると同時に祈りを捧げ胴体を撃ち抜くと光り輝き、うねりを上げて巻き上がった砂埃が消え去り新たな風が生まれ周囲に汚らわしい破片が落ちていく…
地面に叩きつけられる破片を睨みつけていると
「おぅらぁ!!」
音が聞こえた…忘れかけていた音に縋るように視線を向けると天高く人型が飛ばされている!「撃て!!」容赦なく数多くの弓矢が敵に刺さり空中で人型が弾ける
自爆タイプを爆発させるなら遠くで!っという昔ながらのセオリー!
普通は急いで逃げるのが正解だけど、乱戦中にあんな非常識なことを可能とする膂力の持ち主何てマリンさんしかいない!!
あちらの方はマリンさんがいるってことは、あちらのチームはカジカさん?
って考えると、左側で…目を凝らすと、黒鉄の大きな剣が見えた。
うん!勇気くんもいる!あの大きな剣って目立つ!御旗としても機能してそう!!
たった一つ、彼女の声によって心が落ち着いてくれた…
今一度冷静にならないと!
周囲を見渡すと爆発痕だらけ…
考えたくないけれど、全ての敵が自爆タイプってこと?
だとしたら、彼女の右腕は、爆発に巻き込まれ根元から吹き飛ばされたのだろう。
見晴らしのいいこの場所であれば奇襲が無い、自爆タイプに奇襲される危険性は低いっていう考えを逆手に取り、自爆タイプだけで波状攻撃を仕掛けてきたってこと?
だとしたら接近させないで倒すのが理想だけど!!この数!視界に見えるだけで…何体いるんだっての!!
心が落ち着いていき、何時もの感覚を取り戻しつつあると感じた刹那、一つの閃光が視界の端で生まれる
思考の隙間なんて与えないって事ね!メイドちゃんが居るであろうクィーンの方へと視線を向けると運転席には誰もいないように見える、敵もクィーンに向かう様子はない。
距離もそこそこ離れているから大丈夫だと思うんだけど、私が動ける限界距離が近い…
まぁ、何とかしますか!こういう状況を想定していないわけじゃないってね!!
自爆タイプが多いのなら封じるだけ!幸いにして敵が何かしらの魔道具を持っている様子はない!自爆タイプは自身が保有してる魔力全てを使って自爆するから魔道具なんて持つ余裕がない!あいつらそのものが魔道具みたいなもんだからね!
なら、私の専売特許ってね!自爆機構を封じてしまえばただの人型!!
見える範囲の敵全てに向けて歌う・・・敵が持つ自爆機構を封じる!!
全身から魔力を解き放ち対象に向けて呪詛…封印術式を織り交ぜた歌を歌い続ける
前回に使用したやつよりも封じる力を底上げてしている!その代わり、魔力の消費が激しい!!
クィーンから魔力を吸い出し続け、歌を歌い続ける…
すると、何処か遠くから声が聞こえてくる「敵の爆発を防いでくれている!今のうちに全力で殲滅するんだ」その声に反応したいけれど、そんな余裕がない!広範囲高出力の術式!出来れば、あと一人や二人くらい、歌を重ねてくれる人が欲しいけれど!ないモノは仕方がない!踏ん張る!!
意識が霞むほど、魔力を吸い出し続け、全身から溢れ出る魔力を呪詛へと変貌させ術式へと昇華しつづけると、裂けるような痛みが滲み出てくる。
聖女の祈りを反転させる反動が喉を焼こうとしてくる…
わかってる、ルの力と相反する術式だって、火の中に水を入れる様なモノだってわかってる…
喉が裂けるような痛みが警告となって知らせてくれるが、無視する!!
お互いが相容れぬ存在だってのは判ってる!
でも、無茶をしないとこの局面!相手に…根こそぎ全てが持っていかれる!これ以上私の大切な人を傷つけさせない!!
急速に強引に吸い出した魔力を全身から解き放ち続ける、この戦場を私の支配下にするために!呪詛を永続とする為に!!
喉だけではなく、全身が震え始め激しい痛みが全身からうねる様に生み出されていく…痛みはかっと…できるだけかっと!!
私自身に施している封印術式が呪詛に呼応しているのか、それとも、強引にこじ開けているのが辛いのか悲鳴を上げるかのように全身の皮膚が震えはじめている。
傍から見たら、痙攣をおこしている人に見えるだろうね…
無我夢中で歌い続けていると、視界の端で影が動いたのが見え、眼球を動かし確認する
一つの影が走り出してる何処に向かってる?…
進行方向を見て敵の狙いが何か察する。
歌ってる間は何もできないわけじゃない!
敵を近づけさせるわけにはいかない!
極限の単一行動では、この戦場を支配は出来ないのであれば!異なる行動をやってのける!!
多重詠唱!異なる術式をさらに!発動させてやらぁ!!
歌い続けてもらっている瞳達にとっても苦しい状況でも!
無理難題に近い願いをぶつける様に届け、光の術式を行使してもらう為に必要な魔力を捻り出し限界ギリギリの状態でも、何とか撃ちだしてもらう!!
一筋の光がクィーンに向かって駆けだした人型を撃ち抜き人型が倒れ…
爆発した。
今ので気づかれたかもしれない…歌の効果範囲を!!
視線を前方へ向けると部隊の多くが私から離れようと奥へと進んでる!!
これを見逃す司令官では無いってことね!何処で指揮してんだっての!何で、なんで!こんなにも統率が取れてる!?その、その術式さえ見つけることが出来たら!!封殺してやるのに!!
歌を止め、全力で探知系統の術式を全て全力でばら撒いて暴きたいけれど、出来ない!!
統率の取れた動きをするってことは!誘われてるとみて間違いない!
たった、ほんの、一手で見抜かれた…
でもね!誘い込もうとしても行き成り大きく下がったら歴戦の戦士達は違和感に直ぐ感づいてくれる!
僅かに奥へ行くのなら私も僅かに前へ出ればいい!効果範囲ギリギリをキープする!!
ギリギリなんてキープしないで余裕を持たせるべきだっていう意見は却下!!
メイドちゃんを動かせれない!




